第六十一話:一匹くらい獲ってもいいよね?
次元電池の配送待ちの間オルドバイで滞在することになった俺たちだったが、砂漠の星のため特にやることがなかった。
「退屈なのじゃ~。砂しかないし乾燥するし碌な星じゃないのじゃ~」
ドラミナが不満を漏らす。
「レヴィアに水をかけてもらえばいいだろう。いい潤いになるぞ」
「そういう問題じゃないのじゃ!」
「ドラミナの気持ちもわかるよ、ここ新しい骨無さそうだし本当にやることないもん」
シオンがドラミナに追従する。
「わたしは割と楽しいわよ~ここの砂、変なスパイスが混ざってるのよね~。分析してみたら高揚効果があるのよ~。試してみる~?」
メルティは集めたオレンジ色の粉をドラミナに近づける。
「え?なんかヤバイ匂いがするのじゃ。でも美味しそうなのじゃ~」
「ドラミナ!メルティさんの実験台になっちゃうよ!」
レヴィアが粉に顔を近づけるドラミナを止める。
「そこまで警戒することないわよ~。さっきカニさんに聞いたらこれがこの星の特産スパイスなんですって~」
「じゃあ!舐めても大丈夫じゃ!」
そう言うとドラミナはメルティの持った粉を指につけて舐めた。
「おお!スパイシーなのじゃ!これは何かにつけて食べるべきなのじゃ!」
「オルドバイスパイスか……カニにつけたらいいんじゃないか?」
俺は前世の知識でスパイス焼きにされたカニを思い出して言った。
「いやそれはちょっと殺カニ事件になっちゃうと思いますよ」
《そうよ!自認カニなのに積極的にカニを食べようとしないで!》
レヴィアとエリシアのダブル突っ込みが入った。
「そうは言うがカニは割と共食いするぞ?脱皮して柔らかくなった個体とか」
「さっきまで仲良く話してた相手を食べようとは思えないのじゃ……」
ドラミナの意見にそれもそうかと俺は思いカニのスパイス焼きは却下することにした。
「そうだぞ!甲殻類を食べなくても我が宇宙でもすくすく育てた魔獣の肉を調理すればよいではないか!」
今まで黙っていたゼノヴィアは今がしゃべり時とばかりに会話に入ってくる。
「ああ、そういえば魔力畜産って何をしてるのか聞いてなかったが魔獣なのか」
「うむ、魔獣は少ない飼料でも魔力を与えれば成長も繁殖もするからな我にかかればドラミナの食事量でもカバーできるぞ!」
ゼノヴィアは自慢げに胸を張っていた。サロペットはきつそうだった。もっと大きいサイズを着ればいいのにな。
「じゃあ、とりあえずオルドバイスパイスを集めて料理するか?」
「空気中から集めると料理する量集めるのはちょっと大変だと思うわよ~」
「じゃあ特産品だし買えばいいか」
ザバーン。
その時だった広大な砂漠に巨大なスナホリガニが砂から出ては入っていった。
「カニだな」
「カニじゃな」
「カニね~」
《絶対よからぬことを考えてますよね!あれはオルドバイのスパイスを生産してるカニですからね!?》
「そうなのか?」
《先ほどデータベースにアクセスして得た情報なので間違いないです!》
「知性とかあるのか?」
《いえ、あれは知性カニではないらしいです。意思疎通はカニ同士だとできるらしいのですが》
「あいつ一匹でスパイスを生産しているのか?」
《この星には無数のオルドバイスナホリガニがいるみたいですけどダメですからね?》
「一匹くらい獲ってもいいだろう」
《絶対ダメです!惑星間問題になりますよ!》
「不慮の事故ということで何とかならないか?」
「妾達、水を届けたし、一匹くらいなら許されてもいいのじゃ」
《報酬貰ったでしょ!!》
「なんかすごく良さそうな骨格してたし、宇宙に行くためにもエンリケくんをもっと強化するべきだと思う」
《カニだから軟骨しか取れませんよ!!》
「ふう、急にキャビテーションの調子を確認したくなってきたな」
《ストップ!ストップー!》
パチン。
シュウウイイイイン。ドゴーン。
「動作に異常なし!砂漠だから撃っても被害がなくていいな!」
「大変じゃ!テッペイ!どうやら射線にデカいカニがいたのじゃ!」
「なんだと!だがそいつは細かい分類でいえばヤドカリだ!大丈夫だろう!」
(あんたらなにやってんだ!)
ヤシガニ職員がシャカシャカとやって来た。
「ああ、ヤッシーズの方ではないですか、事故でスナホリガニを一匹仕留めてしまいました」
(なんだとぉ!?まあめちゃくちゃ数がいるから一匹くらいならまあ、でも気を付けてくださいよ!この星の重要資源なんですからね!)
「おお、なんという寛大な処置!もちろん亡骸は無駄には致しませんので安心してください。それからスパイスを買いたいのですがいくらになりますか?」
(ああ、オルドバイスパイスは、100グラム300ヤッシだよ)
「では10キロほど買いたいのですが大丈夫ですか?」
(ああ、個人利用にしては多いけど問題ないよ)
俺たちは3万ヤッシを払い10キロのスパイスを手に入れた。
そんなやり取りをしている間にシオンとメルティ、レヴィアによるスナホリガニの解体作業が進んでいた。
「これだけ大きいと食べるところが多そうね~」
「本来なら揚げて食べるんだがな、身が取り出せるならそれに越したことはないな」
「この軟骨チューブでエンリケ君がさらに頑丈にパワフルになるよ!」
巨大な軟骨を引き出して、シオンは満足げだった。
「では、我がこんがりバーベキューにしてやるので身にスパイスをかけるのだ!」
いつの間にか巨大鉄板を設置していたゼノヴィアが調理の指示を出していた。
「これはどれ位かけるのがいいのでしょうか?」
調理サポートのシグルド君が俺に聞いてくる。
「いい感じに埋もれるくらいかけるのがいいと思うぞ!」
「スパイスで閉じ込める感じなのですね」
そうこうしていい感じに身が焼け周囲にスパイスのいい匂いが漂い始めた。
「すごくいい匂いなのじゃ!」
「あたしもこれは美味しそうな気がする!」
ドラミナとレヴィアは既にテンションが高かった。
「我の完璧な火加減で調理されたカニ焼きを食べるがいい!」
ゼノヴィアはどこからともなく取り出した皿にカニを盛りつけ皆に振舞った。
俺も一口食べる。
「むう、これが宇宙カニ焼きか……中々に美味いな」
「このスパイスを掛けたらなんでもうまいのじゃ~」
ドラミナは焼き野菜や焼き肉にもスパイスをかけて食べ始めていた。
(あんたらそんなにスパイスかけたら喉乾いちまうぞ。この星では水は貴重品ってわかってるだろ?)
先ほどから見ていたヤッシーズヤシガニ職員が忠告してくれる。
「大丈夫!あたしがバンバン飲み水出せるから!」
スパイスのせいか気が大きくなったレヴィアは本当にバンバン水を出していた。
(なんと、凄い能力!この星で働く気はないか!?)
「え?いやだよ!あたしはここでの労働でも大変だと思ってるのに!」
(そこをなんとか毎月100万ヤッシでどうだ?)
「お金なんてこんな砂漠の星じゃ使い道ないじゃない!」
「そうだぞヤシガニ職員。レヴィアはうちの重要な備品だ渡すわけにはいかん」
《そこは仲間とかいうとこでしょ!!》
「もっとここが緑豊かな星だったら考えたかもね……あ、いえなんでもないです。ずっと備品がいいです」
レヴィアは本音が漏れかけたがニコニコ顔のメルティと目が合った瞬間訂正した。
そんなこんなで俺たちは盛大にバーベキューをしたのち、ヤシガニ職員たちの目を盗んで何匹かオルドバイスナホリガニを捕獲して育成することにした。
うまく増やせればスパイス焼きを今後も食べ続けることができるだろう。
こうやって俺たちのオルドバイでの滞在時間は過ぎていった。
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