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黒穴  作者: とるてぃ
8/11

「黒い穴」伝説3

 あまり眠れぬ夜を過ごしたネオは、なんとか布団から這い出した。

 いつも通り朝食をとり、いつも通り学校へ向かう。失恋を引きずるうつろな眼差しをいつもの席へ向ける。

 「ほら、席に着け」

 教師の声が教室に響く。その声でネオはやっと学校にいる実感を持てた。

「一昨日までのお話を覚えているか?早速続きを始めるぞ」

 その台詞で、ネオは伝説の存在を思い出した。結局黒い穴はどうなった?本当にあったッ出来事なのか?好奇心がネオの傷ついた心を紛らわした。


 黒い穴(ウーハ)へと敵を道連れにする作戦を否定した若者は、牢へと入れられた。そして彼が縛り首にされる日がついに来た。 若者は兵士に両脇を固められ、町の真ん中に建てられた死に場所へまっすぐ向かうしかなかった。

しかしその時だった。若者と同じ志を持った者たちが彼を助けようと武器を取り、兵士たちをたこ殴りにした。そう、革命だ。兵士たちも必死に応戦するが、その群衆の数には勝てなかった。

若者を縛る縄も解かれた。そして驚く兵士たちの武器を取り、革命に加わった。

「犠牲ある作戦を許すな!こんな国、潰してしまえ!」

 勇敢なその叫び声に応じて、仲間たちはさらに攻撃を進めた。そしてついに、若者たちは城にいる王のところまで辿り着いた。王は慌てふためき、助けを求めた。

「兄さんだって、死にたくなかったんだ。お前が命令しなければ、兄さんは死ななかったんだ」

 泣きながら剣を取った若者は、王の体を刺し貫いた。

 王を討ち取った若者は、勇者として称えられた。そして人々は言う。

「勇者よ、あなたが新しい平和な国をつくってください」

 若者は頷いた。革命は成功したのだ!

 以降、黒い穴は高い壁で囲まれた。もう二度と、犠牲を伴う作戦などできないように。そして新しい王国は栄え、戦いもなく平和に続きましたとさ。


「これでお話はおしまい。卑怯な手を使う者は、必ず滅びるのだ。犠牲の上に成り立つ幸せなんて、嘘っぱちだ。そして、正義は必ず勝つ。みんなも若者のように、誰かを蹴落とす悪い人間を許さない、正直な人になるんだぞ」

 気がつけば伝説は幕を閉じていた。ネオの疑問は何も解決されていない。

「何か質問がある子はいるか?」

 ネオは黙って手を挙げた。教師は一瞬目を丸くして、ネオに話すよう促した。

「先生、このお話は本当にあったんですか?」

 教室が静寂に包まれた後、どっと笑いが起きた。

「こいつ馬鹿だよ、嘘に決まってるだろ」

「黒い穴なんてあるわけないよ」

 同級生たちからの嘲笑に顔を赤らめながら教師の方を見つめると、教師も笑いを堪えていた。

「ネオくん、伝説って言うのはね、つくられたお話なんだよ」

 仲間がいなくなったネオは、恥を一人で背負っていた。ネオはその後家まで黙って過ごしていた。

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