魔法学園への入学
暫く歩いたところで立ち止まり、薫に向く。
「ああ言う輩は、はっきり言わねば付け上がるし、何処までも付いてくる。これに懲りて今後ははっきりと物を言う事だ」
そこまで言いきってから彼女は目を細める。
値踏みをするように薫を見るのだ。
「ウチの生徒か?」
もちろん薫が何処かの生徒という事は無い。薫は首を振り否定する。
「そうか、魔法はどの程度使える?」
始めて聞く【魔法】という単語に戸惑いながらも説明する。
「俺……私は魔法を使った事は無いんです。家庭の事情とか色々あって」
言葉使いも気を付け、口調も大人しく整える。
「そうか、ご家族は否定的なのか。それなら仕方ないな。惜しい事だよ」
「? 惜しいって何がですか?」
「気付いていないのか。私の見立てでは、君は優秀な魔法使いになれると思うんだが」
この人でなかったら、頭の残念な美人くらいにか思えないだろうが、どうにも違う。本当に魔法が存在していて、薫には才能があるらしかった。
『薫、この世界で魔法というのは重要なのでは? ひょっとしたら主人公も魔法が使えるかもしれないですし、この人かもしれないですよ』
その通りだ。何が重要なピースなのかわからない状況で、情報の取り逃しは痛い。この場で聞ける事は聞くしかない。
「私は魔法使いになれますか? どうやったら学べますか?」
薫の問に彼女は、
「それなら簡単だ。学園に来ればいい。君の御両親が了承してくれれば、すぐにでも入学できる。国政だから授業料も無いしな」
と、答えた。
「親は絶対に了承してくれません。でも、私も強くなりたい。貴女みたいに」
薫は迫真の演技で何とか手段を探る。可能なものがあれば、すぐに行動に移すつもりだ。所詮この世界に親はいないのだから、言いたい放題で言い包めるしかない
「そうだな、君に覚悟があるなら一つだけ手段がある。学園に保護を求める事だ。君が、学園が手放したくない人材なら君の両親からも守ってくれるだろう」
親の許可が無くても、才能があれば保護の対象となると言うのは渡りに船と言えた。
「私を学園に連れて行って下さい! もう今の環境から逃げ出したいんです。私が学園に居るとわかれば多分追っては来ません。……私に居場所を下さい」
薫の熱意に覚悟を感じたのか、彼女は頷く。
「わかった。学園に行こう。何かあっても私が責任を持って付きそう」
「ありがとうございます!」
薫はわざとらしい全力で頭を下げる。
「私は鋼宮魔法学園所属、柳生弥生だ。君の名前を聞いても良いかな」
「立花薫です」




