鈍い男子生徒の周囲
放課後を待って再度行動を開始する。
恭也本人を尾行するためだ。二年A組を探しだし、不自然にならないように出入り口から覗く。
教室の後ろに机を囲んでいる女子生徒の塊が出来ていた。注意深く観察すると、そこからチラリと見えるのは恭也だ。
女子生徒は三人、この時点で先程より一人多い。しかし、その中に晴香はいるが雅はいない。とすると知らない顔が二人。これで五人の異性に囲まれている事が判明する。
(佐々木晴香に敬語を使ってるのは一人。もう一人はタメ口だが佐々木晴香もタメ口で返してるって事は二年生か。という事は一年生が一人に、二年生が三人。そして生徒会長の三年生が一人)
薫が思惑を巡らし、その場を後にする。
一階には学食が存在し、今度はそこでの調査を行う。五・六人で集まっている男子生徒に目を付け愛想よく話しかける。
「少し良いかな。今、人を探してるんだ。山口恭也っていう二年生なんだけど、知らないかな?」
知らない人間とはいえ、同じ制服の同姓となれば、警戒心は無いに等しい。上手く話して聞けば問題ない。
「二年で山口って言ったらアノ人じゃない? ほら、女垂らしで有名な」
「オイッ! ……すいません、今の聞かなかった事にしてくれると有り難いんですけど」
口が随分と軽い彼の失言を仲間が諌める。
しかし、薫は《女垂らし》のワードを待っていた。より深く聞きだす為に笑顔を振りまく。
「大丈夫だよ。彼の事をそう評価しているのは君だけじゃない。少なからず皆思ってる事さ。俺も三井さんは可愛いと思っていたんだけどね」
薫の大丈夫だよ、を開始の合図にして愚痴大会が始まり、十分の間に女子生徒の名前が次次に挙がる。
一年生:相沢優子
二年生:三井雅・佐々木晴香・吉川なつみ
三年生:小柳翔子
担任教師:佐藤由希
これが山口恭也を囲んでいる女性の全員らしい。
まだ愚痴は続いていたが、名前が判明すればそれだけで良い。ワザとらしく時計を視界に入れ、言い訳を付けてその場を去る。
教師に見つからない様に学校を離れ、公園のベンチで作戦を練る。
これが戦場などであれば、主人公サイドの陣営に付けば食事と寝床の確保も容易だが、ある程度の安定と発達があれば法律があり、それを行使できる機関が存在する。
法に触れれば捕まり、最悪な状況に陥る事になるので緊張は緩められない。
「教会でもあれば、奉仕活動と引き換えに寝床の確保くらいできるが、この街の発達具合じゃ学生は不審だな」
家出人を装う事も考えるが、万が一行政機関にでも連絡されれば終わりだ。
そんな事を考えていると日は随分と傾いていた。公園での野宿を覚悟していると、偶然恭也が通りかかる。
「あれ、立花君? どうした?」
薫にはそれが恐怖に震えた。
「あまりにも都合がよすぎる。もしかして巻き込まれたか?」




