殺人鬼を追うものたち
予想外な事を言われ、戸惑った表情を見せる化野。
「人数は多くて困る事は無いが、わかっているのか? 相手は殺人鬼だぞ」
「わかってます。自分自身も、そんなに正義感は強くないと思っていたんですけどね。」
「……そうか、だが、入団を認める代わりに一つ、質問に答えてもらおうか。お前は何故あそこにいた?」
殺人鬼がうろついている街、そうでなくても寂れた場所に来る十代など多くは無いし、実際に薫はこの世界では無い所から来ている。この場所に来る必要がなんなのか気にかかるのは当然と言えた。
「ええと、その、旅行というか新天地探しみたいなことを繰り返しているんですけど、金銭的に色々と厳しくて、雨風をしのげる場所を探してたんです」
苦しい言い訳かと思いきや、化野はそれなりの納得を見せていた。
「最近はどこも不安定だからな。故郷から逃げ出したくなる気持ちもわかるよ」
一息。
「良いだろう。正式に入団を認めよう。今夜から見回りにも入ってもらうぞ」
その日の夜、薫の研修も兼ねて化野と夜間の見回りに出た。
「いいか? これ以上の犠牲者は増やしたくない。なんでも良いから見逃すな。人の声、視線、何かを引きずったような跡、注意深く探せ」
「わかりました」
シンと静まっているビル群の間を縫うように歩く。薫たちの他に三組が見回りを行っていて、時折に化野は無線でのやり取りで互いの行動を報告しあっていた。
月が照らすだけの街を三十分掛けて周り、本部へ帰ろうかという頃、無線が入った。
「わかった。直ぐに向かう。薫、行くぞ」
それだけ言って走り出す化野を、薫は必死に追いかける。
走りついたのは、昨夜薫が寝ようとしていたビル。その入口には見回りをしていた別の団員がいた。
「状況は?」
「人影が出てくるのが見えたから追いかけたが見失った。すまん」
「辺りの捜索は任せてある。私たちは中を確認しに行くぞ」
手分けをしてビル内を捜索する。ライト一本で、薫は三階をくまなく調べ最後の部屋の扉を開けた。
「……っ!」
粘りつくような空気の重さと、不愉快を越えた匂いが押し寄せてきた。本能で確実に【有る】と確信しながら、腕で鼻を押さえながら奥へ進む。
部屋の一番奥にやはり有った。




