殺人鬼の犯行
ライトの光に写ったのは、赤い血だまりとその中に転がる無数の塊。
身体から切り離された短い髪の頭部。切り開かれた胴。そこからはみ出る臓器。放り捨てられている四本の手足。
ライトの光をそれらから外し、吐き気を堪える。戦場にいた時も当然亡骸はあった。確かにそれも残酷で、やりきれないものはあった。だがこれは違う。自分の快楽の為に人間を刻んだのだ。それが吐き気を加速させた。
なんとか嘔吐を耐え、化野を呼ぶ。
「顔色、真っ青だぞ。外の空気を吸って来い」
化野に促されるままに外に出る。外壁に寄りかかり大きくため息をつく。
『あれはダメですね。センスがまるで無い』
ミルがつまらなそうにつぶやく。
「何言ってんだ。人殺しにセンスなんざねぇよ」
『本当の事ですよ。あれには付加価値が無い。殺人は禁忌ですけど、それを犯すならそれを凌駕する美的センスが必要なんです。死体を着飾る事もせず、手口も雑。唯一褒められるのは、刃物の扱い方のみですね。解体し慣れてる事だけです』
これだけでは頂けない。と首を左右に振る。
『動物が食い散らかしたのと大差ないですよ。動物の方がまだマシですけど』
コイツといても気が休まらないと判断して、薫は化野たちと合流する。
戻ると、簡易的な袋に亡骸を丁寧に入れていた。
「なんだ、もう帰って来たのか。まだ顔色が戻ってないぞ」
「いえ、大丈夫です。それより奴は?」
静に首を振る化野。
ある程度の片付けを終え、本部に帰る。軍警にも連絡を取り遺体の引き取りと、照会も任せる。今後は軍警の領分となり捜査が進むだろう。
「どうだ? 自警団が減った理由がわかっただろう?」
「ええ、嫌って言うほどわかりました」
未だに気分が優れない薫に対し、化野は言葉を選びながら話す。
「アレは人間の行いじゃない。だから、誰かが止めないとダメなんだよ。ツライのは誰でも同じさ。被害者には家族もいただろう。恋人もいただろう。それを躊躇なく壊す事に快感を覚えている者を捕まえて一刻も早く平和にしたい。それだけが今の私たちの唯一の支えなのさ」
自室に戻り、ソファに倒れ込む。
(主人公にコンタクトすら取れていないのはマズイ。出来れば殺人鬼側の仲間になれれば良かったか)
そう思うが、頭に先程の遺体が思い浮かび否定する。
(一歩間違えば俺がああなってたのか。巻き込まれて俺が死ぬ前に殺人鬼を始末しないと)
そう思ったところで意識が切れた。
次の日、朝から化野を始め数人が軍警の本部に出向いていた。聞いた限りでは昨夜の男性の身元と、初めて証拠になるかも知れないものが発見されたらしいとのことだった。
夜の見回りは、薫の当番では無いので本部で化野たちの帰りを待っていると、血だらけの化野が転がり入ってくる。




