魔法学園のルームメイト
薫という名前は男女ともに該当するので、わざわざ偽名を考える必要は無いのが常だった。
そして、連れられた鋼宮魔法学園。事前に柳生が学園に連絡を取り、学園の理事にアポイントメントを取りつけていた。
「緊張する事は無いぞ。試験は無い、軽い面接だけだ」
その言葉の通り面接、というより面談のようなものだった。
鋼宮魔法学園に着き、理事長室の扉を開けると女性が待っていた。
「失礼します。彼女が先程連絡した少女です」
「立花薫です」
弥生と薫が頭を下げ、入室する。
「どうぞ、入って下さい」
ソファに促され座る。
「私は理事長の神木と言います。事情は承知していますが、もう一度お話願えますか?」
薫の口からもう一度事情を説明する。大人を、学校の理事をだませるかは賭けだ。しかし、緊張と恐怖でしどろもどろになっているフリで誤魔化す。幸い、弥生は姉御肌という事もあり、薫が言い淀んだ時はフォローを真剣にしてくれていた。
その事も影響してか、すんなりと話しは纏まった。
一、魔法を学び、学校への貢献を前提に何人からも保護を約束。
二、薫の両親から何かしらのコンタクトがあった場合、本人の意向を元に話を進める。
これだけの事を決め、あっさりと薫の入学が決まった。
「これからは、同じ学び舎で過ごす仲間だな」
そう言って薫の前に右手を差し出す。
それに答えて弥生の手を握り、握手を交わす。
「さて、この学校は全寮制だから君にも寮が与えられる。今からその部屋に案内しよう。ルームメイトには面倒見が良い者を選んでおいた」
学園の敷地内の寮。その一室に着くと、弥生はノックをする。
「柳生だ。新入生を連れて来たのだが、入っても良いか?」
「どうぞ」
と、女性の声が帰って来た。
「!?」
思わず硬直した薫に弥生が反応する。
「どうかしたか? 寮は基本的に二人一部屋だ。わからない事は彼女に聞くといい」
薫の額に冷や汗が滲む。彼は失念していた。寮と聞いた時に、我がままでも一人にして貰えば良かったのだ。今の自分は女性、ならばルームメイトが異性は有り得ない。
「ほら、同じ女同士なんだから緊張の必要もないだろう?」
言ってドアを開ける。中には眼鏡を掛けた大人しそうな少女がベッドに腰かけていた。
「仲谷、あとの事は頼んだぞ。何かあれば私の所に来い」
それだけ言って、弥生は去って行った。
「そんなところに立ってないで入って? 貴女の部屋でもあるんだから」
優しく話しかけるルームメイト。
薫は意を決して部屋の中に入る。
「私は仲谷愛美。宜しくね」
「立花薫です。宜しくお願いします」
愛美は笑いながら、
「そんなに畏まらないでよ。私の方が緊張しちゃう」
と、薫を和ませようとするが、当の本人は困惑を隠せない。
(流石に年頃の女性と、一つ屋根の下って状況はなぁ。でもどうやっても変更は出来ないし、どういう理由でも疑われたくは無い)
「ごめんなさい。こういうの慣れてなくて、あまり年の近い友達も多く無かったので」
それが薫の出した答えだった。こう言っておけば家庭の事情という事になるし、多少戸惑って、距離を取っても違和感なく受け入れてくれるだろう。
「そっか、なら私は少し部屋を出てようか。落ち着くまで一人で心の整理をすると良いよ」
「いえ、迷惑でなかったら私と話してもらえませんか?」
その申し出に愛美は快く頷き、話し相手を務めてくれた。




