第六十七話:帰還と決戦
センシファウンデーションを離れワープアウトした俺たちの目の前に広がったネオメトロカニポリスは、巨大機械カニとはまた別の意味で衝撃的な見た目だった。
まず惑星だが球状ではなかった。平面に所狭しと輝く未来的なビルが立ち並んでいた。
「ああ、テッペイ、目的地はあの端っこの砂浜だから」
ユーマが平面惑星の端っこを指さす。
「そこに俺の家があるんだ」
ユーマは目を細め懐かしんでいた。いろいろな思いがあるのだろう。
「じゃあ先に送り届けるぞ。ヤドカリを殴りに行くのはその後の方が都合がいいだろう」
(まあ砂浜に行ったらマサルもいるだろうからどっちみち行くところは変わらんがな。別に不意打ちに行くわけじゃないから少しのんびりしてもいいだろう)
トオルが念話でそう語りかけて来た。
俺たちはツーバイフォークラブ改をとばし砂浜へと向かった。
そこは不思議なほど穏やかな浜辺だった。周囲の未来的ビルの威容とは完全に切り離された空間だった。
少しロストランドを思わせる密林が生い茂り、小高い人工的に盛った原始的な丘のようなものが存在していた。
海辺に着水すると、わらわらとコメツキガニ達が近づいてきていた。
その後ろにどう見ても前世で見たようなセーラー服を着た少女がのんびり歩いてきていた。
「トオルくん、おかえり。出かけてから随分帰ってこなかったね」
ポニーテールの少女は一見普通のようだが緋色の瞳をしており海鮮王トオルと知り合いのようだった。
(お、おうメグミちょっとな用事が完了したから帰って来たんだ、ああそれからユーマも帰って来たぞ)
トオルはどうにもこのメグミという少女に頭が上がらないようだった。
「土座衛門さんも!?宇宙の仕事っていって乗ってた船が壊されたから迷子になったって聞いてたけど、帰ってこれたんだ!」
ツーバイフォーからユーマが降りてくる。
「ただいまメグミちゃん。何年経ったかな?」
「3万年くらいかな?今までで戻ってくるの一番遅かったね」
「ああ、偶然この船の持ち主テッペイに拾われてね。ラッキーだったよ」
ユーマが説明するとメグミはこちらを見た。
「へえ、機械のカニさんかー……あれ?カニペディアが発動しない!?」
「ああ、メグミ彼は人間なんだカニになりたくてカニの外骨格を纏っているんだ」
「そうなんだ、カニさん達が好きなんだね!」
《テッペイもしかしてこの人がロストランドのカニ達が言ってた女神様じゃない?》
「ああ、なるほど。メグミとやら。クルストフィアのカニ達がもう一度だけでいいから会いたいって言ってたぞ」
俺はロストランドのカニ達に言われていた伝言を伝えた。
「クルストフィアに帰れるの?あそこは次元の穴が危険状態になったから移住するってことになって……」
「実際はGM社の陰謀だったんだよ。もうあそこはないけどね」
ユーマが手短に説明した。
「そうなんだ。でも私宇宙船とかもってないし帰りたくても帰れないかなぁ。マサルさんは何も言ってくれないし」
「そこはテッペイ達もマサルへの用が済んだら一旦は帰るんだろ?メグミをクルストフィアに連れてってくれないか?」
「それはお安い御用だ、あんたには世話になったしなワープとかで」
「ありがとう恩に着るよ。その時はまたワープ電池として俺を使ってくれ」
「さて、じゃあヤドカリに挨拶に行くか」
「え?え?みんなマサルさんに用があるの?」
(メグミ、ここからは男の戦いなんだ。余計な手出しは無用だぜ)
「メグミ、俺が障壁を貼ってるから浜辺にも街にも被害は出させないから大丈夫」
「はあ、3万年経ってもトオルくんはマサルさんと喧嘩するんだね……」
俺たちはトオルに従い浜辺を進む。すると見覚えのある虹色の丘が見えてきた。
(ハーハッハッハ!マサル!やはり今日も惰眠をむさぼってるようだな!)
(ん?その高笑いは……トオルくん!帰って来たんだね!)
ズボリと大地がせりあがりマサルはその威容を現した。
(帰って来たぞ!お前を一方的にボコるためにな!ではテッペイくん頼んだよ)
そういうとトオルはススッと下がっていった。
(え?トオルくんが相手になるんじゃないの)
「久しいなヤドカリ!俺のことは覚えているか!」
(君はクルストフィアであったカニ狂いの……)
「お前はヤドカリなのにカニの神を騙って訂正せずに宇宙へ逃げた俺はそのクレームにここまで来たのだ!」
(ええ!?どういうモチベーションなの!?いやそもあれは現地のカニ達が勝手に崇めていただけで……)
「問答無用!訂正しなかった自身の浅ましさを知れ!合体!」
俺が掛け声をかけるとツーバイフォークラブ改がエンリケ君と分離し全身の装甲になっていく。
エンリケ君ギガンティックを骨組に二足歩行の機神が誕生する。
最後に俺の外骨格が頭に変形して完成!
「巨蟹機神シザースキング!」
(え!?何それかっこいい!)
「そんな寝ぼけたことを言ってられるのもそこまでだ!次元力全開喰らえ俺とついでに本体を壊されてたエリシアの怒り!」
《私をついでにしないで!!》
俺はシザースキングを操りおもむろにマサルを殴った。
(どわー!なにをするんじゃ!なるほどそっちがその気なら喰らえ!プラズマパンチ!)
ヤドカリ神マサルの右手が光り輝きすさまじい殴打がシザースキングに叩きこまれる!
「次元バリア展開!耐えろ!みんな!」
ズガァァァン!
「ふ、宇宙海賊の一撃よりは重かったな」
メインバリア担当のゼノヴィアは涼しい顔をしていた。もちろんシザースキングは無傷だ。
(え?うそでしょ手加減したとはいえ無傷はないでしょ、どうなってるのトオル君!)
(敵にする説明はなし!大人しくバラバラにされるがいいマサル!)
「よし、レヴィア、ドラミナ対消滅エネルギーだ!」
「えっとよくわからないけどこのレバーを持てばいいんだっけ」
「握ったのじゃ!」
「くらえヤドカリこれがカニの怒りシザースインフィニティブレイクだ!」
両手のハサミが青と赤に光り輝きマサルの体に叩きこまれる。
ドゴォォォォォォン。
(ぐおおおおわあああああああ)
マサルの殻の一部と両手のハサミが消し飛んだ。
「よし止めだ!」
(ハイストップ!よくやった!この辺りで許してやってくれ)
「ん?消し飛ばさなくていいのか?」
(いや勝ちたかっただけで消し飛ばしたいわけじゃないから)
「そうかこのシザースキングの完成もあなたのお陰だしわかったここで矛は収めよう」
(た、助かった……でたらめに強いねそれ)
両ハサミと殻が半分捥げて情けない姿になったマサルは感心していた。
(そうだろうお前がサボっている間俺が3万年かけて作り上げたマシンだからな。まあ乗ってる奴らがでたらめに強かったせいで設計以上の性能になったみたいだが……)
「これに懲りたら二度とカニの神などと名乗らないことだな!」
(あ、はいこれからは他者にそう呼ばれても訂正します)
「それでいい、あースッキリした。クルストフィアに帰るか!」
《もう少し情緒とかそういうのはないの!?》
「これ以上に言うことはない!俺はこれまで通りの生活に戻るだけだ!」
《川縁でのんびりするの?》
「いや!あそこは信者が多すぎてもう定住できん!シャルロッテたちに顔を見せたら宇宙の運び屋になろうと思う」
《ふーん。まあ宇宙で運送屋やるなら私は必要よね》
「そうだな不本意だが」
「エリシアだけじゃないのじゃ!妾達もいるのじゃ!」
「故障を直せるのはわたしとシオンちゃんだし~」
「エンリケ君は私の所有財産だからね!」
「旅するとなればインフラを一手に担う我とレヴィアは必須だろう」
「あたしはクルストフィアで隠居した……くないです!ずっと運送屋します!」
レヴィアは隠居したそうだったがメルティとゼノヴィアの凄絶なスマイルで即時撤回した。
「よしじゃあ、帰るか」
こうして俺たちのヤドカリ神への物理的クレームは完全に達成されたのであった。
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