第十七章 出していない宿題
周明遠の死から三日後、遺品が研究室に届いた。
箱二つ。一つは本、一つは紙。
学院の者は言った。これは彼が前もって書いていた遺言にあった、と。
「すべて古代文化研究室に渡す。見習い陳臨が整理する。」
これも、前もって書いてあった。
二つ目の箱の中に、蝋で封をした冊子があった。
蝋には印が一つ。学院の印ではない。僕の見たことのない印でもない。
二文字。
A.D.
蝋を割った。
一頁目は白紙。
二頁目は白紙。
三頁目から、名簿が始まる。
---
名簿ではない。
統計表だ。
列は:氏名 · 身分 · 最終記録時刻 · 記録状態
一行目:林敬山
身分:北境第四哨所・隊長
最終記録時刻:七四二年冬月初五
記録状態:別冊
二行目:陳遠志
身分:源橋学院古代文化研究室・研究員
最終記録時刻:七四二年冬月初七
記録状態:原冊
三行目:蘇懐瑾
身分:同上
最終記録時刻:七四二年冬月初七
記録状態:原冊
四行目:
ルナ・フリエル
身分:王都観測台・四代目
最終記録時刻:――
記録状態:生成待ち
---
僕はそこに座ったまま、長いこと動かなかった。
「生成待ち」の三文字を、何度も見た。
それは「記録なし」ではない。
**「まだ記録が始まっていない」**ということだ。
つまりこの表では、ルナの死亡時刻は空欄だ。
彼女が死なないからではない。
まだ書かれていないからだ。
---
冊子の最後に、周明遠が書いた一頁がある。
学者の字ではない。
人間の字だ。
「私は一生、人を教えた。実験をやめる方法を、一人も教えられなかった。」
「陳臨。君は私より計算ができる。」
「君が学ぶべきは、自分を計算に入れないことだ。」
「だが、君は入れるだろう。」
「私と同じだから。」
---
その晩、五人が最後に同じ机を囲んだ。
机の真ん中に地図が一枚。北境。その上に三つの丸:土手、穴、灰谷。
「明日、発ちます」と僕は言った。
「どこへ?」
「王都」
誰も驚かなかった。
「周明遠教授の遺品に、一文あった」と僕は言った。「『デリルス家の者は、源橋にい
ない』」
「では、王都で誰に会う?」
「エイドラー・デリルスに」
僕は少し間を置いた。
「もう一つある」
「この表に、ルナの名がある。記録状態は『生成待ち』」
誰も何も言わなかった。
「だから彼女は今、一番安全で、一番危ない」
「なぜ安全なの?」とマティルド。
「誰かが彼女に何かをさせて、その行を埋めるのを待っているからです」と僕は言った
。「埋まるまでは、死なない」
ルナは一番端に座っていた。
ずっと何も言わなかった。
そして言った。
「私も行く」
---
その晩、僕たちは多くのことを話した。
**嬴倩は残る。**家族が一人もいない。档案室が唯一の居場所だ。彼女は言った。「あ
なたたちは行く。私は残る。記録を残す人間が、必ず要るから」
**マティルドは残る。**スケーラー家の名で、学院側の追及を塞ぐ。代償は、家との関
係が正式に裂けることだ。
希捷莉卡は家に帰る。父と話をつける。出る前に、新しい星位図を一卷くれた。「今度
は君にあげるんじゃない」と彼女は言った。「王都にあげる。着いたら観測司という場
所を探して、これを渡して。向こうは読める」
**林新年は王都へ。**理由は父がそこにいること。本当の理由は別だ。
別れる時、彼が呼び止めた。
「陳臨」
「はい」
「祖父の名が、あの表にあった」
「知ってます」
「僕は一人に聞きに行く」
「誰に?」
「父に」
---
僕は源橋に五月十六日までいた。
その朝、最後に研究室に入った。
僕の机はあの隅にある。上には白紙と筆。初日に林新年が整えてくれた場所だ。
僕はその白紙の束を取った。
二年、一枚も使わなかった。
ずっと他人の紙に書いていた。
僕は一番上の一枚に、最初の一行を書いた。
『神隕処生態と異族起源研究・第一号ノート』
記録者:陳臨
開始日:七五二年五月十六日
状態:進行中
備考:第一号サンプル、未定。
書き終えて、筆を置き、出た。
僕は十二歳。
正式入学はしていない。
源橋学院史上、最も早く去った見習いだ。
---
里門の外で、ルナが待っていた。馬を二頭引いている。
「荷物は?」
「ここに」と僕は懐を叩いた。
「それだけ?」
「それだけ」
僕たちは馬に乗った。
しばらく行って、彼女が急に言った。
「周明遠教授は、なぜ両親の名の後ろに、あの四文字を書いたんだと思う」
「どの四文字?」
「『記録状態:原冊』」
僕は長く考えた。
そして言った。
「誰かが二人の名を、別の冊に書いたからです」
「そして彼は、原冊の中で二人が一度も動かされていないと、僕に伝えたかった」
ルナはしばらく黙った。
「それが何を意味するか、分かる?」
「分かります」
「両親は一度も『死』と書かれていないということです」
「ただ『存在しない』と書かれただけだ」
僕たちは北へ進んだ。
風は北から来る。




