魔法学園での勉強
『聞いた感じは面白そうな世界ですね。魔法ですか、夢がありますよね』
「お前は気楽でいいな。こっちは明日から、強制的に魔法とやらの訓練だ」
魔法の事を中心に約二時間、愛美から様々な事を教えてもらった。今、愛美はシャワーを浴びに部屋を出ていた。
ミルは腕を組んだまま空中に浮いていたが、考えがまとまったのか口を開く。
『先程の話から、薫には魔法をきちんと学んでもらった方が良いと、私は思うんです。主人公が誰かもわかっていない今、相手がだれであってもコンタクトがてれるように、一目置かれる存在になって下さい』
「そんな時間は無ぇだろ。一刻も早く主人公を見つけて叩く。それで終わりのはずだ」
『それはそうなんですけど、相手が勝てないくらいに強かったり、強くなければ相手にされなかったりしたらどうするんですか? 今回は私が周りの事に気を使います。薫が主人公に引かれそうになったら注意を促します』
「やけに協力的だな。気持ち悪い」
『失礼な! 薫が死んだら私だって困るんですよ。一から人間関係を築くのは大変なんですよ!?』
「お前、俺と人間関係を築けてたつもりなのかよ」
その言葉に臍を曲げたのか、そっぽを向いてミルは黙りこむ。
そこにガチャリ、と部屋の扉が開き愛美が帰って来た。
「待たせちゃってごめんね、授業で魔法の練習してたから汗かいちゃって」
「いえ、私の方こそごめんなさい。本来ならもっと早くシャワーを浴びられたのに」
お互いに相手を気遣った台詞が妙に面白く、クスクスと笑いが満ちる。
「もう十八時だ。お腹空いたね、食堂に行こうか」
愛美に案内され食堂に向かう。
食堂には多くの生徒がおり、賑わいを見せていた。
夕飯は愛美お勧めのハンバーグ定食を食べ、食堂に居た友人を数人紹介してもらった。
夕食が終わっても、物珍しい転校生の薫は、暫く取り囲まれ解放されなかった。
部屋に入った途端にため息を吐く薫に、愛美は苦笑いを見せる。
「お疲れ様。ごめんね、やっぱり転校生は珍しいみたいだから。許してあげて?」
「でも嬉しいんですよ。楽しかったですし」
それは本当の事だった。本来学生のはずの薫にとって、久しぶりに学生生活が出来ているのだ。異世界を繰り返し巡るこの生活では学生である方が少ない。ましてそこで生活などは出来ないのが普通になっていたからだ。
そんな事を知るはずのないルームメイトは、それは良かった。と言っただけだった。
次の日、編入生の薫は教室で机に向かっていた。
「このように、魔法を使うのは開発初期に比べて簡単になりました」
教師の一言一句を漏らさないようにノートに書き留める。
今日一日を使い、魔法の基礎を教師とのマンツーマンで学習していた。
「さて立花さん、問題です。魔法発動の条件は、自己エネルギーを【魔法具】に通して、変換させた結果が魔法となる事は理解出来たと思います。では、変換した魔法で使用できるアタック方法を答えてください」
「基本魔法、弾丸として射出。応用魔法、物体の創造です」
「正解です。どちらも派生が多くあるので、人によって個体差があります」
魔法の講義を終えて部屋に戻る。薫は愛美がまだ帰ってきていない事を確認してシャワーの準備を始める。各部屋にはシャワーが備え付けられているが、狭い事と湯船が無い事で、大抵の生徒は共同の大浴場を使用している。
だが当然、薫は大浴場は使えない。今は女性として生活していても、女子風呂に堂々と入って行く勇気は持ち合わせていなかった。愛美がいれば、必ず大浴場に行こうと誘いがあるので、何としても入浴のタイミングをずらす必要があった。
濡れた髪をタオルで拭きながらベッドに腰掛ける。
『勉強熱心なのは感心ですよ薫。この調子で頑張ってください』
「それより主人公だ。こっちはまだ見つけてないんだ、巻き込まれてないだろうな?」
『大丈夫ですよ。私が見ている限りでは、その兆候はありません』
「ただいまぁ。……どうしたの? 一人で難しい顔して」
「お帰りなさい。魔法って難しいんだなって思って」
帰って来た愛美に問われ、咄嗟につくろう。
「そっか、じゃあ私が家庭教師を引き受けよう。任せて、教えるのは得意だから」
「嬉しいけど大丈夫なんですか? 普段も忙しそうなのに、その上私の家庭教師なんて」
大丈夫だよ。とウィンクをして愛美はシャワーを浴びに出て行った。




