第六十五話:宇宙の迷子
惑星セレネイドでの滞在を切り上げる朝が来た。
「テッペイもう少しゆっくりしていくことはできないのじゃ?ほらズワイコースターとか乗りたかったのじゃ」
「自分で飛んだ方が早いのにコースターに乗って楽しめるのか?」
「それはその……気分はあがるのじゃ!」
「別に一生チャンスがないわけじゃないからいいだろう」
「え?また来るのじゃ?」
「仕事があればな」
「結局仕事のついでなのじゃ~。ブラックなのじゃ~」
「ここに居たいなら滞在しててもいいんだぞ?」
「置いてかれるのはもっと嫌じゃ~」
「というわけだ。出発するぞ」
「私は準備万端だよ!」
シオンはエンリケ君ギガンティックの仕上がりに満足しているのか元気だった。
「大きくなったエンリケ君用にツーバイフォー側のアタッチメントもいじっといたわよ~」
「仕事が早いな」
「天才メルティ様にかかればちょちょいのちょいよ~」
それぞれの準備は完了していたようなので俺はツーバイフォーの屋根に張り付き、他のメンバーは乗り込んだ。
「また雑用の日々か~」
レヴィアは溜息をついた。
「我は頼りにしているぞレヴィア。水は農業の要だからな!」
「ゼノヴィアさんは割とちゃんと評価してくれますよね……流石元魔王」
「レヴィア何をわけのわからないことを言ってるんだ?我は魅力的な魔族のお姉さんであって魔王とは一切関係がない。いいな?」
「ア、ハイ」
ゼノヴィアのいきなりの覇気にレヴィアは石ころのようにになってしまった。
《それじゃあ、メトロカニポリスに出発するわよ!》
エリシアの発進の掛け声で、俺たちはズワイタウンを出発し、惑星セレネイドの大気圏外に移動する。
《ワープドライブ起動!5星系分一気に飛ぶわよ!》
ワープドライブがうなりを上げ一気にワープ空間へと突入した。
「5星系分だから結構長そうだな」
《ワープと言っても一瞬じゃないのよね~》
ワープは順調に言っているそう思っていた時だった。
ブゥーン……。
突然通常空間にワープアウトした。
「ん?もう着いたのか?」
《違うわ!強制的にワープアウトさせられたのよ!ここの空間に異常があるわ!次元電池も2個分しか消費してないもの!》
「空間異常か……原因はわかるか?」
《うーん、何かに引っ張られてここに出たからテッペイ側に反応があるけど何か見える?モニター越しだとよくわからないみたい》
「うむ、人が漂ってるな」
《宇宙に人間が漂ってたらそれはタダの死体だと思うわよ》
「いやこっちを向いたぞ」
宇宙に漂流していた人型はこちらを見つめそしてものすごい速度で接近してきた。
「ああ!やっと船が通りかかった!今は銀河連邦歴何年だい?そもそもカニ銀河連邦は無事かな?時間の感覚が曖昧だからよくわからないんだ」
「いやまて、お前はなんだ、というか人間か?」
「俺かい?一応人間だったといえばいいかな?死なない呪いみたいなのにかかってるんだよ。まあ大したことじゃない。ああ名前を名乗らないとね俺はユーマ。魔剣士さ」
「……いやシグルド君魔剣士ってのは宇宙を漂えるのか?」
「生身では無理ではないでしょうか……骨なら話は別ですが」
「俺のことはともかく君たちは宇宙の航路がわかるんだろ?実は俺はここで置き去りにされて迷子になっててね、帰る手段をずっと待ってたんだ」
ユーマと名乗った男はあっけらかんに言った。
「そもそもどこに帰りたいかによるな。次元電池も限りがある」
「次元電池式がまだ動いてるってことはそんなに時間は流れてないのかな?まあワープのエネルギーに関しては心配しなくていいよ。俺が供給できるからね」
「よくわからんが俺たちを強制ワープアウトさせたのはお前ということでいいんだな」
「それは申し訳ないことをしたね、でもそうでもしないと無限に帰れそうになかったから」
「まあいい、原因が取り除かれれば俺たちも真っ直ぐネオメトロカニポリスに行けるからな」
「ネオメトロカニポリスに行くのかい?それはちょうどよかった俺もそこに帰りたいんだ」
奇妙にも宇宙に漂っていた男ユーマと俺たちの目的地は一緒だった。
「そうかならまあ、船に乗っていくといい」
「助かるよ!」
そういうとユーマは気密ハッチを開けて船内に入っていった。
「はー久しぶりに兜が脱げるね」
そう言うとユーマの頭を覆っていた兜が展開しサークレット状のものになった。
「宇宙服のヘルメットじゃないのじゃ?」
ドラミナはつい聞いてしまった。
「ああ、これは俺が剣と魔法の時代からずっと使ってる鎧だよ、ちょっと虹色の光が出るところがオシャレポイントかな」
《剣と魔法の時代!》
エリシアが強く反応した。
「君は……GM社の次元兵器端末か、また見ることになるとはね」
ユーマの目は冷たい輝きを宿していた。
《私の事を知っているの?》
「そうか、君は子機のGMメモリなんだね」
《勝手に納得してないで、教えて!》
「そうだね、知性を持ったカニと仲良く暮らすことがどうしてもできない人たちがいて、君はその人たちの理想を叶えるために作られた存在の末端ってとこかな」
《私を作った人たちはどうなったの?》
「俺が滅ぼしたよ、そのせいで宇宙の迷子になったけどね」
《どうして?》
「次元の穴をどうしても開こうとしたからさ。何回計画を潰しても再開するから、もう会社ごと消すしかなかった。次元の穴の制御は失敗すれば虚無がやってくるからね」
《……》
「だまって聞いていたがお前の言い草は、バカでかいヤドカリを思い出すな」
「船外にも聞こえてるんだね、バカでかいヤドカリってのはもしかして虹色の殻をつけてないかい?」
「そうだ、ヤドカリなのにカニの神を名乗っていた不届きものだ!俺たちはそいつに制裁するためにネオメトロカニポリスを目指している!」
「憤ってるのはテッペイだけなのじゃ」
「あたしたちはわりとどうでもいいんだよね……」
「でもあの殻は研究したいわよね~」
「あいつは俺と同じ超越者だからな……物理的制裁するなら大きさが足りないんじゃないかな」
「お前のことは気に入らないが一理あるな俺とヤドカリのサイズ差はいかんともしがたいところがある」
「あいつは割と敵対者に容赦ない所があるから、きちんと戦える形になった方がいいと思うよ」
「お前はヤドカリ側じゃないのか?」
「俺が興味あるのは世界が虚無に飲まれないでいることぐらいだからね」
「テッペイみたいな物言いなのじゃ!」
「俺はここまで達観というかあっさりはしてないぞ」
「長生きするとどうも、感情が死んでくるのかもしれないね」
すこしユーマは悲しそうな眼差しをしている気がした。
「我は結構元気だがなあ」
「ゼノヴィアさんはいっても数百歳でしょ?たぶんこのユーマさん万歳だよ流石に長生きの規模が違うんじゃない?」
「さて俺を助けてくれた人たちをプラズマパンチで粉々にするわけにはいかないし、SF社の本星に行こうか」
「そういわれても俺たちは場所を知らんぞ」
「GMメモリなら知ってるはずだよ不倶戴天の敵同士だったからね」
《私はGMメモリじゃありません!エリシアです!》
「自我がしっかりしてるなあ。まあとにかくエリシアなら航路がわかるはずさ。次元電池は俺を使ってくれれば消費しなくていいから」
こうして俺たちは胡散臭い宇宙迷子ユーマと一緒にSF社の本星へ向かうことになった。
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