異世界からの救世主が救う世界
「申し訳ないのですが、貴方が何者で、どういう経緯で此処に来たのか教えてくださいませんか? もしかしたら、お力になれるかもしれません」
薫は嘘をつかない様に、しかし本当の事ではない事を説明した。
「なるほど、突然光に包まれて、気が付いたらこの街に居たとおっしゃるんですね?」
『上手い事隠しますね。嘘ではないけど本当ではないギリギリのラインですよ』
ミルを完全に無視し薫は聞く。
「どうですか? 何とかならないですか?」
アベラール・エメ姫は静に首を振る。
「わかりません。 カオルさんが何故この世界に召喚されたのかも、誰が召喚したのかも」
薫は神妙な表情で、そうですか、と芝居を打つ。
「よろしけば、このまま此処に住まわれてはどうですか? もしかしたら元の世界に戻る方法が見つかるかもしれませんし、何より外では生活もできないでしょう?」
「それは助かりますが、良いんですか? 自分で言うのも何ですが、エメ姫様の信用に足る事は何も示せてはいないと思うんですが」
「悪人は自分の事を信用が足りないのでは、なんて気にしません。それに、異世界人のカオルさんのお知恵を貸していただけないかとも思っているんです」
此処までは薫の予想の範囲。通常なら言えない単語である《異世界》を使っても問題無いのは、主人公となる人物が《異世界》から《召喚》され《救世主》になる予定があるのだ。
故に救世主では無い薫でさえ、異世界人として救世主の手伝いをすれば城に住まわせてやると言えるのだ。
そこで部屋の奥にある扉が勢いよく開く。
「話しは聞いてたぜ! 生で見ると、確かにこの国の人間の雰囲気じゃねぇな。どっちかってぇと俺と同じような感じだ!」
そこには右手に刀の様なものを携えた少年がいた。年齢は薫と同じ位に見える。
それが豪快に叫んでいる。
「俺はカイトだ。ヨロシクな!」
「俺は薫って言うんだ」
「諸々な説明は私がしましょう。まず、カイト様は我が国を救って頂ける救世主様なんです。現在我が国では魔物が多く、街への侵入も激しくなっていて国民も襲われています。 兵士ではもう太刀打ちできず召喚でカイト様に来ていただきました。文献によれば魔物の王を倒せば全てが終わるらしいのです。しかし、私より八代前の党首と救世主様は封印がやっとだったらしいのです」
そこで一度息を整える。
「私は私の代で全てを終わらせます」
エメ姫は固い決意をみせ断言し、カイトはそれを見て満足そうにうなずいていた。
「因みに、八代前の党首様に召喚された救世主は俺の先祖らしい。これは末裔として責任を取んねぇとな!」
そこまで聞いた薫は、カイトが主人公で、割と鬱陶しい性格なのではないかと思っていた。




