殺人鬼のいた街
部屋の中央で薫は化野に向く。
彼女はゆったりと、右手に持つナイフを隠す事もなく歩いてくる。
「やはり人は解体しにくいな。集中し過ぎて、さっきの奴をこの場で解体し 忘れてたみたいだ。もちろん今は生きていないよ」
元から名前すら覚えていないのか、それとももう忘れたのか、化野は団員を奴と呼んだ。
「最後はお前だ。大人しくしなくても良いぞ。痛いのは変わらないからな」
「ふざけんな。内臓が見たいなら自分の腹を掻っ捌け。噴き出す血が見たいなら自分の首を掻っ切れよ。所詮あんたの殺しは動物の食い残し以下なんだからよ!」
薫の発言に殺人鬼はキョトンとしたが次に爆笑する。
「ははは、私のは動物の残飯以下か。確かに私は見よう見まねだが、最近は腕が上がって来ていると思っていたんだがな。なら教えてくれ、薫の思う美しい殺人とは?」
『恐らく憧れの殺人鬼は、人に対してそれなりの敬意を持って殺していたはず。その人の性格や人生を汲んで、相応しい着飾り方をして殺していたから美しく見えたんです。化野のは模倣にもなっていない。ただの解体作業です』
薫以外には見聞きできないミルが答える。それを薫が化野に言った。
『恥ずかしい限りです。殺す事のなんたるかも知らないのに殺人鬼を気取るんですから』
これも化野に言う。
「随分と殺人に対する明確な自論があるんだな。感心するよ。でも、今のは薫の持論では無いんだろ?」
ミルの事は説明しても意味が無い。どう言って良いか困っていると、化野が笑う。
「まぁ良いさ。もう気にもならないだろう」
そう言ってナイフを自分の喉に当て、引く。
既に赤い床がさらに赤くなる。
「殺さ、れるのは、こん、な気持か。……奪う側、の方が、楽しかった、な。あぁ、そうか、私は、ただ、人を殺し、たかった、だ…け…」
死ぬ間際に、自分が殺人を犯す理由を理解して、バチャリと血だまりに沈んだ。
あっけない幕引き。主人公の化野は、自らの命を絶った。
『そう言えば、結局証拠ってなんだったんですかね?』
「さぁな、案外化野の嘘かも知れないぞ」
今の薫には必要のない、どうでも良い情報だ。軍警に確認する程でもない。
ミルも特段興味は無いのか、さっさと移動を始める。
薫が移動した後、そこにあったのは満足そうな殺人鬼の表情だった。
殺人鬼編は終了です。
次の話しは一応考えてあるので投稿は早いかも?




