第六十四話:ズワイタウンでバカンス
俺たちがズワイタウンに戻ると歓迎してくれたのはズワイガニ職員ではなかった。
「お疲れ様です。報酬の確認はされましたか?」
きっちりした身なりの職員の質問に俺は答える。
「今確認する。700万ヤッシ確かに受領した」
「それではズワイタウン遊び放題券の紹介に移りますね。まず私はズワイタウン一のホテル。五輝星でコンシェルジュをしているマツヴァと申します、皆様にはそちらで滞在していただくことになります。カニ職員からの説明にもあったと思いますが、飲食に関しては各自お支払いいただくことになっております」
「そういうことだったな」
「それ以外の施設、アトラクションやスパ、プールといったアクティビティは使い放題となっております。またホテルでの宿泊日数に制限はありません。チェックアウトなされると権利が喪失するようになっております」
「泊まり放題なのじゃ!」
「凄い!雑用しなくていい!」
「いい部屋に泊まりながらじっくりエンリケくんを改造できるね」
「飲食は有料だから使いすぎはダメよ~特にドラミナちゃん」
「わ、わかってるのじゃ」
ドラミナはメルティに機先を制されてションボリした。
「そうと決まれば、荷物を置いて早速浜辺再現プールとやらにゆくぞ!」
ゼノヴィアの掛け声で皆プールへと向かっていった。
《テッペイはいかないの?》
「人工の水辺に興味はない、俺は静かに佇めるところがあればいい」
「それでしたらホテル敷地内のVIP沢ゾーンが静かでお勧めですよ」
コンシェルジュのマツヴァが提案してくれる。
「じゃあ俺はそこに行くとするか」
「私とエンリケ君も一緒に行くよ」
「シオンはプールに行かなかったのか」
「私運動嫌いだもん」
「まあ死霊だしな。ところでマツヴァ、巨大なスケルトンが付いて行ってもそのVIP沢ゾーンは大丈夫なのか?」
「現在のVIPはテッペイさん一行しかいないので問題ありませんよ!大量のリヴァイアサンに比べれば巨大な骨格くらいむしろアトラクションのようでいいかもしれません」
ズワイタウンの職員というのは肝が据わってるらしい。こうしてマツヴァの案内で俺たちはVIP沢ゾーンで過ごすことになった。
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ところ変わってプール。ここは普通の惑星の浜辺と海のさざ波が再現されている施設で沢山の人で賑わっていた。
「ちょっと前まで困窮してたと思えないくらいの人だかりなのじゃ!」
「カニも沢山いるよ砂に半身埋まってテッペイさんみたいですね」
「ビーチパラソルを立てるわね~」
メルティはどこからともなくパラソルとベンチをだしてトロピカルジュースを飲んでいた。
「あ、もう飲み物を買ってるのじゃ!無駄遣いはダメなのじゃ!」
「別に一杯くらいなら安いわよ~ほら2000ヤッシだし」
「妾も飲むのじゃ!」
「あっちで売ってたわよ~」
「ゼノヴィアさん2000ヤッシは割高だと思いませんか?」
「観光地価格だろう、まあ我が農場とお前の成分調整水があれば無料で作れるがな!」
「南国フルーツも栽培してたんですか……」
「ロストランドで面白い実が沢山あったからな。むしろここで売ったら商売になるかもしれんな!」
「はぁ、ところで泳がないんですか?」
「泳いでいたらナンパに会わんだろう」
「会いたいんですか?」
「当然だ魅力的なお姉さんとしてはここはチャラい男が口説きに来たのを袖にするのがノルマだ」
「水着があまりにも際ど過ぎて露出狂の変態に見えるんじゃないですか?」
「なに!?それはどういうことだ!我の魅力的な肉体は白日の下にさらされてるほうが良いはずだ!」
「度が過ぎた堂々とした姿だと逆に魅力が下がるんですよ」
「なるほどな、威風堂々とした我の佇まいがいけないのか」
「そういうことです」
(へい!そこのダイナマイトなお姉さん!)
「む!来たか!」
脳内へ響く声に振り替えるとそこには一匹のカニがいた。
「カニ!?」
(おう、カニだぜ!あんた凄い覇気だな!俺と水泳勝負しないかい?)
「別に構わんが……」
「あ、泳ぎならあたしも参加します!」
(そっちの平たいお嬢さんには用はないんだがな……)
「いえ!あたしはめちゃくちゃ速いので!損はさせませんよ!」
(そこまでいうなら……まあ一人取り残されても知らんからな)
こうしてガザミ型のカニとゼノヴィア、レヴィアでの水泳勝負が始まった。
結果としては、レヴィアの圧勝だった。
「泳ぎながら水流を操るのはどうなんだ?」
「ゼノヴィアさんあたしの生まれ持った能力だからズルじゃありません!そういうゼノヴィアさんだってバリア貼って高速移動してましたよね?」
「それは我の能力の全力を尽くしただけでだな」
(あんたらまともじゃねえ……)
カニだけが途方に暮れる事となったのであった。
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「はー!楽しんだのじゃ!」
ドラミナはまた丸くなっていた。
「あんた食べてただけじゃない!」
「なんていうかシーフードが凄く豊富だったわね~リヴァイアサン焼きとかわたしたちが倒したやつかしら~?」
「意外と安上がりで助かったのじゃ!」
「それでも50万ヤッシは使ったわよ~?」
「そ、そう何日も滞在しないから大丈夫なのじゃ!」
「明日からは我が農業モジュールで腹を満たすのだな!」
「それは味気ないのじゃ~」
そうは言ってもドラミナは満足げであった。
「テッペイ達はなにしとるんじゃろうな?」
《テッペイ達はホテルのVIP沢ゾーンに居るわよ》
エリシアの案内でプール組もVIP沢ゾーンへと向かった。
「おー!なんかエンリケ君がデカくなってるじゃ!」
ドラミナたちがVIP沢ゾーンで最初に目にしたのが改造されて巨大化したエンリケ君だった。
「こないだまではツーバイフォー・クラブの先端にくっついてるみたいになってたけど、これなら引っ張ってた頃の比率に戻りそうね~」
「あ、メルティたち戻って来たんだね!どう!エンリケ君ギガンティックは!」
「前と略称被ってるのじゃ」
「だからGって略さずにギガンティックなんだよ!」
「でも腕とかは換装したとして、どうやって頭の骨まで大きくしたの?」
レヴィアのもっともな疑問だった。
「リヴァイアサンの大量の骨とエンリケ君の頭骨をミキシングビルドしたんだよ!」
「それはもうエンリケ君って言えるの?」
「魂も記憶も形もエンリケ君がでっかくなっただけなんだからエンリケ君だよ!」
そうシオンがはっきり言うとエンリケ君は巨大になった手でサムズアップしていた。
「しかしここまで大きくなると、一緒にベースボールはもうできませんね」
シグルド君は少し寂しそうであった。
「シグルド君たちも大きくできるよ?」
「いえシオン様我々は改造ノーセンキューですので……」
「そういえばテッペイはどこなのじゃ?」
「次元電池を5個買ってそこに埋まってるよ」
シオンが指さした川縁にコスモメタルの頭が少し出ていた。
「あ!浜辺でみたカニ達とおんなじだ!」
「テッペイはカニなのだなあ」
ゼノヴィアとレヴィアは妙に感心していた。
「次元電池五個も買ったのじゃ!?」
《もう一気にメトロカニポリスに行けるわよ!ていうか行く気よ!》
「寄り道もこれで終わりなのじゃなあ」
「まあテッペイの目的は宇宙旅行じゃなくてヤドカリ神に会いに行くことだからね~」
「違うぞメルティ」
いきなり土から出て来たテッペイが言う。
「俺の目的は最短でカニの神を名乗ったヤドカリを粛清しに行くことだ」
《結局会いに行くのは一緒でしょうに……》
「大きく違うぞ!今回のバカンスを受け入れたのも、既にヤドカリに会いに行く資源が溜まったからだ。福利厚生というやつだな」
「一日しかないのじゃが!?」
「十分丸くなってるではないか。ホテルで一晩ぐっすり休んだらすぐに出発だぞ」
「プールしか楽しんでないのじゃ~!!」
ドラミナの叫びがホテル五輝星に空しくこだました。
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