魔法学園の個人戦
そして、個人一回戦目。薫の出番が巡ってきた。
団体の二回戦目から、控室でストレッチや作戦の確認を愛美と弥生と行っていた。
「緊張しないほうが無理だと思うけど、緊張しないでゆったりとした気持ちでね。変に力が入ると、弾丸の速度とコントロールに影響でちゃうよ」
愛美が落着かない風に薫の手を握る。
「戦う前の選手に言うのは失礼と承知だが、万が一立花が負けても二回戦目には仲谷、最終戦には私もいる、何も気負わず戦ってくれ」
弥生も気を使い、薫に言葉を掛ける。
「大丈夫です。緊張はしてますが落ち着いてます」
『さすがに度胸は半端ないですね薫。何度か死にそうになった事もありましたもんねぇ』
ミルを無視し立ち上がる。あと少しで試合が始まるので、グラウンドへ向かう。
生徒の歓声は衰える事は無く、グラウンドに現れた薫に向けられた。
最近編入してきての大抜擢という話は一瞬で巡っていたらしく、物珍しいので余計に歓声が響いていた。
【個人一回戦目、この戦いには初参加の生徒が二人いますが、どのような戦いを見せてくれるのでしょうか!?】
薫の目には吉川紗枝しか写っていなかった。
(彼女さえ倒せればそれで良い。罪悪感はあるが骨の一本でも折れば戦意喪失するだろう。もしかしたら、それがトラウマで退学でもするかもしれない)
そう思い、意を決する。
【カウント五・四・三・二・一・開始!!】
頼るべき仲間もいない個人戦。
まずは吉川紗枝以外を狙う。
右手で弾丸を作り、発射する。右側に居た生徒の即頭部に物凄い速さで炸裂した。人に向けた実践は初めてだったが上手く行った。
【鋼宮魔法学園に二ポイント追加です!!】
ポイントに興味の無い薫は左に視線を移す。そこには吉川紗枝だけが立っていた。
【社中央学校に三ポイント追加! なんと新人二人が残りましたぁ! これは予想外!】
うざったいほど声を張り上げる実況に、苛立ちを覚えながら薫は目線を外さないまま構える。
相手の攻撃方法を見ていないのがツライが、何もしないわけにはいかない。自分にあるのは弾丸魔法を高速で打ち出すことと、ある程度のコントロール。
それしかないのなら、それを実行する以外にはない。
敵に向かって弾丸を三発、右と左に弧を描きながら一発ずつと、直線を一発が同時に襲う。
(上に飛べば仕留められる!)
だが、薫の認識が甘かった。
突然、顔面に衝撃と痛みが襲ってきた。突然の事に仰け反る身体を、無理やり堪える。
【私の見えた限りでは、立花選手の魔弾を吉川選手が蹴り返したように見えました】
(くそっ! そういうことか!)
実況によって、自分の状況を知った薫は心中で悪態を吐く。
反った上体を元に戻すと、目の前には上下が逆の右足があり、その奥には吉川紗枝がいた。
(踵落としか!!)
瞬間、薫は防御の体勢に入ろうとしたが、脳天に踵が落ちてくる方が早かった。




