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嘘つき女子大学生と嘘つき男子大学生が相思相愛にならないことを前提に付き合った末路  作者: 神経水弱


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第3話 愛衣 大学1年生 11月その1


 大学の裏手にある小さな公園は私のお気に入りの場所だ。

 一日を通して人気がなく、静かで、ひっそりとしていて、漫画を描くにはこれ以上の場所はない。だから雨の日以外の休み時間はここに足を運んで描いている。

 ペンを置き、コンクリートのテーブル付きベンチから立ち、紅黄こうこうに色づいた木々の匂いを含んだ十一月の冷たい空気を体内に取り込む。

 漫画のアイデアを吐き出し続けて熱を帯びた頭を少しずつ冷やし、再び液タブへ視線を落とした。

 トーンを張り終えたばかりのシーン。そのシーンは主人公の女の子が虚な目で天井から吊るした輪っかに自分の首を入れようとするシーン。私という存在の終わりを象徴するシーンであり、誰からも理解されず、挙げ句の果てに否定された私の末路だ。


「これ、全部君が描いてるのか?」


 唐突に背後から男性の声が聞こえて肩がびくりと跳ねる。

 恐る恐る振り向いた瞬間、声の主と思われる男性がいきなり私の両肩を掴んだ。


「全部君が描いたのかと訊いている」


「は、はい。描きました」


 思わず息を呑むほど整った顔立ちをした彼はじっと液タブの中に広がる私だけのシーンを見入る。

 冷たい風に揺れる少し長めの黒髪と、すっと通った鼻筋。

 そんな彼は眉を上げたと思えば、両方の口角を上げた。


「これだよ!これ!」


「は?」


「僕が探し求めていたのはやっぱりこの絵だっ!いやあ、こんな素晴らしい絵を描ける()()にようやく会えたんだっ!」


 私の両肩をぱんぱんと叩き、高笑いする彼に戸惑う。


「あの…えっ?……ちょっとよくわからないのですが……」


「僕はね、この絵を見るたびに感心、いやっ!感動しているんだっ」


「別にそこまでのものじゃないと思いますよ?」


 笑顔を引っ込めないまま彼は液タブを取り上げ、息がかかるくらいに液タブの画面を見入って、その目で舐め回す。


「謙遜してるのか?」


「いや、謙遜も何も私の絵に魅力なんてないですよ」


「まあ確かに。こういう絵は、君のような謙遜の中に向上心を育てる作家にしか書けないだろう」


「あの話聞いてました?それに作家って…私はそんな大それた者では決してないですよ」


「さすが天才は言うことが違う。謙遜の中に宿す、類稀なる才能の上に築き上げた技術、経験、そして感覚。それらの要素がこのような絵を生み出すのか…なるほど」


 なるほど…ではない。彼の脳内はお花畑なのか。いや、それとも何か企みがあって、表面上だけを褒めているのか。

 意味不明な彼に懐疑的な視線を向けるも、それを無視して、あたかも自分事のように液タブの画面を見せつけてきた。


「見ろこの絵を!登場人物の気持ちが!感情が!手に取るように伝わる!あぁ、僕はようやく出会えたんだな」


「あの」


「やはりなんと言っても女の子の虚な瞳の奥に光を宿したようなトーン!線!色彩!同じ液タブを使っても他のやつらには思い浮かばない技法よ」


「あのっ」


「はい?」


「返してもらえませんか」


 あぁ。ごめんごめん。と液タブを私に返すと、そうだ!と思い出したようにポケットから何やら紙切れを取り出し、両手でそれを差し出してきた。


「僕は経営学部経営学科三年の八宮はちみやりつと申します。まあ学部はどうでもいいよね。大事なのは名刺にもあるように漫画研究会の会長だってこと。まあ同好会なんだけどね」


 名刺を受けとり確認すると、[漫画研究会 会長 八宮律]とその下に電話番号とメールアドレスが書かれていた。


「ご丁寧にどうも。私は経済学部経済学科一年の塩義しおぎ愛衣あいです。で、八宮先輩。つまりは勧誘ですか?」


 すると八宮先輩は何かをごまかすように鼻先を掻きながら、言葉を探すように視線を動かした。

 その仕草がどうも胡散臭さを嗅ぎ立ててくる。


「勧誘ですよね。私、集団が嫌いっていうか、絵は一人でないと描かないって決めてるので」


 そうきっぱりと言って片付けを始めた瞬間だった。


「違う!」


「何が違うんですか?」


 八宮先輩はいきなり、頭を下げる。


「なんのつもりですか?」


「ごめん。漫画同好会ってのも、実は重要じゃなくて、話のきっかけ作りで……その…僕は……」


 胡散臭いうえにはっきりとしない彼に苛立ちを覚える。大事な私の時間をサークルの勧誘で削られたのだから。


「なんですか?」


 早く解放してほしい。言ってる間に昼休みも終わりに近づく。早めに次の講義がある講義室に移動したいのに、迷惑もいいところだ。

 苛立ちが募る私に八宮先輩は上半身を折りたたんだまま急に手を差し伸ばしてきた。


「僕は…ずっと…好きでした!」


まだまだ未熟者で勉強中ですので、おかしい点や不明な点、また誤植、誤字、脱字があればぜひ教えてください!

あ、友達のように気軽に教えてくださいね!


もし仮に、上記に当てはまらず、純粋に良かったと思っていただいた場合はお星様★★★★★をお願いします。

めっちゃ喜びます(๑˃̵ᴗ˂̵)


感想はいただけるとよだれを垂らして喜びます!

もちろんいただいた感想は余すことなく読ませていただきます。

一方的に書き込んでいただく感じでよろしくお願いします!


◎本作の短編版『好きな人がいてもいいから付き合ってくださいと言って、交際を初めた嘘つき男子大学生の末路』も掲載中です。

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