殺人鬼
今回は残酷描写を含みます。
苦手な人は気を付けてください。
「あぁ、楽しかった。しかし、至福の時はすぐに終わってしまう」
本気で残念な表情を見せ、足下を見る。
そこには塊があった。室内だが薄暗く、普通はそこに何があるかは見えないだろう。
だが、塊を作った本人は違う。それが何なのか知っているし見えているから。
薫が転送された先は街だった。文明もそれなり、服装も異世界の薫から見ても不思議なものではなかった。
昼間だが厚い雲で覆われている街を暫く歩いていると、正面のビルから五人程の人間が出てきた。
見るからに危険な雰囲気がある。しかし、いきなり進路を変えたりすれば怪しまれるか、絡まれる。なので目を合わせず、道を譲るように端によりやり過ごす。
そのまますれ違い、胸を撫で下ろしたが、同じビルからもう一人出てきた。
薫はその人物とバッチリと目があってしまった。
「おい、お前。こんなところで何してるんだ。この先は立ち入り禁止だぞ」
女性だった。二十代後半で、凛々しいと言う言葉が似合う容姿だった。
「そうなんですか? 昨日、この街に来たんです」
「そうか、私はこの街の自警団の隊長をやっている化野だ。この辺は危険だから早く立ち去れ。場所が無いならウチの本部へ来るか?」
薫は立ち去る事を選択する。
「そうか、もし困った事があったら私を頼れ。本部はここから四ブロック離れたビルだ。目立つからわかるはずだよ」
礼を言って足早にその場を後にする。
『さっきの人たち全員が自警団なんですかねぇ。それにしても薫は小物臭がしますねぇ。怖い人がいたら端っこで小さくなるタイプですか』
「なら今からケンカを吹っかけてくるか? どうなっても知らないけどな」
『チッ』
(舌打ちしやがったかコイツ)
見た目だけは可愛らしく整っているだけに余計にムカつく。
行くあてのない薫は先程の自警団に会わない様に気を付けながら歩く。
(なんで自警団なんだ。警察組織みたいなものは無いのか? それとも警察組織が追いつかないほどの犯罪が蔓延しているのか)
夜になり、寝床を探す。
歩き回ってわかったのは、このあたりはビジネス街だが働いている様子は無く、もぬけの殻だった。その一角、全体に埃が積もっている部屋を寝床にした。
埃が積もっていれば人の出入りは無いと判断できるためだ。
「こんな場所でも野宿よりはマシだよな」
埃を舞い上げない様に最低限の動きでソファに座り瞼を閉じる。
しんとした建物内に音が生まれる。コツ、コツと階段を上がる音が響いて薫は目を開く。
急いで物陰に隠れ息を殺す。
最悪な事に、段々と足音は薫近づいてくる。そして薫のいる部屋の前で音は止まった。




