表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/30

鈍い男子生徒の終焉

 次の日の放課後、恭也は六人の女性に屋上で囲まれていた。ただし、いつもの明るい雰囲気はみじんも無く、ただ重苦しい空気が流れていた。

 

 簡潔に言うならば修羅場だ。

 恭也が六人の女性を放課後に呼び出したまでは良かった。そこで誰か一人を好きだと言えば良かったのだ。


 だが彼は言わなかった。と言うよりは言えなかったのだ。

 今まで誰に対しても、自分が好かれていると気付かなかったような鈍い男が、いきなり六人もの女性を目の前に上手く立ち回れるはずが無い。鈍い彼は鈍いからこそ許されていた行動も、明確に意識した行動になれば、一人を傷つける事に恐怖し全員に良い顔をする。当然女性陣も、仕方ないでは済まさない。はっきりとした答えを求め詰め寄る。


影から監視している薫は思う。

(この調子ならもうすぐだ)


「私は、先輩の笑顔が好きでした。でも、今の笑顔は最低です」

一年生の相沢優子が屋上を去る。


「…………」

無言のまま三年の小柳翔子も去る。


「やっぱり私の思いは全く伝わってなかったんだ。でも、片思いは楽しかったよ」

涙を浮かべながら、精いっぱいの笑顔を向け、走って行く二年の吉川なつみ


「死んじゃえバカ!!」

 と罵り、その場にうずくまる佐々木晴香。


 その佐々木晴香にそっと寄り添い、担任教師の佐藤由希も教え子に言う。

「山口君、男の子ならたくさんの女の子にモテたい気持ちはわかります。でも、先生くらいの年齢ならまだしも、貴方と変わらない年齢の女の子を多く悲しませるのは感心しません」

業務的な口調で諭し、佐々木晴香を連れて屋上の扉をくぐる。


 最後は三井雅。彼女は、ただ恭也を見つめていた。

 どのくらいの時間そうしていただろうか、何かを決めたように恭也の目に立ち、左の頬を叩いた。


「こうなったのは恭君の責任なのわかってる? いろんな人に好かれるのは恭君の魅力だし、ライバルが多いのは私も困ったけど、それでも良かった。でも、なんで今日いきなり全員を傷つけたの? もっとゆっくり一人に決めれば良かったじゃない!」


「男なら決めるべきだと思ったんだ」

 目を伏せたまま自分の行動の説明をするが説得力は無い。それは当然だろう。薫に急に付きつけられた現実。それをアドバイス通りに実行しても破滅するしかないのだ。


 すると今度は優しく慰める。

「私は恭君の味方だよ。今回の事は二人でゆっくり解決していこ? 私が皆にフォローを入れるから恭君は心配しないで」

「雅、俺……俺……ッ」


「良いんだよ。私が付いてるから、恭君は私がずうっと守ってあげる」


 そう言って恭也を抱きしめる。薫からの角度から見えたのは、恍惚な表情を浮かべる三井雅。そして、こう続ける。

「私は恭君を裏切らないし、嘘もつかない、永遠に恭君以外の男性を見ない、恭君が望むならどんな事でも大丈夫。だから恭君も絶対私を裏切らないで?」

「ああ、俺も裏切らない。だからずっとそばに居てくれ」

 恭也は雅の台詞を疑うどころか、すがりつく対象を有り難く思っているようだった。


 これは薫に取って予想外だった。彼のシナリオは全員に嫌われて、学校中に広まることだった。そうすれば確実に孤立するし、普通の高校生が体験しないようなトラウマも持つだろう。少なくとも今後複数の女性をはべらそう等とは思うまい。それだけで十分なはずだった。自分から異性を遠ざけてくれればいい。

 それだけで良かったのに、彼に首輪が付いた。永遠に外れない強固な鎖が。

 

『あらら、彼女、雅さんは強烈な愛情の持ち主だったんですねぇ。これはこの先破滅ですね』

 おめでとうとうございます! と、にこやか言うこの十五センチの妖精を捻り潰したい衝動を堪える。ミルがいなければ元の世界に帰れない。


 自分以外の全てを犠牲にすると決めている薫だが、この妖精に言われると殺意しか湧かない。自分は何もしない癖に、人の破滅を快楽的に笑うのだ。いずれ、何もかも終わった時に必ず息の根を止めると薫は誓っている。


「終わりだろ。早く移動しろ」

 不愉快さを隠す様子も無く、ミルに告げる。


ミルは名残惜しそうに二人を見ていたが、薫の言う通りにする。

『では、次の世界に行きますよ』

薫を中心に光が生まれ包む。


「どうしたんだ雅?」

「ううん、なんでもないよ。気のせいだったみたい」

一瞬、薫が見えた気がしたが、今はどうでもいいことだった。やっと手に入ったのだ。もう手放さない。そう思って雅はきつく恭也を抱きしめた。


鈍い男子生徒編はこれで終了です。

何かありましたら、メッセージを頂けると有り難いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ