鈍い男子生徒の言動
「あの、急いでるわけではないので後で良いんです。昼食の邪魔でしょうし」
目立ちたくない一心で適当にごまかすが、空気が読めない彼はとんでもない事を言う。
「なら、一緒に昼食べませんか?」
なぁ? と自分の両サイドに居る女子生徒に話しかける。
「……えぇ、良いんじゃない?」
と答えたのは、黒で長い髪の少女。
「僕も構わないよ…………もう、バカ」
と言ったのは、茶色いショートヘアの少女。
無闇に嫌われる事はしたくないのだろう彼女たちは、渋々といった様子で頷く。
好意を持っている異性との食事会に、自分が割り込んでも良いのか返答に困っていると、黒髪の少女が器量の良い面を見せようとしてか、諦めてか、自作の弁当の量は多いからと、再度誘ってきた。
ここで強く拒否すれば今後の接触具合も変わってくる。ならば愛想マックスで気を使い、当たり障りのない会話で主人公かを探り、次の手を考える事にする。
「すいません。じゃあ、お言葉に甘えても良いですか? 実は購買とかの位置もわからなくて空腹だったんだ」
あはは、と笑い無害だと信用させる。
ベンチの中央の男子生徒を挟むように女子生徒が座り、薫は端に座る。
黒髪の少女は手際よく自分の作った重箱の中身を紙皿に盛りつけて行く。最初に男子生徒、次に茶色いショートの子、最後に薫に手渡す。
礼を言って受け取るが、ある事に気付く。
「あの、貴女の分は? 紙皿も箸も余分にあったわけじゃないですよね?」
「いえ、良いんですよ。気にしないでください。私は大丈夫ですから」
そう言って、食べて下さい、と勧められたので素直に口に卵焼きを運ぶ。
少し焦げたような味が、料理をあまり作らない彼女が必死に作った事が窺える。
それでも美味しい範疇に十分に達しうるそれを、有り難く食べていると、男子生徒も卵焼きに箸を付け、これは美味しいな! と驚愕していた。それを嬉しそうに見ていたかと思うと、意を決したように彼に言う。
「なんだか、見てたら私もお腹が空いてきたなぁ。ねぇ、恭君、あ~ん、して?」
凄い策士だと薫は評価する。アクシデントさえ自分の味方にして距離を詰めようというのだ。相手に気付かれない様に、そして自分は食べる物が無いと状況を作り、確実に捕らえる。
しかし、これも薫には役に立つ仕草だった。似たような状況になれば、相手の行動予測が立つためだ。
「え!? でも、ま~確かにな。作った本人が食べられないのは悔しいもんな」
納得して身体ごと彼女に向き、望み通りの行為をする。
彼は気付いていない。自分の後ろには鬼も泣く様なオーラをまとった人類がいる事を。




