忍びと侍女、城下町の祭りへ③
桜音のすぐそばに風が吹いた。
「がっ……!」
「ぐえっ」
左側の男が呻いて腕を離した。すぐに右側の男も同様に呻き声をあげた。誰かが助けに来てくれたのか。桜音は体を縮こませたままゆっくりと目を開けた。
目の前には、水がいた。水は左手を桜音の方へ回し、庇うように立っていた。水の息は少し上がっていて、首には汗が流れていた。
残りの男が一人、声を荒げた。
「てめえ!俺達の仲間に何しやがんだ!」
「狙いは私だろう、この方は関係ない」
「分かってるなら話は早いな。大人しく縄についてもらおうかねぇ!」
「逃げてください」
水は、桜音にだけ聞こえるように鋭く言う。その間に、先ほど水が倒した男2人は立ち上がって素手で構えていた。
「でっ、でも……」
「早く!」
水が叫んだのと、男たちが水に飛びつくのは同時だった。
水は身をかわす。一人目の拳は避けたが、二人目の拳は水の着物をかすめた。水は飛び上がると、両足を広げて二人の首を同時に打った。瞬時に着地し、最後の一人に回し蹴りをする。しかし、避けられてしまった。男は刀を抜いて水に攻撃を仕掛ける。水も躊躇わず、腰の後ろ側の帯に仕込んである脇差を抜いた。
何度か刃を打ち合い、水は一瞬でしゃがみ込み、相手の足を引っ掛けた。
「うおっ」
男はまんまと引っ掛かり、仰向けに倒れる。水は上から飛び乗って、首を殴ろうとしたが、今度は男が水を下に組み敷いた。
「水さま……!」
桜音は思わず名前を呼んだ。男は、桜音に構わず際に顔を近付けて嫌らしく笑う。
「へえ〜、こりゃ面白い、お前さん、女の忍びで異国人か。高く売れそうだが、大人しくしてくれないと殺すぞ」
そう言って、男は水の首を絞める。
「うっ……」
「もったいないねえ〜、殺すのは惜しいなあ」
水の苦しそうな呻き声が聞こえる。男は「へへへ」と笑っている。このままでは本当にまずい。桜音は、倒れている野盗の刀を鞘ごと腰から引き抜き、水を汲み敷いている男の背後にゆっくりと近寄った。
男は水に夢中で桜音には気付いていない。桜音は、思い切り腕を振りかぶった。その時、水と目が合った。躊躇わず、そのまま男の首を目掛けて鞘ごと思い切り振り下ろした。




