「黒い穴」伝説3
あまり眠れぬ夜を過ごしたネオは、なんとか布団から這い出した。
いつも通り朝食をとり、いつも通り学校へ向かう。失恋を引きずるうつろな眼差しをいつもの席へ向ける。
「ほら、席に着け」
教師の声が教室に響く。その声でネオはやっと学校にいる実感を持てた。
「一昨日までのお話を覚えているか?早速続きを始めるぞ」
その台詞で、ネオは伝説の存在を思い出した。結局黒い穴はどうなった?本当にあったッ出来事なのか?好奇心がネオの傷ついた心を紛らわした。
黒い穴へと敵を道連れにする作戦を否定した若者は、牢へと入れられた。そして彼が縛り首にされる日がついに来た。 若者は兵士に両脇を固められ、町の真ん中に建てられた死に場所へまっすぐ向かうしかなかった。
しかしその時だった。若者と同じ志を持った者たちが彼を助けようと武器を取り、兵士たちをたこ殴りにした。そう、革命だ。兵士たちも必死に応戦するが、その群衆の数には勝てなかった。
若者を縛る縄も解かれた。そして驚く兵士たちの武器を取り、革命に加わった。
「犠牲ある作戦を許すな!こんな国、潰してしまえ!」
勇敢なその叫び声に応じて、仲間たちはさらに攻撃を進めた。そしてついに、若者たちは城にいる王のところまで辿り着いた。王は慌てふためき、助けを求めた。
「兄さんだって、死にたくなかったんだ。お前が命令しなければ、兄さんは死ななかったんだ」
泣きながら剣を取った若者は、王の体を刺し貫いた。
王を討ち取った若者は、勇者として称えられた。そして人々は言う。
「勇者よ、あなたが新しい平和な国をつくってください」
若者は頷いた。革命は成功したのだ!
以降、黒い穴は高い壁で囲まれた。もう二度と、犠牲を伴う作戦などできないように。そして新しい王国は栄え、戦いもなく平和に続きましたとさ。
「これでお話はおしまい。卑怯な手を使う者は、必ず滅びるのだ。犠牲の上に成り立つ幸せなんて、嘘っぱちだ。そして、正義は必ず勝つ。みんなも若者のように、誰かを蹴落とす悪い人間を許さない、正直な人になるんだぞ」
気がつけば伝説は幕を閉じていた。ネオの疑問は何も解決されていない。
「何か質問がある子はいるか?」
ネオは黙って手を挙げた。教師は一瞬目を丸くして、ネオに話すよう促した。
「先生、このお話は本当にあったんですか?」
教室が静寂に包まれた後、どっと笑いが起きた。
「こいつ馬鹿だよ、嘘に決まってるだろ」
「黒い穴なんてあるわけないよ」
同級生たちからの嘲笑に顔を赤らめながら教師の方を見つめると、教師も笑いを堪えていた。
「ネオくん、伝説って言うのはね、つくられたお話なんだよ」
仲間がいなくなったネオは、恥を一人で背負っていた。ネオはその後家まで黙って過ごしていた。




