礼拝
夢を見ず爽快に起きたネオは、大きく伸びをした。
「おはようネオ。朝ご飯を食べたらすぐに家を出るよ」
パンを食べ、さっそく着替えを始めた。母は慌ただしく化粧をしている。準備を終えた父は、タバコを吸いながら外の景色を眺めている。
「準備できたか、行くぞ」
ネオと母が準備し終えたことを確認し、父はドアを開けた。
煙だらけの町に似つかわない、荘厳な建物。周りの煙突もそこそこの高さがあるが、この教会の尖塔は抜きん出ている。あまり神に関心のないネオも、教会の敷地に足を踏み入れる時ばかりは神妙な面持ちとなる。
教会に入ると、町の人全員が座れるだけの椅子が並んでいる。ネオ一家はいつも通りの席に座った。古ぼけた椅子がギイと鳴く。司祭が来るまでの暇つぶしに、ネオは教会の中を眺めていた。
白い服に包まれた人々が続々と入ってくる。母と父は知り合いに挨拶をするのだが、ネオにその相手はいない。クッロを見かけると、ネオは昨日のことを思い出して目を背けた。
周りは石壁で囲まれている。その壁もやはり人々と同じく真っ白だ。大昔からある建物だが、とてもそうとは思えないほど美しい。所々ヒビが入っているが、それは地震に耐えてきた証拠だという。
ネオが眠気に負けそうになったところで、質素だが厳かな服を着た司祭が入ってきた。尖塔から鐘が鳴り響く。お喋りが一斉に止む。
「それでは、礼拝を始めます。ご起立を」
皆が一斉に立ち上がる。ネオも一瞬遅れて立ち上がる。
司祭は鈴が付いた杖を手にした。それを2回、床に叩きつける。
「それでは、御言葉を唱えましょう。『光よ、闇の者を討ち払え。神よ、光の僕に安寧を』」
皆が復唱する。
「光よ、闇の者を討ち払え。神よ、光の僕に安寧を」
司祭が大きく息を吸い込む。
「サローネ」
皆も唱える。
「サローネ」
「ご着席ください」
静かに皆が座る。全員が座ったことを確認した司祭は、説話を始めた。
「皆様、本日もお祈りいただき誠に感謝いたします。この世の光であらせられる神の僕として、祈りを捧げることで皆様は死後光の国へと導かれます。教会に訪れない曜日であっても、『サローネ』と日々祈ることを忘れずに」
いつも通りの説教が終わった。
「それではこれより、神による施しを与えます」
司祭がそう言うと、籠を抱えた青年たちが椅子の周りへ集まってきた。聖職者として神に仕える修行をしている僧侶たちだ。彼らは各家族にパンを与え、「サローネ」と呟く。ネオの父親も修行僧からパンを受け取り、「サローネ」と返した。先にパンを受け取った家族は、早々に教会を後にしている。それに続き、ネロたちも教会の外に出た。




