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追放された伯爵令嬢、生命をつなぐ禁忌魔法で覚醒したら冷酷な辺境伯令息に溺愛されています  作者: 積と和〝
第2章 覚醒と侵食する悪意

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第13話 それぞれの大切な人

セレスティアは屋敷に戻ってからも、眠り続けていた。


「魔力切れでしょう」

医師はそう言った。

命に別状はない、とも。


だが――


(それで済ませていい状態か?)


どうにも胸の奥が落ち着かない。


気づけば。

俺はずっと、ベッドの横にいた。


白く、細い手。


普段は控えめに動くその指が、今はまったく力を持たない。


「……無理をさせたな」

ぽつりと呟く。


返事はない。


当然だ。


それでも――


「……すまない」

もう一度、言う。


(俺がやらせた)


選ばせたように見えて、実際は違う。

あの状況で断れるはずがない。


「……守るつもりだったんだがな」

小さく、自嘲が漏れる。


気づけば。


その手を――握っていた。


「……冷たいな」


思ったよりも、体温が低い。

少しだけ、力を込める。

まるで、繋ぎ止めるみたいに。


(……離したら、このまま消えそうだな)


そんな馬鹿げた考えが浮かんで。


自分で少し驚いた。


「……何を考えてるんだ、俺は」


苦笑する。


それでも。

手は離さなかった。


ーーー


どれくらい時間が経ったのか。


いつの間にか、意識が落ちていた。


そのまま、ベッドに伏せるようにして眠っていたらしい。


「……ん」

目を開ける。


わずかに動く気配。


顔を上げた、その瞬間――


「……あ」

目が合った。


セレスティアと。


「っ……!」

反射的に、手を離しかける。


だが。


「……ヴァルカス様」

弱々しい声。


その瞬間。


――ぎゅっ

逆に、握り返された。


「……え?」


思わず固まる。


「……よかった」

かすかな声で、彼女が言う。

「夢じゃなかった……」


「……何がだ」


「ここに、いてくれたことです」


その言葉に――


一瞬、思考が止まる。


「……当然だろう」

ようやく出た言葉は、いつも通りぶっきらぼうだった。


「お前が倒れたんだ。放っておくわけがない」


「……はい」


安心したように、目を細める。


そして。


まだ手を握ったまま、離さない。


(……離す気、ないのか)


いや、むしろ。


(……俺の方か)


離す理由が見つからない。


「……あの」

セレスティアが、少しだけ躊躇いながら言う。

「もう少しだけ、このままでも……いいですか?」


「……好きにしろ」

即答した。


――少し早すぎたかもしれない。


だが。


「ありがとうございます」

嬉しそうに、微笑む。


その顔を見て。


(……まあ、いいか)


そう思ってしまった。


ーーー


しばらくして。


「……すみません」

セレスティアが、はっとしたように手を離す。

「私……」


「気にするな」

先に言っておく。

「問題ない」


「……はい」


少しだけ名残惜しそうに、自分の手を見る。


その仕草に――


妙に意識が引っ張られる。


(……重症だな)


自覚はあった。


ーーー


「それよりだ」

話を切り替える。


「もうあんな無茶はするな」

少し強く言う。


「今回は結果が良かっただけだ」


「……でも」

言いかけて、止まる。


「……はい」

素直に頷いた。

「約束します」


その言葉に、わずかに力が抜ける。

「ならいい」

短く返す。


ーーー


「腹は減っていないか」


「少しだけ……」


「分かった。用意させる」


椅子から立ち上がる。

だが、扉に向かう直前。


「……ヴァルカス様」


ゆっくりと振り返る。


「……ありがとうございました」


真っ直ぐな目。

飾りのない言葉。


「……気にするな」

それだけ言って、部屋を出た。


(……ああいうのは、ずるいな)


静かに息を吐く。


ーーー


「アンナ、ありがとう」


ベッドの上で食事をとるセレスティア。

「こんなこと……少し恥ずかしいですね」


「いえ……ヴァルカス様のご指示ですので」

アンナは少し困ったように笑う。

「それに……」


少しだけ声を落とした。

「ヴァルカス様、ずっとお嬢様のそばにおられて……」


「え?」


「その……手も、ずっと握られていて……」


「……そうなの?」


セレスティアの頬が、わずかに赤くなる。


「はい。とても大切そうに」


思わず固まる。


「もしかしたら……とてもお優しい方なのかもしれません」


その言葉に――

セレスティアは、ふっと笑った。

「ふふ……」

「気づいちゃったのね」


「えっ!?」


アンナが慌てる。


「だって、そうでしょう?」


優しく微笑む。


「少しぶっきらぼうだけど……とても優しい人よ」


「うぅ……!」

アンナが慌てて手を振る。

「こ、これまでのヴァルカス様への暴言の数々はどうか内緒でお願いします!」


「あはは、分かってるわ」

自然と、笑いがこぼれる。

こんな風に笑ったのは――

いつ以来だろうか。


「……ああ」

小さく息を吐く。


(悪くない)


そう思えた。

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