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追放された伯爵令嬢、生命をつなぐ禁忌魔法で覚醒したら冷酷な辺境伯令息に溺愛されています  作者: 積と和〝
第2章 覚醒と侵食する悪意

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第15話 守るべきもの

「全員、配置につけ!」


怒号にも似た号令が、領内に響き渡った。


空気が一瞬で張り詰める。

兵たちの動きが止まり、次の瞬間には一斉に持ち場へと散っていく。


その先――視界の向こうから押し寄せてくるのは、


魔獣の大群だった。


「数は……百以上です!」

物見からの報告が飛ぶ。


ざわめきが広がる。

だが俺は、それを一瞥しただけだった。


「多いな」

短く呟く。

だが、それ以上の感情はない。


――想定内だ。


ーーー


「ヴァルカス様、これは……」


隣に立つセレスティアが、不安げに声を漏らす。


俺は魔獣の動きを観察しながら答えた。


「誘導されてるな」


「……やっぱり」


「誰かが意図的に集めてる」


その言葉で、場の空気が一段階重くなる。


答えは一つしかない。


――悪魔教。


ほぼ確定だ。


「……なら」


セレスティアが一歩前に出た。


「私も戦います」

迷いのない声だった。


だが。


「駄目だ」

俺は即答した。


「前線には出るな」


「でも――」


言いかけた言葉を遮る。


「お前の役割は別だ」


そう言って、足元の大地を指した。


「ここを守れ」


「……!」


セレスティアの瞳が見開かれる。


「この土地がある限り、俺たちは負けない」


それはただの慰めではない。

事実だ。


この領地は、すでに“戦力”になっている。


しばしの沈黙のあと、セレスティアは強く頷いた。


「……はい!」

その声に、もう迷いはなかった。


ーーー


「来るぞ!」


次の瞬間、魔獣の群れが一斉に押し寄せる。


地鳴りのような足音。

唸り声。

殺気。


護衛たちが迎撃に出る。


剣と牙がぶつかり、血が飛ぶ。


だが――数が多い。


「押されてる……!」


誰かが叫ぶ。


陣形がわずかに歪む。


「……想定通りだ」


俺は一歩前に出た。


戦場を見渡す。


全体の流れ。

圧の向き。

崩れかけている一点。


そして――理解する。


「全体を見ろ」

誰にともなく呟く。


戦場は“流れ”だ。


「流れを止めれば、勝てる」


ーーー


狙うべきは一つ。


――一点突破。


群れの中心。

流れを生み出している“核”。


「見つけた」


そこにいた。


異様な気配。


魔獣ではない。

明らかに異質な存在。


「お前か」


影が揺らぎ、形を持つ。


現れたのは――女。


「初めまして」


妖しく微笑む。


「リリスよ」


その瞬間、空気が歪んだ。


「あなたがヴァルカス?」


「そうだ」


短く答える。


リリスは楽しそうに目を細めた。


「いいわね」


舌なめずりでもするような声音。


「壊したくなる」


ーーー


その瞬間。


視界が揺らいだ。


景色が歪む。

地面の感覚が消える。


――幻覚。


「……なるほど」

即座に理解する。


精神干渉。


認知操作。


「だが――」


俺は静かに目を閉じた。


視覚を捨てる。


代わりに使うのは、


気配。

音。

殺気。


「効かない」


空間の“違和感”がはっきりと見える。


「なっ……?」


リリスの驚きが伝わる。


「目に頼るからそうなる」


俺は一瞬で距離を詰めた。


「終わりだ」


斬る。


確かな手応え。


だが、


「残念」

手応えが霧のように消える。


「……本体じゃないか」


「ええ」


声だけが残る。


「今日は挨拶よ」


ーーー


その直後。


魔獣の動きが、ぴたりと止まった。


「……撤退?」


群れが一斉に引いていく。


統率された動き。


「なんだ……?」


困惑が広がる。


ーーー


やがて、戦場に静寂が戻る。


俺は剣を収めた。


「……試されたな」


間違いない。


これは戦闘ではない。


――偵察だ。


ーーー


「ヴァルカス様!」


セレスティアが駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか!?」


「ああ」


軽く答える。


「問題ない」


そして空を見上げる。


「これで確定だ」


風が吹く。


嫌な予感が、形を持つ。


「本格的に来るぞ」


――悪魔教が。


ーーー


その背後で。

守られた土地が、静かに息づいていた。


緑が揺れる。

命がそこにある。


「……守りきる」

セレスティアが呟く。


その声に、もう迷いはない。


「全部な」

俺は答えた。


戦いは、次の段階へと進む。

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