鈍い男子生徒の性質
あ~ん。をした後、今度は茶髪の子の攻撃が始まる。
「ほら恭也! 僕だって頑張ったんだからしっかり食べて!」
そんなやり取りが三十分続き、昼食が終わる。
お互いの自己紹介で黒髪の子は三井雅、茶髪の子が佐々木晴香、主人公と疑わしいのは山口恭也と判明した。
「お父さんの仕事の都合で転校なんだ。大変だね」
と雅が重箱を片付けながら告げる。
「まあね、父親の転勤は慣れているつもりだったけど、いきなりはキツよ」
「でも俺らと同じ二年生って事は同じクラスになるかもな! 俺たち三人ともA組なんだ」
爽やかに言う恭也に同調するように話を合わせる。
「登校は四日後だけど、まだ俺も知らないんだ。同じクラスになったら宜しく」
今まで黙っていた晴香が口を開く。
「立花君は入る部活は決めた? 見た感じ足速そうだし、良かったら陸上部に来ない?」
入る気は無いが、一応愛想の良い返事をする。
「走るのは好きだし考えておくよ。そう言えばこの学校で強い部活ってあるの?」
それに答えたのは雅だった。
「それは多分ウチかな。私は弓道部なんだけど、部長であり生徒会長が物凄く上手いの。二年生の時から部長をやってるくらいだから」
なるほどと相槌を打って参考にする。
「そういえば、生徒会長に誘われてたよね。生徒会に入らないかって」
「でも断ったろ? ……なんでアノ人、俺を誘ったんだろ。俺、あんま頭とか良くないのに」
それを聞いて薫は静に確信する。間違いなくコイツが主人公だと。
そこで予鈴のチャイムが鳴る。薫以外は授業があるために教室に戻ろうと立ち上がり、恭也は思い出したように薫に言う。
「そういえば職員室の場所を案内するよ。もし良ければ授業をサボって案内するけど?」
「ありがとう。でもサボりは不味くない? 正式な登校前に先生に目は付けられたくないよ。それに職員室は大丈夫、探検ついでに見つけるから。あっ、それと悪いんだけど、俺の事はあまり他の人には言わないで貰えると助かるな。悪目立ちもしたくないし」
あくまで紳士的に、かつ悪戯心を忘れない様に茶目っ気を出す。それに深入りもしてほしくは無いし、適切な距離を保ちたくもある。
「そうか、じゃあ俺たちは戻るな。次会う時は四日後かな」
「……いや、明日も多分学校のどっかにいるよ。今日みたいな出会いもあるかもしれないし」
じゃあ、昼休みに学校に居るようなら屋上に来てくれ、と言って三人は去って行った。
笑顔で彼らを送り出した薫は、扉が閉まると同時に笑顔を消す。
「間違いないな、アイツだ。典型的な学園のモテ男。ああ言うのは無意識に異性を引き付けて虜にさせるんだよな。下級生から果ては教師に至るまで」
『次はどうするんですか? いつも通りなら彼と関係性がある女生徒の調べ上げですよ?』
「ミル、わかってるから嬉しそうに言うな」
『だって彼らと仲良くなれそうだったじゃないですか。良い具合に学生できてましたよ?』
「俺がこの世界の住人で、おまえが目の前にいなければ、そうなってたかもな」
独り言の様な二人の会話が繰り広げられているが、誰にも届かず風に流されていくだけだった。




