第五十九話:次元電池は高かった
シュイーン。
「ヤッシーズBANKへようこそ!本日はどのような御用でしょうか?」
俺たちが銀行に入ると溌溂とした声の行員が声を掛けてきた。
「両替を行えるか聞きたいのだが」
「両替ですねあちらの窓口へどうぞ!」
紹介された窓口に行くとそこには巨大なヤシガニにしか見えないヤドカリが居た。
(いらっしゃい!どこの通貨を両替するんだい?)
「ええっとこれなんだがゴルドと言って俺たちの星では基本通貨だったんだが」
(ああ、硬貨制度なのね、うーん金属としての価値しかないなあ。この金貨が1万ヤッシ、銀貨が100ヤッシ、銅貨は10ヤッシね)
「割といいレートだな。とりあえず金貨25枚を換金しよう」
(君たちヤッシ端末持ってる?ないなら発行手数料で5万ヤッシもらうよ)
「ああ、宇宙に出てきたばかりだからそういうにはもってないよろしく頼む」
(はい。じゃあ、これ20万ヤッシが入ったヤッシ端末ね。他の経済圏でも使いまわしがきくから今後は紛失しない限りどこでもそれを提示してね)
ヤシガニはその後ついハサミで器用に端末を差し出した。
「ところで次元電池を買いたいのだが何ヤッシかわかるか?」
(お客さん星間運送業かなにかかい?ここから次の星系に行くなら100万ヤッシの次元電池がいるよ)
「全然足りんな……今の手持ちのゴルドを全部両替しても足らん。何かよそ者でもつける稼げる仕事はないか?」
(普通の仕事ならヤッシーズワークで探せばいいけど次元電池稼ぐとなると危険な仕事しかないとおもうよ)
「具体的にはどんな仕事だ?」
(宇宙海賊退治とかなんだけど宇宙に出てきたばかりの人に勧められる仕事じゃないねえ)
「いや、良いことを聞いたその宇宙海賊はギャラクニウム77製の船を使ってたりするのか?」
(え!?ギャラクニウム77なんか使ってる宇宙海賊がいたら大騒動だよ。大体宇宙海賊はメテオライト109だと思うよ)
「それはどれくらいの差なんだ?」
(どれくらいって、メガロパ幼生と大人のカニくらいの差だよ)
「なるほど」
「妾達にはよくわからない例えなのじゃが……」
「一般人とドラミナくらいの差だ」
「なるほどなのじゃ」
(それで、君たちは宇宙海賊退治を引き受けに行くのかい?それじゃあNDC駐在所に行くといいよ)
「そうか、両替をしに来ただけなのに世話になったな」
(いえ、ヤッシーズBANKのモットーはお客様を大切にですから!資産運用等なさるようでしたら是非今後も当行を選んでいただけると幸いです)
こうして俺たちは当面の軍資金を両替で手に入れて係留費をねん出することには成功した。
ドラミナにはヤッシーズドリンクを買い与えてやった。
NDC駐在所は周囲のヤッシーズネオンにも負けないくらい華美な建物だった。
「趣味が悪いわね~」
「メルティさんヤッシーズネオンには見やすくていいと言っていたのに……ヒッ!」
レヴィアのぼそりとした突っ込みにメルティはにこりと笑って黙らせていた。
「済まない、ここで宇宙海賊討伐を引き受けられると聞いたのだが?」
(うん?賞金稼ぎの方?そこの端末で引き受けられるよ)
そういわれて俺は傍らの端末を操作した。タッチパネルになっていてわかりやすい。
・宇宙海賊ジャンゴ30万ヤッシ。
・宇宙海賊ボバ50万ヤッシ。
・宇宙海賊グログー80万ヤッシ。
今はこの3件が受けられるようだ。今の俺たちに必要なヤッシは100万なので全部引き受けることにした。
(あ、賞金は早い者勝ちだから、急いだほうがいいよ)
NDCの職員ガニが気だるげに忠告してくれた。
端末から賞金首の最終目的地座標チップを受け取り俺たちは船へと戻ることにした。
「テッペイ。ヤッシーズジュースまずいのじゃ!」
船に戻るとドラミナが文句を言って来た。
俺はドラミナに差し出された缶の匂いを嗅ぐと、確かに物凄くケミカルな香りがした。
いままでナチュラルな素材の物しか食べてこなかったドラミナには不評なのもわかるが俺は少し懐かしさを感じた。
「まあ、まずいなら今後は買わなくていいからいいだろう。さあ海賊退治に行くぞ」
「わかったのじゃ!」
「うふふ、メテオライト109どんな素材なのかしらね~」
「宇宙海賊の骨は立派かなあ?」
「証拠は引き渡さないといけないだろうから骨にするのはなしだぞ」
「ええ?つまんない~」
シオンは不貞腐れた様子で通信を切った。
俺たちはヤッシーズ01コロニーを出発し、宇宙海賊ジャンゴが目撃された宙域を目指した。
「エリシアにチップを読み込ませるだけで向かえるから楽だな」
《フフフ!私の性能は3万年経っても最新鋭なのよ!》
「GMメモリはロストテクノロジーなのかもな」
《勝手に滅びた技術にしないで!》
しばらくすると目的宙域に着く。しかし周囲には何もなく宇宙海賊の気配もしな……。
ザリザリ、ザリザリ。
「そこの骨董船とまりな!積み荷と金品を寄こすなら命は助けてやる!」
あっちから通信がやって来た。
「お前は宇宙海賊ジャンゴか?」
「ああそうだ!泣く子も黙るジャンゴ様とは俺の事だ!さあとっとと金目の物を転送しな!」
「悪いがこちらはそんな転送システムが付いてなくてな、こちらに乗り込んできてくれないか?」
「そんな古典的な手に引っかかるかよ!じゃあお前をバラバラにして残骸を回収させてもらうぜ!」
ブツッ。通信は切れてしまった。
「嘘は言ってなかったんだがな、仕方がない、エンリケ君で相手の船を拿捕するとしようシオン、エンリケ君に指示を頼むぞ」
「はいはーい早く終わらせてね」
シオンのやる気は無くなったままだった。
そんなやり取りをしているうちにジャンゴの宇宙船が視界に入ってくる。容赦のない光弾がツーバイフォーに撃ち込まれた。
バシィーン!光弾は直接着弾することなくバリアに阻まれたようだった。
「宇宙戦闘を想定した次元バリアよ~」
メルティが自慢げに言って来た。
「どれくらい耐えられるんだ?」
「ゼノヴィアちゃんどんな感じ~?」
「ふむ、埃が肩に乗った程度の損害だな」
「このくらいなら無限に耐えられそうよ~」
どうやらこのバリア。ゼノヴィアがメイン動力らしい……。宇宙魔王なのか?
とりあえず効かないなら一気に詰めていこう。
ツーバイフォー・クラブが急加速し宇宙海賊の船に肉薄する。そしてエンリケ君GDの巨大な腕で相手の宇宙船をがっちりと固定する。
ザリザリ。
「何をしやがる!放しやがれ!」
「放すわけないだろう今からお前をNDCに突き出して賞金を貰わないといけないからな」
「ぐっ!なんてめちゃくちゃな賞金稼ぎだ……骨のマニピュレーターとか聞いてねえぞ!」
「今からそっちに乗り込むから大人しくハッチを開けろ。まあ開けなくても引っぺがすが」
「くそ!カニの化け物が!」
相手の船のハッチが開くとともに俺に銃撃が飛んできた。
コスモメタルの装甲には傷1つ付かなかった。
「物騒なものは放してもらわないとな」
俺はジャンゴを大きい方のハサミで摘まみ、小さい方のハサミで銃を宇宙に放り投げた。
「くそ!こんな奇天烈なカニに捕まるなんて……」
「ふ、カニに敵わないのは当たり前のことだ」
《テッペイは人間ですけどね!》
エリシアは無視して俺はジャンゴを船内のハッチに入れた。
「うーん……これなら骨にできなくても惜しくないか……」
「普通の人なのじゃ?」
「ちょっと骨密度低いよね。宇宙人は虚弱なのかも」
「外はカニの化け物中はコスプレ集団とかどうなってるんだこいつら……」
「はい、寝ててね~」
メルティは宇宙服の上から容赦なく針をぶっ刺して睡眠毒を注入していた。
俺たちはこう言ったやりとりを後2回繰り返して、160万ヤッシ稼ぐことに成功した。
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