第十九話:お照の父の失われた事件 〜 The Case of Otera's Father 〜
一部AIにより作成
【冒頭:ロンドン時代】
一八九五年、五月の昼下がりのことである。
ベイカー街の居間には、珍しく昼の光が差し込んでいた。ホームズは窓際の椅子に腰をおろし、眼前に広げた新聞ではなく、その向こうの通りを眺めていた。パイプは口にあるが、煙が出ていない——火をつけ忘れているのだ。こういう日のホームズは、何か深いところで考え事をしている。
「ワトソン」と彼は言った。「子どもが殺人の犯人として疑われた事件を、何か知っているか」
「子どもが?」私は医学誌から顔を上げた。「聞いたことはある。だが事件の記録として残るものは少ない。子どもは法的責任能力の問題があるし、そもそも体力的に——」
「殺人の犯人でなく、殺人の目撃者として語られた場合でも同じだ」ホームズは言葉を遮った。「あるいは、子どもに見えた何かが、実は違うものだった場合」
「子どもに見えた何かが、違うもの?」
「目撃者の証言というのは、恐怖という色眼鏡を通して語られることが多い」ホームズは新聞を膝に落とした。「人は恐怖の中で、見たものを自分の理解できる枠に当てはめようとする。小さい、黒い、人間のような何かを見たとき——それを『子供のような怪物』と形容する者がいるとすれば、その者は何を本当に見たのか」
「それは……」
ホームズが答えるより先に、玄関の呼び鈴が激しく鳴った。
私が席を立とうとしたとき、ハドソン夫人の声と、若い女の泣き声が混じって階段を上ってきた。次の瞬間、扉が開いて、息を切らせた女が飛び込んできた——二十二、三の、まだ少女の面影を残した、目の赤い女だった。
「ホームズさん——助けてください。姉が、姉が——」
女の足がもつれた。私が支えようと立ち上がった瞬間——
ベイカー街の外で爆発音がした。工事中のガス管が暴発したのだ、と後からわかった。衝撃で窓が砕け、飛び込んできた破片を避けようとした私はホームズともつれ合い——
暗闇に落ちた。
気づいたとき、私はまったく別の場所にいた。
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【本編:江戸での事件】
——和登三太の語り——
慶応元年——西暦でいえば一八六五年——の五月末のことである。
私が目を覚ましたのは、柳橋のほとりだった。
柳橋というのは、神田川が隅田川に注ぎ込む河口近くにかかる橋の名で、そのあたり一帯には、料理屋や芸妓屋が軒を連ねている。ロンドンでいえばコヴェント・ガーデン近辺の劇場街のような、夜になると灯りと音曲の賑わう場所だ。ただし昼間は、川面に柳の枝が揺れる静かな水辺で、今のような晴れた昼下がりには、穏やかな景色が広がっている。
捕霧七はすでに起き上がり、川に向かって立って、煙管に火をつけていた。
「三太、走ってくる者がいる」と彼は言った。振り返りもせずに。
私が身を起こして橋の方を見ると、確かに女が一人、裾を乱して駆けてくるのが見えた。
若い女だった。年のころ二十二、三、着物の帯が少し乱れ、手拭いを手に持ったまま——明らかに何か急いで飛び出してきた様子だ。顔が青く、目が赤い。泣いていた、あるいは今も泣いている。
「捕霧七の親分!」
女は私たちを見るなり、そう叫んだ。
転生というのは不思議なもので、江戸に来るたびに、私たちはこの土地の人間として迎えられる。捕霧七の顔も、私の顔も、江戸の人々には見知った岡っ引きのそれとして映るらしい。
「お浪か」と、捕霧七は静かに言った。「どうした」
女——お浪、という名らしい——は息を整えながら、捕霧七の前で膝をついた。
「た、大変なんです、親分。うちの養父の新兵衛が……今朝早く、何者かに刺されて……」
「死んだか」
「……はい」
捕霧七の目が、静かに鋭くなった。
「お照はどこだ」
「それが……同心の旦那に連れていかれてしまいました。お照姉さんが刺したと思われて」
私は二人のやり取りを聞きながら、状況を整理しようとしていた。お浪とお照——姉妹か。新兵衛——養父ということは、芸妓屋の主人だろうか。
「行こう、三太」と捕霧七は言った。すでに足が動いている。
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柳橋の芸妓の世界について、少し説明が必要だろう。
芸妓というのは、宴席に呼ばれて踊りや三味線を披露する、高度な芸能の訓練を受けた女性だ。ロンドンの社交界で言えば、演奏家と舞踏家を兼ねたような存在だが、それよりはるかに厳格な師弟関係と修業を経ており、単なる「接待役」ではない。芸の腕が命であり、一流の芸妓は幕府の役人や豪商にも賞賛された。
芸妓屋というのは、そうした芸妓を抱えて宴席へ派遣する商売をする家だ。芸妓は養父母のような立場の主人のもとで育てられ、芸を磨く。新兵衛という男は、お浪とお照の養父として、そういう芸妓屋を営んでいたのだ。
現場の家は、柳橋からほど近い路地の奥にあった。
木造の二階建てで、表に小さな格子——細い木を縦横に組んだ、和風の窓飾り——がある。ロンドンの邸宅ほどではないが、庶民の長屋よりはずっと余裕のある造りだ。
中に入ると、奥の座敷——畳の部屋——に、年配の女中が震えながら座っていた。お滝という名の、六十がらみの女だった。
新兵衛の遺体は、すでに別の部屋に移されていた。担当の同心が一通り調べた後、私たちが来るまでそのままにしてあったのだ。
「捕霧七の親分……お照さんは、やっていません。あたしが見たんです、あの怪物を」とお滝は言った。
「怪物?」と私は訊いた。
「そうです……夜明け前の暗がりの中に、小さい、黒い、子供のような、でも……人間じゃないような」お滝は体を震わせた。「全身が黒くて、子供ほどの背丈で……それが座敷から走り出て、裏口から逃げていったんです。それを見てから新兵衛さんが倒れているのを見つけて……」
捕霧七はお滝の話を最後まで黙って聞いてから、静かに訊いた。
「その怪物は、どちらの方向から走ってきましたか」
「座敷の隅——押入れ(おしいれ)の近くから」
「走り方は、二足か、四足か」
「に、二足です……ちゃんと二本足で走っていました」
「声は」
「声は……しませんでした。ただ走って、消えた」
「お照はそのとき、どこにいましたか」
「二階で寝ておりました。物音を聞いて降りてきたのは、私が叫んだ後です」
捕霧七はうなずいて、遺体のあった座敷の中をゆっくりと歩き始めた。
私も後に続いた。畳の上に、黒ずんだ血の痕がある。刃物による刺傷だという。
「捕霧七さん、同心はなぜお照を疑ったのですか」と私は訊いた。
「新兵衛が最近、急に店を畳んで田舎へ引きこもると言い出した。お照はそれに強く反対していた——と、近所の者が証言したからだ」
「動機が、あると」
「動機があれば犯人だ、という推理は、最も危険な論法のひとつだ」と捕霧七は静かに言った。「ロンドンでもここでも変わらない。動機はあくまで方向を指し示すだけで、実行の証拠にはならない」
彼は押入れの前でしゃがみ込み、敷居——部屋の境目の低い仕切り木——の近くを指で撫でた。
「土だ」と彼は言った。「黒い土。外からついてきた」
「怪物が通った跡?」
「あるいは怪物自身の痕跡だ」
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私が今回の江戸で初めてまともに目にした、柳橋の情景について、少し書いておきたい。
神田川と隅田川が交わるこのあたりは、江戸でも水の豊かな土地で、川沿いに料亭が並び、夕暮れになると三味線の音が水面に流れる。芸妓は「おかあさん」と呼ぶ置屋の主人に育てられ、宴席に出るたびに料金の一部が置屋に入る仕組みになっている。
江戸の芸妓制度は、ロンドンの劇場文化と似ているようで、まるで異なる。劇場は観客が足を運ぶが、芸妓は客のいる場所へ赴く。芸妓はあくまで「芸」を売るのであり、それ以外のことは別の話だ、というのが建前だが、実際には後見人である養父母の存在が、その境目を守る役割を担っていた。新兵衛のような養父は、いわば芸妓の「マネージャー兼保護者兼道徳的監督者」だったわけだ。
「新兵衛が田舎に引きこもりたがったのは、なぜだと思いますか」と私は捕霧七に訊いた。
「それを探る必要がある」と彼は言った。「人が突然、自分の生業から離れたいと思うとき——その理由は大抵、恐怖か、後悔か、あるいはその両方だ」
「恐怖」
「そう。そして恐怖があるということは、誰かに怯えていたということだ。怯えていた相手が、ついに踏み込んできたとすれば——」
「その相手が、『怪物』の正体かもしれない」
「三太、君はやはり、なかなか優秀だ」捕霧七は珍しく、真顔で言った。「——それは誉めているのか、と訊く必要はない。誉めている」
私は思わず笑った。
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その日の午後、捕霧七は子分の辰吉と松吉を呼んで、それぞれに調べごとを命じた。
江戸の岡っ引きが情報を集める方法は、ロンドンのホームズがベイカー街不正規隊と呼んでいた子供たちの網と、本質的には同じだ——足を使って、耳を澄まして、人から話を聞き出す。ただし江戸では、町の構造そのものが情報網として機能している。
江戸の町は「組合」という自治組織で管理されており、各町に名主という自治の長がいる。名主はロンドンの区長(alderman)に似ているが、より密接に住民と関わり、誰がいつどこから来たかを概ね把握している。この名主を通じた情報収集が、岡っ引きの基本的な捜査手法だった。
辰吉は新兵衛の過去を調べに行った。松吉は、近隣の名主のもとへ。
私は捕霧七とともに、もう一度お浪から話を聞いた。
「新兵衛のお父様は、以前、何をされていましたか」と捕霧七は訊いた。
「聞いた話では……若い頃はどこかの屋敷に奉公していたとか」
「武家の屋敷か」
「そう思います。でも詳しくは……父は自分の過去をほとんど話さない人でした。信心深くて、毎朝お参りを欠かさない人だったのに……なぜこんなことに」
お浪は再び涙をこぼした。
「信心深い」と捕霧七は繰り返した。「何を信じていましたか」
「不動様です。護符をいつも身に付けていて……」
捕霧七の目が、また静かに光った。
不動明王というのは、仏教の明王の一尊で、火炎を背負い、右手に剣、左手に縄を持つ、憤怒の相をした守護神だ。ロンドンのキリスト教とは本質的に異なる信仰だが、強い守護と、罪の浄化を求める人々が深く帰依する。
「罪の意識から不動様に縋る者がいる」と捕霧七は私に小声で言った。「新兵衛は何かを悔いていた」
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夕刻、辰吉が戻ってきた。
「親分、わかりました。新兵衛の旦那、若い頃は旗本の中間だったそうです」
中間というのは、武家屋敷に仕える下男——武士ではないが、屋敷の雑用や警護の補助をする身分だ。ロンドンの使用人に近いが、武家の格式を背負っている分、一種の誇りがある。
「どの旗本の屋敷か」
「それが……三十年以上前の話なので、なかなか調べがつかないんですが。深川の方の旗本で、お家が断絶したとか——大きな不祥事があって、お取り潰しになった、とも聞きます」
「不祥事」と捕霧七は繰り返した。「新兵衛が田舎に引きこもりたがった時期は、いつ頃からだ」
「春先から、という話でした」
「春先に何かあった、ということだ。三太」と捕霧七は私を見た。「松吉からの報告を待とう」
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松吉が帰ってきたのは、行灯に火を入れなければならない時刻になってからだった。
「親分、面白いことがわかりました。新兵衛さんの家の近くで、春先から見慣れない者が何度かうろついていたそうで——近所の名主さんの話では、小柄な男で、全身黒っぽい着物を着ていたと」
「小柄な男」と私は思わず言った。「全身黒。それが……」
「お滝が見た怪物だ」と捕霧七は静かに言った。「三太、子どもに見えた理由がわかったか」
「小柄な大人……」
「あるいは、わざと小さく見せていたのかもしれない。夜明け前の薄暗がりの中で、全身黒の着物を着た小柄な人間が走れば、人の目には奇怪に映る。それが人の恐怖心と結びついて、『子供のような怪物』になった」
「しかし、なぜわざと怪物のように見せる必要が」
「恐怖は、捜査を遅らせる。目撃者が正確な証言をできなくなれば、犯人は逃げる時間を稼げる。同心たちが『怪物の仕業か』と惑う間に」
捕霧七は立ち上がった。
「三十年以上前に断絶した旗本の屋敷——その不祥事に、新兵衛が関わっていたとすれば。そして今年の春、その屋敷の関係者が何らかの形で現れたとすれば——」
「新兵衛は、過去の秘密を知っていた」と私は言った。「だから怯えた。だから逃げようとした」
「そして、秘密を持つ者を黙らせようとした者が、先手を打った」
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翌日、私たちは深川に向かった。
深川は隅田川を渡った東側の土地で、木場——材木の集積地——や、職人の長屋が多い下町だ。ロンドンのドックランズに似た雰囲気の、働く人々の街だ。
断絶した旗本の屋敷跡は、今は他の武家屋敷の一部に組み込まれていたが、その周辺に、かつての屋敷の奉公人たちが散らばって住んでいることを、松吉が調べ上げていた。
そうした人物の一人——七十がらみの老婆——が、捕霧七の問いに、震える声で答えた。
「三十年前の……あのお家のことを……」
老婆は長い沈黙の後、語り始めた。
三十年以上前、その旗本の家では、ある事件があった。屋敷の若旦那が、金銭の横領を行い、それを揉み消すために、一人の者を犠牲にした。無実の罪を着せられた男は、牢につながれ、やがて獄死した。その男の遺族が今もどこかにいて——
「その遺族が、新兵衛を恨んでいた?」と私は訊いた。
「新兵衛さんは……若い頃、その横領の証人になったのです。本当のことを言えば若旦那が罰せられた。でも新兵衛さんは……黙っていた。怖くて。それが一生の悔いになって……信心に縋るようになったと、そう聞いていますよ」
捕霧七は老婆の話を最後まで聞いてから、静かに礼を言った。
「犠牲になった男の遺族——今、どこに」
「息子がいると聞きましたが……どこにいるかは、わかりません」
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その夜、捕霧七は動いた。
情報の網を張り、辰吉と松吉を四方に走らせ、翌朝早く、深川の木場近くの長屋に、一人の小柄な男が住んでいることが判明した。
男は三十がらみで、目に深い怨念の色を持っていた。全身黒の着物を好み——それが、早暁の暗がりの中で「怪物」と見えた姿だった。
捕霧七と私、辰吉と松吉の四人で踏み込んだとき、男は逃げようとしたが、捕霧七が先回りをしていた。
「待て」と捕霧七は静かに言った。「話を聞かせてくれ」
男は膝から崩れた。
「……父が……無実で死んだのに……新兵衛のせいで……」
捕霧七はしばらく男を見ていた。それから、十手を静かに膝の上に置いた。
「お照は無実だ」と彼は言った。「それだけは、今すぐ証明しなければならない」
男は俯いたまま、黙ってうなずいた。
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お照が奉行所から解放されたのは、その翌日のことだった。
南町奉行所の同心、田村が事の次第を聞いて動いた。お照が新兵衛を刺す理由はなく、犯行の時刻に二階にいたことはお滝の証言でも確認されていた——同心たちはそれをきちんと確認しないまま、動機だけを理由に連行していたのだった。
お浪は奉行所の外でお照を待っており、姉が出てきた瞬間に飛びついて泣いた。
私はその光景を少し離れたところから眺めていた。
芸妓の世界で育った二人の娘が、養父を失って、それでも生きていく。江戸の女たちの強さというのは、ロンドンの女たちのそれとは少し種類が違う。もっと内向きで、しかしもっと根が深い、そういう強さだ、と私は思った。
「捕霧七さん」と私は言った。「男は——犯人は、どうなるでしょう」
「裁きは奉行所がする」と彼は静かに答えた。「私の仕事は、そこまでだ」
「それで、いいんですか」
「いいとも悪いとも言えない。三十年前の罪が今ここにある。しかしその罪を誰が裁くか、という問いには、私は答える立場にない」
捕霧七は煙管に火をつけ、煙をゆっくり吐き出した。
「三太、一つだけ言える。新兵衛は死ぬ前に逃げようとしていた。それは彼なりの、三十年遅れた後悔の表れだったかもしれない。人の良心というのは、消えることなく、ただ長い眠りにつくのだろう」
柳橋の川面に、夕日が橙色に揺れていた。三味線の音が、どこかの座敷からかすかに流れてくる。
江戸の夕暮れは、いつもこうして、人の心の奥底に何かを置いていく。
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【結末:ロンドン時代】
気づくと、私はベイカー街の居間にいた。
窓が砕けていた。工事のガス管が爆発した後だとわかった。ホームズは床に手をついて立ち上がりかけていた。若い女の姿は——消えていた。
「ホームズ、あの女は」
「見当たらない」ホームズは周囲を見渡した。「しかし、彼女が言いかけたことは覚えている。姉が、何かに巻き込まれた、と」
「江戸で、似た話があった」と私は言った。
「知っている。私も見ていた」ホームズは椅子に腰をおろした。「ワトソン、目撃者が恐怖の中で見たものを、どう解釈するか——それが今回の核心だったね」
「子供のような黒い怪物、が、小柄な男だった」
「そう。目撃証言は、常に目撃者の感情状態によってゆがめられる。医学的に言えば、恐怖状態では視野が狭まり、不慣れなものを既知の枠に当てはめようとする。『子供のような怪物』というのは、恐怖を経た人間の脳が生み出した解釈だった」
「ならば、あの若い女が言いかけた『姉が』というのは——」
「別の事件の話だったかもしれない」ホームズは立ち上がり、砕けた窓枠を見た。「だがそれは、また別の機会に続きが語られるだろう」
「江戸で、また?」
「あるいはここロンドンで」ホームズは微かに笑った。「どちらでも、やるべきことは同じだ。証拠を見る。証言を疑う。そして——良心の眠りを、起こしてやる」
テムズ河の方から、夕暮れの霧が忍び込んでくるのが、砕けた窓から見えた。
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本作は、アーサー・コナン・ドイル著『シャーロック・ホームズの冒険』および岡本綺堂著『半七捕物帳』への敬意と感謝を込めて執筆しています。
著:コナン・綺堂異流(Conan Kidoyle)




