↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺YOEEE!〜最強種族たちに愛でられまくる異世界転生ってアリですか〜  作者: うらねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/26

第11話 俺、異世界の屋台に寄る

 しばらく進むと、街道沿いに小さな市場が見えてきた。


 そう。小さな市場……というのも、巨人の国、ガルガンのサイズ感に慣れきった俺の目からすると、である。そこは俺がこの世界に来て初めて目にした、人間に丁度いいサイズの市場だった。

 

「ここは……」


「国境が近くなってきましたので……異民族の領域に入ったのでしょう」


「ガルガンの領内ではあるんですよね?」


「一応、多民族国家なんですよ。特に国境近くになると、交易も盛んですし、居留地もたくさんあります」


「なるほどねえ……まあ、そういうもんか」


「そういうものです」


 俺は気になったので、リュネにお願いして、ポシェットから下ろしてもらった。

 見渡すと、そこには確かに、様々な種族が行き交っていた。角の生えた男。鳥みたいな羽を持つ女。四本腕の店主。いかにも異世界、という感じだ。


 しかし、人間らしき生き物は、やはり見当たらなかった。

 そして彼らはリュネを見上げては、ヒソヒソと囁き合っていた。


「巨人族だ」


「踏まれるぞ」


 そして、そそくさと店の中や路地に引っ込んでしまった。魔物でも見たような人々の反応に、俺は正直、ムッとした。


「失礼ですね。リュネは取って食べたりしないのに」


「仕方ありませんよ、ナオトも最初は驚いてたでしょう?」


 俺は初めてこの世界で巨人を見た時に、情け無く床に丸まってダンゴムシになっていた自分を思い出した。情けないこと、この上なかった。


「……すみません」


「いえ、でも、嬉しいです。ありがとうございます」


 リュネは本当に嬉しそうにそう言ってくれた。怒るでもなく、悲しむでもなく。彼女にとっては、怖がられることは特別なことではないのだろう。

 俺は胸が締め付けられる思いがした。


 その時、一軒の屋台から、いい匂いが漂ってきた。


「うまそーな匂い……」


「何でしょうね」


「なんか、つぶ貝みたいな匂いだ……」


「ツブガイ?」


「元の世界にあって、大好物なんですよ」


「私……異民族のものを、あまり食べたことがなく」


「そうなんですか。王女様ですしね」


「いえ……みんな、怖がってしまいますし。ほら、食べる量も……」


 リュネは、少し俯いた。


「ごめんなさい」


「いえ、慣れてるから、大丈夫です」


 そしてきっと、俺に気を使わせないように、リュネは笑った。

 俺は、いてもたってもいられなくなった。


「ちょっと待っててください」


 俺は、その屋台へ近づいた。屋台では、サメっぽい頭の獣人(魚人?)みたいなのが、ハチマキを巻いて、串を焼いていた。

 串には、大きめの貝の身みたいなものが何個も刺さっていて、限りなく醤油っぽい匂いのソースがかかっていた。


 大きめのつぶ貝の串焼きみたいな感じで、とてもうまそうだった。


「あの、すみません」


「おう」


「これ、何です?」


「トゥヴァ貝。縁起物だよ」


「名前、ちょっと惜しい」


「惜しい?」

 

 サメ店主は怪訝な顔をした。


「いえ、なんでもないです……これ、縁起物なんですか?」


「海産物は、この辺じゃあ、旅人のゲン担ぎなんだ。旅の神様は、海のものが好きってな」


「へぇー……うまそうですね」


「コリコリで旨いよ。どうだい? 食ってくかい?」


「じゃあ、あるだけ焼いてください」


「…………あるだけ?」


「……あの人にも、食べさせたくて」


 店主は少し離れたところに立っているリュネを見て、納得したようだった。


「でかい彼女だな」


「彼女じゃないですけど……」


「ちなみに、金はあるんだろうな?」


 俺は、バルドに持たされた袋から、一枚、金貨を取り出した。


 巨人用の小銭。

 つまり、直径十センチはある。


 店主はあっけに取られたように、口を開いて固まった。


「お釣りはいりません」


 人生で初めて、このセリフを言った。

 正直、めっちゃいい気持ちだった。


「……待ってろ! にいちゃん!」


 店主はすべての焼き台に火をつけ、すごい勢いでトゥヴァ貝を焼きだした。


***


「待たせてすみません」


「え、これ」


「リュネも食べてください」


 俺は、店主に台車と木箱、ついでにスコップをもらって、そこに焼いたトゥヴァ貝をありったけ詰めてきた。

 あえて、串は刺さないで焼いてもらった。


「すごい……これ、私に?」


「…………」


「すごい……美味しそう……」


「ナオトが頼んでくれたんですか?」


「まあ、お金は、俺のじゃないんで全然……」


「いいえ」


 リュネは、目をキラキラさせて言った。


「すごく、嬉しいです」


「……」


「ありがとう、ナオト」


「……ど、どういたしまして」


 俺は少し気恥ずかしくて、トゥヴァ貝を一粒、口に入れた。


 正直、味も……なんか惜しい。


 大きさは良いが、旨味が足りない気もした。あと、食感も若干、柔らかすぎる。


「すみません、俺が好きなのは、本当はもっと……」


 そう言いかけて、やめた。

 リュネは持ってきた敷物に座って、トゥヴァ貝をスコップで少しずつ口に放り込み、もぐもぐ美味しそうに噛んでいた。


 その顔は、とても幸せそうで。

 可愛いなあと、思った。


 巨人に可愛いと思うなんて、普通、おかしいかもしれない。

 そりゃ、どう考えてもこの人の方が強いのはわかってるし、そもそも体の大きさだって違いすぎる。


 でも、そう考えたら、普段から小さなおっさんに可愛い可愛いと言ってるリュネも、だいぶおかしい。


「かわいいって……奥が深いなあ」


 俺はトゥヴァ貝をもう一つ、口に入れた。

 さっきよりも、なぜか美味しく感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。