第4話 辺境伯領、そして本領発揮
三日後。
俺たちはついに、辺境伯領へと到着した。
「……すごい」
馬車の窓から外を見て、セレスティアが息を呑む。
無理もない。
そこに広がっているのは――荒野だ。
土砂漠と呼ばれる白い塩が積もり乾いた大地。
ところどころに岩肌が露出し、緑はほとんどない。
「ここが……」
「俺の領地だ」
誇れる景色ではない。
だが――
「魔獣の巣でもある」
俺がそう言った瞬間。
遠くで地響きがした。
「グルァアアアアッ!!」
咆哮。
巨大な影が、地平線の向こうから現れる。
「ま、魔獣……!?」
セレスティアの声が震える。
現れたのは、大型の四足獣。
岩のような外皮を持つ突進型――厄介な相手だ。
「ちょうどいい」
俺は馬車から降りた。
「ヴァルカス様!?危険です!」
「下がってろ」
短く言い、前へ出る。
護衛たちも武器を構えるが――
「手を出すな」
制止する。
そして。
「……久しぶりだな」
剣を抜いた。
魔獣がこちらへ突進してくる。
地面を砕きながら一直線。
普通なら回避一択だが――
俺は動かない。
「はぁっ!」
踏み込み。
一閃。
次の瞬間。
魔獣の巨体が、音もなく両断された。
「…………え?」
セレスティアの間の抜けた声が聞こえる。
血が遅れて噴き出し、巨体が崩れ落ちる。
「……こんなもんだ」
剣を軽く振って血を払う。
だが。
「ヴァルカス様!後ろです!」
振り向くまでもない。
気配は掴んでいる。
もう一体。
しかも、さっきより速い。
「――遅い」
俺は一歩踏み出し、気配を消した。
次の瞬間には、魔獣の懐。
「終わりだ」
首を刎ねる。
今度は完全に一瞬だった。
静寂が訪れる。
護衛たちも、セレスティアも、言葉を失っていた。
「……これが」
セレスティアが呟く。
「辺境伯家の……」
「日常だ」
俺は剣を納めた。
「ここでは、これくらいできないと生きていけない」
嘘ではない。
だが全部でもない。
「……すごいです」
素直な感想だった。
尊敬と、少しの安心が混ざっている。
「まあな」
軽く流す。
そして――
「試したいことがある」
視線を大地へ向ける。
この荒野。
もっと緑があったらどんなにいいか。
「セレスティア嬢」
「は、はい」
「君の力を貸してくれないか」
「……え?」
「この領地を変えるぞ」
…2人の王国史に語り継がれる挑戦が今始まった。




