第十六話:津の国屋の怨霊の符牒 〜 The Sign of the Tsu-no-Kuniya Ghost 〜
一部AIにより作成
【冒頭:ロンドン時代】
一八九五年、六月の夕暮れのことである。
ベイカー街の居間は、長い夕暮れの光に満ちていた。六月のロンドンは日が長く、夜の九時を過ぎても西の空が薄明るい。その黄金色の光の中で、ホームズは肘掛け椅子に深く沈み込み、指を尖塔型に組み合わせて目を閉じていた。
私は夕刊を読みながら、友人のこの沈黙が珍しく長いことに気づいていた。
「ホームズ、何を考えている」と私はやがて言った。
「貰い子について」と彼は静かに言った。
「随分と唐突だな」
「唐突ではない」とホームズは目を閉じたまま言った。「先週の依頼人の話から続いている。子のない夫婦が甥の子を養子に迎えた。しかし後になって実子が生まれ、養子を追い出した——そういう話は珍しくない。しかし問題はその後だ」
「追い出された養子がどうなるか、ということか」
「そうだ。人間というのは、自分が不当に扱われたとき、その感情をどこへ向けるか。泣き寝入りするか、立ち上がるか。あるいは——」ホームズは目を開いた。「死を選ぶか」
私はしばらく黙った。
「それは暗い考えだ」と私は言った。
「現実だ。私は暗いとは思わない——ただ、事実として認識するだけだ。そしてそのような死があったとき、残された者の心にどんな痕跡が刻まれるかを考えると、これは非常に興味深い」
「興味深い、か」
「感情的に言えば、残酷だ」とホームズは認めた。「しかし論理的に言えば、興味深い。死んだ者の恨みは——形を変えて必ず現れる。なぜなら生きている誰かが、それを代わりに引き受けるからだ」
「まるで怪談だな」
「怪談の多くは、解かれていない事件の語り直しだ」とホームズは言った。そして立ち上がった。「ワトソン、今夜は少し出かけないか。キングスクロス付近に面白い案件がある。徒歩で行こう」
六月の夜のロンドンは穏やかで、ガス灯が街路に橙色の光を落としていた。私たちはキングスクロス方面へ歩いた。ユーストン通りを渡ったとき——霧はなかったのに、突然の轟音があった。
ガス管の爆発だった。
道の向こう側の工事現場からだ。空気が一瞬膨らみ、次の瞬間、凄まじい衝撃波が通りを走った。私は吹き飛ばされた。ホームズの叫び声が——
光があった。
白い、何もない光があった。
そして——
******
【本編:江戸での事件】
——和登三太の語り——
目が覚めると、私の耳に最初に届いたのは、三味線の音だった。
低く、哀愁を帯びた弦の音が、夕暮れの空気をゆったりと揺らしていた。これは常磐津——江戸の浄瑠璃の一流派で、三味線と太夫の語りで物語を演じる芸能——の稽古の音だ、と私はもう江戸の生活に慣れた頭で判断した。
私は路地の端に横たわっていた。
弘化四年——西暦一八四七年——の六月、夕暮れ時の江戸。夏の長い夕暮れの中で、街は柔らかな橙色に染まっていた。
捕霧七はそばに腰を下ろして、煙管をゆっくりくゆらせていた。遠くで三味線の音が続いている。
「三太」と彼は言った。「また来た」
「また来た」と私は繰り返した。
「今回はずいぶん昔の江戸だ。弘化四年——ペリーが来航する六年前だ」
「どこにいる」
「本所」と捕霧七は言った。「大川の東側、職人と商人が多く住む町だ。ロンドンで言えばイーストエンドに近い雰囲気を持つが、危険ではない。ただ、人と人が近い」
本所というのは、隅田川(別名・大川)の東岸に広がる下町で、材木問屋や職人の長屋が密集した地区だ。川を渡ればすぐ浅草という立地で、賑やかだが、どこか人の匂いが濃い土地柄だった。
その夕暮れの路地で、私たちはまもなく、一件の話に引き込まれることになった。
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出来事は、常磐津の師匠・文字春という四十がらみの女から始まった。
常磐津の師匠というのは、三味線と語りの技を弟子に教える師範のことで、江戸の庶民文化においては相当な地位を持つ。ロンドンで言えば音楽教師に近いが、芸の格や師弟の絆は比べ物にならないほど濃い。
文字春は夕暮れ、寺参りの帰り道に奇妙な体験をした。
「振り返ると、娘が後ろをついて来るのです」と彼女は私たちに話した。翌朝、捕霧七が話を聞きにいったのだが、文字春はまだ顔が青ざめていた。「十六、七の娘で、島田髪に白地に撫子の柄の浴衣を着た。こちらが立ち止まると、娘もとまる。歩くとついてくる。声をかけると——同じ町内の酒屋、津の国屋のお雪さんに会いに、八王子から来た、と言うのです」
「それで?」と捕霧七は訊いた。
「娘は次の瞬間、暗がりにすっと消えてしまったのです。まるで最初からそこにいなかったように」
文字春の声が震えていた。
捕霧七は煙管を一度だけ指で回して、静かに言った。「その娘の名前は聞きましたか」
「……お安、と言いました」
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「お安、という名前に心当たりは」と捕霧七は後で、近所の顔役・兼吉という老人に訊いた。
兼吉はぎゅっと口を引き結んで、しばらく黙った。そして重い溜め息をついた。
「ありますとも。しかし、聞けば気持ちのよい話ではありませんぞ」と彼は言った。
兼吉が語ったのは、こういうことだった。
津の国屋という屋号の酒屋がある。主人は伊兵衛という五十がらみの男で、江戸では中程度の財力を持つ商家だ。江戸の商家——問屋や小売りの商人の家——はロンドンの中産階級の商店主に近いが、家業の格と暖簾への意識がはるかに強い。代々受け継ぐ屋号は、家名そのものだ。
伊兵衛夫婦には長い間、子がなかった。そこで八王子の遠縁から、お安という娘を貰い子にした。いったん家族として迎えたのだ。
ところが——その後、伊兵衛の妻に実の子が生まれた。
まず長女のお清が生まれた。続いて次女のお雪が生まれた。
実の子が二人できると、伊兵衛はお安を「遠縁への用事がある」などという口実を作って追い出した。
「口実です」と兼吉は言った。「みんなが知っていた。お安が邪魔になっただけのことで」
お安は八王子に帰り、その翌年、自ら命を絶った。十七歳だった。
「それから二年後、長女のお清さんが急に亡くなりました。十七歳で」と兼吉は続けた。「そのお清さんが亡くなった翌朝、近所の人間が撫子の浴衣を着た娘の影を見た、という噂が立ちました。お清さんとお安さんが同い年の十七で——わかりますか」
私は背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「今、津の国屋には次女のお雪さんがいる」と兼吉は言った。声が低くなった。「そのお雪さんも、今年で十七になります」
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捕霧七はその話を聞いて、長い沈黙に入った。
私は彼を見た。彼の目は静かで、しかし何かを強く見ていた。ロンドン時代のホームズが、事件の構造を頭の中で組み立てるときの、あの集中した目だ。
「三太」と彼はやがて言った。「怪談かどうかは後で判断する。まず、事実を積み上げよう」
「お清の死因は何だった」と私は兼吉に訊いた。医師としての本能が動いていた。
「病死と聞いておりますが、詳しくは……急に倒れて、あっという間に」
「急死か」と私は言った。捕霧七を見た。
「急死だ」と彼は静かに繰り返した。
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その日の午後、捕霧七は一人の男を呼んだ。
桐畑の常吉という、二十五、六の色白の若い男だった。顔立ちが整っていて、一見すると商家の番頭風だが、目に鋭さがある。捕霧七の子分の中では最も機転の利く一人で、女性の多い場所への聞き込みを頼むと特に頼りになる——見た目が人当たりが良く、女性が警戒しにくいためだ。これはロンドン時代のホームズが「変装の名手」だったのに似て、常吉には「場の空気に溶け込む才能」があった。
「常吉、津の国屋に近づいてくれ」と捕霧七は言った。「娘のお雪に接触する必要がある。しかしお前が動くのは——もう少し後だ。まず私が調べることがある」
「何を調べます」と常吉は訊いた。
「お清の死だ。二年前の話だが、近所の医者に診させたはずだ。その医者を探す」
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次の日、捕霧七は私を連れて、本所の町医者・仁左衛門という老人を訪ねた。
江戸の町医者というのは、ロンドンの一般開業医(General Practitioner)に近い存在で、内科から外科まで幅広く担当する。しかし西洋医学とは体系が異なり、漢方を基礎とした独自の医術を用いる。生薬——草木の根や葉、動物の骨などを乾燥・加工した薬材——を煎じて処方するのが基本だ。
仁左衛門は八十近い老人で、白い顎鬚を蓄えていた。捕霧七の十手を見て、静かに話してくれた。
「お清さんのことですな」と老人は言った。「急死でした。症状は……朝から気分が悪いと言って、夕方に急に意識を失い、夜には亡くなりました。脈が早くなり、体が熱くなり——」
私は老人の言葉を聞きながら、医師としての頭で分析していた。その症状——急激な発症、高体温、意識喪失——は、ある種の中毒反応に非常によく似ていた。
「仁左衛門先生」と私は言った。「失礼ですが、その症状は……食べたもの、あるいは飲んだものに何か問題があった可能性は考えましたか」
老人は少し驚いた顔をした。「……考えなかったわけではありません。しかし当時は、暑い夏の急病と判断して」
「どんなものを飲んでいたか、わかりますか」
「お清さんは体が弱く、滋養のための煎じ薬を飲んでおりました。津の国屋の主人が用意した薬で——」
捕霧七と私の目が合った。
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「薬を用意したのは誰か」と捕霧七は帰り道で言った。
「伊兵衛か、あるいは妻か」と私は言った。
「あるいは——もう一人いるかもしれない。三太、お安の話を思い出せ。お安は八王子の遠縁だった。八王子には今もお安の家族がいるはずだ。そしてお安が自ら命を絶った後、その家族は——」
私は考えた。「恨みを持つ者がいても不思議ではない」
「そうだ。しかし、ここで重要なのは——撫子の浴衣の娘が、生きているとしたら?」
「生きている……?」
「お安は死んだ。しかし、お安と同じ浴衣を着た、同じくらいの年頃の別の娘が、津の国屋の近くに現れるとしたら——それは幽霊ではなく、人間による演出だ」
私は思わず立ち止まった。
「誰かが幽霊に見せかけて——何を?」
「お清を殺し、次はお雪を殺そうとしている」と捕霧七は言った。「お安の死を利用して、怨霊の仕業に見せかけながら、津の国屋の娘たちを一人ずつ——」
「しかし、それが誰の利益になる」
「その答えが、この一件の核心だ」と捕霧七は静かに言った。「常吉を動かすときが来た」
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常吉は翌日から津の国屋に通い始めた。
酒の買い手を装って店に顔を出し、お雪と話せる機会を作った。常吉の話では、お雪は十七の、物静かな娘で、どこか怯えた目をしていた。
「お安のことを知っているかと話を向けると、顔が青ざめました」と常吉は報告した。「そして、おかしなことを言いました。——最近、夜中に誰かが縁側の近くをうろつく気配がある、と。それが姐さん——お清さん——が亡くなる前にも同じことがあった、と」
「縁側に何があった」と捕霧七は訊いた。
「お雪さんが飲む薬の瓶が、縁側に置いてあるそうです。夜中の涼しい場所に置く習慣で」
捕霧七の目が、するどく光った。
「常吉、今夜から津の国屋の縁側を見張れ。誰が近づいても声をかけるな。ただ見て、顔を覚えろ」
「一人でですか」
「お前のような顔立ちの男は、夜の路地に立っていても不審者に見えない利点がある」と捕霧七は言った。これはパロディではなく本気だったと思う。
常吉は苦笑した。
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三日後の夜、常吉が駆け込んできた。
「見ました。女です。年は二十前後、痩せた、暗がりでも白い顔の女が、津の国屋の縁側にそっと近づいて、お雪さんの薬の瓶の中に何かを入れました。そしてすぐ逃げた」
「追ったか」
「追いましたが、本所の路地は入り組んでいて——見失いました。ただ、顔だけは確かに見ました。髪が島田で、白地に撫子の浴衣を着ていました」
捕霧七はその薬の瓶を直ちに手配させ、翌朝私が確認した。
医師として私が嗅いだ匂いと、色を見た判断は——これは生薬の本来の成分ではない。何かが混ぜられている。正確な分析はできないが、ある種の植物毒の可能性があった。江戸には毒として使われる植物が複数知られており、その知識を持つ者は限られていた——生薬を扱う薬種商や、医療に関わる者たちだ。
「これは毒だ」と私は捕霧七に言った。「お清の死は病死ではない。毒殺だ」
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捕霧七が突き止めたのは、こういう構造だった。
白地に撫子の浴衣の女は、お安の姉だった。名はお佐和といい、二十一になっていた。お安が死んだ後、八王子でひっそりと暮らしながら、妹の死に対する激しい恨みを抱き続けていた。
しかし彼女を動かしたのは、恨みだけではなかった。
津の国屋には、伊兵衛の甥にあたる男がいた。番頭格で働いていたが、伊兵衛には実の子が二人いる限り、この甥は家業を継げない。しかしもし二人の娘が相次いで死ねば——そして怨霊の仕業に見えれば——この甥が後継者となる可能性があった。
甥の名は善三郎といい、お佐和と秘かに通じていた。
二人は共謀した。お佐和が幽霊に見せかけて娘たちに毒を盛り、善三郎が家の中から薬の管理に関与することで犯行を助けた。
「お清の死は成功した」と捕霧七は言った。「しかしお雪が死ねば二件目になる。そのとき初めて、怨霊と本当に信じる者が増え、伊兵衛夫婦は恐怖で家を手放すか、あるいは善三郎に頼り始める——そういう計算だった」
「なんと」と兼吉の翁は聞いて、しばらく息ができないようだった。「お安さんの恨みを、生きた人間が利用したというのか」
「そうだ」と捕霧七は言った。「幽霊は人を殺さない。しかし幽霊に見せかけた人間は、殺す」
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お佐和と善三郎はその後、岡崎同心に引き渡された。
お雪は毒を飲む前に薬の瓶を取り替えていたため、無事だった。
伊兵衛はその夜、お雪を抱えて泣いた。傍らで聞いていた私は、この男への怒りと、しかし娘を抱いて泣く父親の姿への複雑な感情の両方を持て余した。
「伊兵衛さん」と捕霧七は言った。その声は穏やかだったが、どこか刃の感触があった。「お安を追い出したことの報いが、こういう形でめぐってきた。これをどう受け止めるか、それはあなたが考えることだ。私には言う資格がない」
「そうだ。私が悪かった」と伊兵衛は言った。嗚咽が混じっていた。「わかっていた。しかし——」
「わかっていながら追い出した。それが、この一件の最初の原因だ」と捕霧七は言った。「人の縁というのは、軽く扱えば必ず何かになって戻ってくる。怨霊とは別の話として、覚えておくといい」
伊兵衛はそれ以上、言葉を返せなかった。
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帰り道、本所の夕暮れの路地を歩きながら、私は捕霧七に訊いた。
「伊兵衛を責めたのか、庇ったのか、わからなかった」
「どちらでもない」と彼は言った。「ただ事実を言った」
「しかし……あの男には罰はない。法の上では、お安を追い出したことは罪ではない」
「そうだ」と捕霧七は言った。静かに。「江戸の法でも、ロンドンの法でも、それを裁く条文はないだろう。しかし——」
彼は立ち止まり、夕暮れの大川の方を見た。水面が橙色に光っていた。
「法が裁けないことを、人の心は裁く。そして時に、その裁きは法よりも長く続く。それが怨霊伝説の原型だと、私は思っている」
常磐津の三味線の音が、どこか遠くからまた聞こえてきた。
夏の夕暮れは長く、江戸の空が、じわじわと赤く暮れていった。
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【結末:ロンドン時代】
気づくと、私はユーストン通りの石畳の上にいた。
爆発の衝撃で吹き飛ばされたはずが、どういうわけか意識がある。ガス管の爆発は、工事現場の向こうで起きていた。怪我人が出て、野次馬が集まっていた。ホームズは私のそばに座り、頭を軽く押さえていた。
「生きているか」と彼は言った。
「どうやら」と私は言った。「妙な夢を見た」
「津の国屋の夢か」とホームズは即座に言った。
「君も見たのか」
「見た」とホームズは言って、立ち上がった。「ワトソン、今回の件で一つ確認したいことがある」
「何だ」
「お清の死を病死と判断した医者は——症状を見てすぐに、何かがおかしいと思わなかっただろうか」
「私が見ていたら気づいたかもしれない」と私は言った。「しかし当時の江戸の医術では——」
「技術の問題ではない」とホームズは言った。「注意の問題だ。怨霊と言われた瞬間、人間は論理的な思考を停止する。それが悪人にとっての最高の隠れ蓑になる」
私はそれを考えながら、立ち上がった。脚に痛みがあったが、折れてはいなかった。
「ホームズ、一つ聞いていいか。あのお佐和という女は——恨みだけだったのか、それとも、善三郎に利用されたのか」
ホームズはしばらく黙った。
「おそらく——両方だ」とやがて彼は言った。「恨みは本物だった。しかしその恨みを誰かに方向づけられた。それが最も悲しいことかもしれない。純粋な怒りが、他人の欲望の道具に使われる——それは怒っている者にとっても、悲劇だ」
夜のロンドンに、遠くで馬車の音がした。
ガス灯の光の中で、ホームズはコートの埃を払い、何事もなかったように歩き始めた。
私はその後ろをついて歩きながら、夏の夕暮れの大川の橙色を、まだ目の裏に見ていた。
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本作は、アーサー・コナン・ドイル著『シャーロック・ホームズの冒険』および岡本綺堂著『半七捕物帳』への敬意と感謝を込めて執筆しています。
著:コナン・綺堂異流(Conan Kidoyle)




