異世界からの救世主と魔王
報告通りの場所には、五メートル程の、のっぺりとした黒い人影が暴れていた。
「あれが魔王か。上等だ!」
剣を抜き、斬りかかる。周りにいる兵士は、一対一で魔物と戦っているが、一つだけ敵を数人で囲んで戦う姿があった。
彼らは、今まで勝てないと言ってきた魔物をあっさりと倒し、次の獲物を囲む。それを繰り返していた。
「はぁ、はぁ、流石に強いな!」
片膝を付き、息を切らせながら相手を睨むカイト。
無言のまま、魔王は拳を振り下ろす。が、カイトは剣でいなし、斬りつける。
魔王の右腕は落ちるが、同時に剣の刀身も折れる。
「くそっ!!」
武器を失って戦えないカイトが吠える。
そこに一つの声が響く。
「我々なら出来る! 今こそその時だ!」
あの青年兵士だ。先程から何体もの敵を倒し、連携も取れているのが追い風になっていた。
魔王を囲み、翻弄し、剣をふるう。
カイトの剣に比べれば微力だが、確実に削いでいけている。
遠目で見ている薫とエメ姫。魔王のいる戦場に姫がいるのは危険だが、本人による決意を誰も否定できず戦場に連れてきた。そして戦力外の薫を見張り兼、盾として付けていた。
「エメ姫様、素人から見てもマズイですよ。カイトの剣が折れた今、一時撤退した方が良いんじゃないですか?」
勿論本心では無かった。恐らくカイトの性格では退かないし、エメ姫も解っているだろう。だから薫が仕掛けた。戦闘中に仕掛けられるプランを発動したのだ。
「私はカイト様を信じます」
エメ姫はそう言っているが、カイトが前線で無くなった今、負けは見え始めている。故にここで一つ案を出す。
「封印は出来ないんですか? もう一度魔王を封じて仕切り直すんです」
明らかに躊躇が見られた。
当然だろう。薫の調べでは封印にはあるものが必要になる。前回の封印は必要なものを省いた半端なものだった為に解けたのだ。
「封印は出来ません」
エメ姫は当然知っている。だからきっぱりと拒否する。だが、知っているのは薫も同じ事。エメ姫に感付かれない様に絡めていく。
「このままじゃ全滅じゃないですか! なんでダメなんですか? 何か準備が必要とか?」
「いえ、封印自体はすぐにでも行えます。しかし、必要なものがあるんです」
それは、
「救世主様、なんです!」




