閑話2 セレスティア悪評の真実と俺の特殊スキル
閑話1の続きです。
……だが、妙だ。
第一王子の評判も決して良くはない。
さらに、婚約破棄の理由が「建前と本音、両方とも広まっている」。
あまりにも不自然だ。
誰かが意図的に流しているとしか思えない。
――ならば。
俺の出番だ。
ーーー
王国民全てが10歳の時に受ける義務のある固有スキル判定。
俺の固有スキルは「剣士」。
確かに魔獣の多い辺境ではありがたいスキルだ。
だがそれは表向きの話、スキル判定を受けたとき――俺には“見えていた”。
公には表示されていない、もう一つの欄が。
そこに書かれていた特殊スキル。
『忍び』
気配遮断、潜入、そして分身。
ーーー
婚約の王命を受けた日の夕刻。
俺はモップノ伯爵家の屋敷に侵入していた。
気配は完全に消している。
誰にも気づかれない。
目当てはもちろん――セレスティア本人。
部屋を探し当て、中の様子を探る。
直接聞くのもいいが、今回は能力を使う。
空気から分身を生成し、その場に配置。
視覚・聴覚・嗅覚を共有できる。
俺はその場を離れ、別行動へ移った。
ーーー
「お嬢様、湯加減はいかがですか?」
「ちょうどいいわ。ありがとう、アンナ」
浴室での会話が聞こえる。
「辺境伯領に行ってもお世話させていただきます」
「……本当に来てくれるの?冷酷で危険な方だと聞いているわ」
「だからこそです。命をかけてお守りします」
「……ありがとう」
――優しい声だった。
……あれ?
話と違わないか?
素行不良どころか、まともどころか、実は人格者では?
さらに調べるため、屋敷内を移動する。
居間では使用人たちが話していた。
「お嬢様、あの辺境伯の奔放子息と婚約させられるなんてひどすぎるわよね……」
「性悪聖女の差し金でしょ。自分が第一王子と、ってことよ」
「奥様も前妻の子だからってあの扱い……旦那様どうして止めないのかしら」
「頭が上がらないのよ、奥様公爵家のご出身だから」
――なるほど。
ーーー
性悪聖女?が少し気になった。
「父上、第一王子殿下が新たに婚約をされるとの噂を耳にしましたが、お相手は聖女様なのでしょうか」
「ああ、その様に聞いている。お前にセレスティア嬢を押し付けて自分は聖女とということらしい。いいご身分だ」
「その聖女というのは?」
「なんでも、ダストボ男爵家のご令嬢のダリアン嬢だそうだ。王宮では好き勝手やっているとの噂だ」
「ダストボ男爵…宝石鉱山で有名なダストボ男爵か」
ーーー
その日の深夜。
今度はダストボ男爵家に侵入する。
ここにいるのは――聖女ダリアン。
食堂に分身を置いてその日は屋敷に戻る。
ーーー
次の日さっそくダストボ家で動きがあった。
分身を通じて朝食での会話を盗み聞く。
「お父様、ジョージアル殿下に今日も会いに行きますわ。予定通りとてもうまくいっているわ」
「そうか、第一王子だ、間違いなく王となられるお方だ、逃すなよ。それと、何度もいうが、聖女の力の秘密は守れ」
「わかっておりますわお父様。それよりセレスティアのことはどうなっていますの。いつ辺境伯領へ?同じ王都にいると思うだけで気がきでありません」
「ははは、あいつはもうダメだ。スキルが植物の成長促進。それもごく狭い範囲とか。聖女のお前が気にするまでもない。まあどうしても気になるなら明日にでも事故死してもらうが」
「ええ、それで構いませんわ」
――完全に黒だ。




