第六十話:宇宙で水って貴重なんだなあ
(はいよ、三人目グログーの引き渡し完了だぜ、端末にもうヤッシは振り込んでおいたからな)
俺たちはコロニーに戻り報酬をNDCから受け取っていた。
「ところで宇宙海賊の船を無傷で拿捕したのだが素材とか貰ってもいいのか?」
(ああ、問題ない、いらない部品は造船局に引き渡せばいいヤッシになると思うぞ)
「そうか、ありがとう」
(こちらこそ助かったぜ!宇宙海賊をわざわざNDC直々に討伐しないからな。あんたらのような腕のいい賞金稼ぎはどの星系でも稼げると思うぜ!)
「宇宙であったNDCのカニと違ってこっちのカニはイヤミったらしくないのじゃ」
「まあ受付仕事だから愛想のいいカニが務めてるんだろう」
俺たちはNDC駐在所を出て造船局にやってきていた。
「メルティ。メテオライト109はどうだ?」
「うーん。確かに凄い素材だと思うけど、次元力が全然通らないからコスモメタルより弱いわね~」
「そういうものなのか」
「どうにも造船局の機械とかで調べてみたんだけど、次元力、まあわたしたちだと魔力の使い方が退化してるみたいなのよ~」
「じゃあギャラクニウム77も大したことないのか」
「実際の素材を見てみないことには何とも言えないけど可能性は高いわね~」
(いや~あんたらコスモメタルなんてどこでこんなに手に入れてきたんだい?)
俺たちが話しているとダンジネスクラブにしか見えないカニが話しかけてきた。
「ん?ああ俺たちの星の造船局ではこれがメインの素材なんだ」
(おいおいまだコスモメタルプラントが生きてるなんてどんな僻地だよ。でもあんたらのような次元力の暴力みたいな連中には最高の素材だぜ)
「ギャラクニウム77よりもか?」
(実質無限と超頑丈なだけの素材だったら、議論にもならないだろう?)
「なるほど俺たちはコスモメタルが向いてたということか」
(昔はそれが当たり前だったんだけど、今の連中は軒並み次元力が無いからな。おかげで次元電池も高騰してやがる)
「ああ、それで100万ヤッシもするのか」
(いまや次元電池はネオメトロカニポリスの独占生産品だからなこんな辺境じゃ数も少なくて大変なんだよ)
「ところで凄まじくデカい虹色の殻を被ったヤドカリを知らないか?」
(ヤドカリ神様かい?そういえばとんと噂を聞かないが、住まいはネオメトロカニポリスのはずだよ)
「ほう……100万の次元電池で向かえるのか?」
(いや全然足りないよ。ここから8星系も離れてるんだよ!ヤッシがあってもこのコロニーじゃ次元電池自体が足りないよ)
「そうなのか、じゃあ次の星系でも次元電池を手に入れないといけないのか」
(そこの、メカカニ人間!今次元電池を買ったとか言ってないか?)
突如ヤシガニが話に割り込んできた。
「突然なんだ?」
(ああ、すまない実は隣のオルドバイ星に水を届けてほしいんだ)
「そのオルドバイでは次元電池が豊富なのか?」
(宇宙中で使われてるオルドバイスパイスの生産地だから沢山手に入れられると思うよ!)
「それでどれくらいの報酬でどれだけの量を運べばいいんだ?」
(5000万ガロンを300万ヤッシで頼む!)
「ガロン……少しよく量がわからないんだが」
(あそこにある貯蔵タンクを引っ張ってってくれればいいから)
ハサミで指し示された先には巨大な丸型タンクが5個連なって置いてあった。
「メルティ。ツーバイフォーで引っ張れるのかアレ」
「そうね20万トンくらいの重さかしら~。星の中でも今のツーバイファー・クラブなら楽勝よ~」
《なんでこの毒妖精はツーバイフォーといい星が一杯の国旗の国の単位がわかるのよ!》
「正直ゼノヴィアの農業モジュールのが圧倒的に重いわよ~」
「我のモジュールは空間を捻じ曲げてあるからな。見た目よりはるかに重いのだ!ハハハ!」
《凄いけど。誇るとこじゃないと思うわ!》
(とにかく、荷渡しの連絡が来たらすぐ振り込むから!急いで届けてくれ!)
「いいだろう。しっかり届けてやるその代わり支払いが滞った時は宇宙の果てまで追い回すからな」
《流石に宇宙の果てに逃げられたら次元電池が足らないんじゃ……》
「そういう気概ということだ」
(こっちもヤッシーズの看板背負ってるから、支払いを踏み倒すなんてことはしないよ!じゃあよろしく頼んだよ!)
こうしてよくわからないうちに水配送の仕事を引き受けることになった。
ガシャン!
ツーバイフォー・クラブに水タンクを連結する。
結局船のパーツは計60万ヤッシになったので俺たちの次元電池代を差し引いた手持ちは120万ヤッシになった。
いまだに宇宙ではどれくらいの資金があればいいのかわからないので多いに越したことはないだろう。
「メルティ。次元電池は搭載できたか?」
「3万年経っても基本規格は変わらないみたいだからちょちょいと積み込めたわよ~」
「しかしだな、ゼノヴィアの次元力が凄いならそれをワープに使えないのか?」
「農業畜産モジュールとバリアをオフにすれば1星系は行けるかもしれないけどゼノヴィアちゃんが了承しないと思うわよ~」
「インフラが止まるのは困るな。ゼノヴィアレベルでも一星系しかいけないのか」
「使いきりじゃないってこととこの次元電池に圧縮されてる次元力のことを考えるとおかしいレベルではあるわよ~」
「俺はどうなんだ?」
「テッペイじゃゼノヴィアちゃんの半分もないわね~」
「やはりいちいち次元電池を手に入れなければいけないか」
「そんなに急ぐことでもないし観光気分でいこうよ。いい骨が見つかるかもしれないし」
「そうじゃぞ!スパイスの星とか絶対美味しいものが食べれるのじゃ!ちゃんと寄るのじゃ!」
「我の魔力農業に加える新しい作物も手に入るかもしれないしな!」
「それじゃあ出発するわよ~」
「頼む」
俺たちはヤッシーズ01コロニーから出発し初めてのワープドライブを敢行した。
「おお、なんだか世界がうにょうにょしているな」
「造船局で注意書きを読んだけど普通は宇宙服を着ててもワープ時は船外に出ないそうよ~」
「ヤドカリはこれ以上の速さで移動しているだろうからな俺が耐えられない道理はない」
《どうしてそこまでヤドカリと張り合うのかしら……あ、そろそろワープアウトするわよ!》
ギュイーーーン。
目の前には茶色というか砂色の星が見えていた。
「これはまたサンドランドを思い出すような星っぽいな」
「碌なものが食べられなさそうなのじゃ……」
「また骨なしワームだったら萎えるなあ」
「サボテンは我の農場にはないからいいかもしれんな」
俺たちは口々にオルドバイの印象を勝手に言いながら着陸地点へと向かった。
シュゴゴゴゴゴ。
(おお!よく来たな!水を届けに来てくれたんだろ?)
俺たちが着陸するとまたもヤシガニが素早く寄って来た。ヤッシーズの社員はもしやほとんどヤドカリなのだろうか?
「ああ、5000万ガロンだ確認してくれ」
(おーいみんな!水が来たぞ確認だ!)
ヤシガニが声を掛けるとヤシガニ以外のカニや人間がそろってタンクを検品し始めた。
(確かに5000万ガロン受け取ったぜ!ふうこれでなんとか1か月また過ごせるぞ)
「それはよかったな。それで支払いの方なんだが」
(ああ、もうヤッシ端末に振り込んであるぜ!)
「300万ヤッシ確かに。いい取引だった。ところで次の星系に行くにはどれくらいの次元電池がいる?」
(次の星系は俺たちがいつも水を仕入れてる海洋惑星セレネイドがあるんだがここ1か月ピタリと連絡がないんだよな。不穏だから行かないほうがいいと思うぜ)
「ふむ……まあ危険はとくに恐れていないからな。次元電池を売ってくれないか?」
(ああいいぜ!と言いたいところだが今月の次元電池の配送は明後日なんだ、ちょうどいろんなところから水を仕入れるのに船を出したから無くってな済まないね)
「そういうことなら仕方ないな。この星で2日間滞在するとするか」
俺たちは砂の星で足止めを喰らうことになるのだった。
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