第五十八話:宇宙は栄えていた
俺の知識では、惑星を脱出する時は大変というイメージだったが、本当にあっという間に出られてしまった。
周囲見渡すとさっきまでいた惑星クルストフィアの青く美しい姿が背後に、そして隣に何か人工衛星みたいなものの残骸が見えた。
《あれ私の本体ですよ!》
「なぜ、エリシアの声が耳に響くんだ?」
ここは宇宙である。頭に直接話しかける能力を失ったのになぜまたこのうるさいフロッピーの声が聞こえるのか。
「スペーステッペイに通信機が付いてるのよ~」
俺の疑問に答えたのはメルティだった。
「テッペイはどうせ中に乗り込まないと思って、何時でも会話できるようにしておいたのよ~。」
「なるほど。確かに報告、連絡、相談は大切だからな」
「それよりテッペイ見たのじゃ?妾達が住んでた土地は丸かったのじゃ!」
「ん?ドラミナか、そうかお前たちは宇宙の概念がまだ定まってないから星が丸いことを知らなかったのか」
「なんで丸いのに落っこちないのか不思議なのじゃ~」
「お前も丸いのに浮遊してるから違和感を抱くところではないだろう」
「それもそうなのじゃ!」
「それで、エリシア、目的地にはきちんと向かってるんだな?」
《当然よ!ばっちり自動航行にしてあるわ!》
「どれくらい遠いのかわからんが、それまでは星の海の静けさを満喫するとしよう」
そんな俺の気持ちは、すぐに打ち砕かれた。
しばらく航行すると、様々なカニ型宇宙船、通常の宇宙船が飛び交っていた。
そして俺の目に飛び込んできたのはでかでかとSFやヤッシーズと書かれたネオン看板が光るコロニーの外壁だった。
「なんだこの雰囲気ぶち壊しのコロニーは」
《ここが目的地のヤッシーズ01コロニーよ!》
「ヤッシーズってのはなんなんだ?」
《私に聞かないでよ!多分会社の名前じゃない?》
「寂れてるはずでは?」
《うーん。この交通量が宇宙では寂れてる判定なんだと思うわ!》
そんな会話をしていると2隻の青いカニ型宇宙船が近づいてきた。
(あーそこの旧式宇宙船。コロニーへの入場希望かね?)
「む?俺の事か?そうだコロニーに入りたい」
(滞在目的は?)
「次元電池が欲しい」
(次元電池ねえ、そんな古風な素材でできた宇宙船でワープするのかい?)
「あー俺たちはすぐそこの星から出てきたばかりで宇宙のことはよくわかってなくてな」
(ああ!、3万年ぶりにでてきたクルストフィアから来たのか!てっきり文明は滅んでるかと思ってたけど宇宙進出できる能力が残ってたんだねえ)
「それで入っていいのか?」
(ん?ああ全然構わないよ、今はギャラクニウム77が基本素材だから君たちが暴れたところで傷1つ付かないだろうしね。ハハハ!)
「そうか、では入港させてもらう」
(万が一暴れてもこのコロニーは我々NDCナイトディフェンダーズコーポが控えてるから直ぐ鎮圧されるよ!まあ大人しく観光したら星に帰った方がいいよ!ハハハ!)
俺たちはNDCの船と別れヤッシーズ01コロニーへと入港した。
(オーライ!オーライ)
港湾管理の宇宙服を着たカニ達がサインライトを振って誘導してくれる。
(はい、ここで止まってね~。宇宙船の係留は一日2000ヤッシだから忘れず払うんだよ~払えないと宇宙に捨てられちゃうからね~)
「了解した。ところで俺たちはそのヤッシという通貨を持っていないのだが……」
(ん?他の経済圏から来た人?じゃあ港を出て直ぐのところに銀行があるから両替してもらうといいよ。とにかく払い忘れないようにね~)
プシュー。
ツーバイフォー・クラブのハッチが開いて仲間たちが降りてきた……がなぜか全員不機嫌だった。
「すっごく、すっごくむかつくのじゃ!!」
「そうよ何が傷1つつけられないよ~絶対ぶっ壊してやるわ~」
「エンリケ君の凄さをあの青カニやろうに絶対教えてやる!」
どうやら先ほどのNDCとのやり取りに憤慨しているようだった。
「腹が立つのはわかるが、俺たちが星から出てきたばかりの田舎者なのは事実だ、ここで技術を習得して直ぐに見返してやればいい」
《なに、常識人ぶってるんですか!ここはキャビテーションを撃つところでしょ!》
「俺の目的は次元電池を手に入れることであってコロニーの破壊ではないからな……とりあえず銀行に向かうぞ」
「ツーバイフォー・クラブの警備にスケルトン達は置いていくね」
《危ないことがあったらすぐに通信機で呼ぶからね!その時はすぐ戻ってくるのよ!》
「俺たちはどうも骨董品扱いみたいだから、狙われることもないと思うがな」
「物好きもいるかもしれんから我は油断すべきでないと思うがな」
確かに古すぎて逆に価値があるとかあるかもしれないなと俺はゼノヴィアの指摘で思い直した。
「ヤッシーズ~♪」
俺たちが港を歩いていると陽気な音声が聞こえてきた。
振り返ると前世ではお馴染みの自動販売機のようなものが立っていた。
「これはなんじゃ?」
「自動販売機だな。おそらく飲み物や食べ物を販売してると思うのだが……」
「ほう!宇宙の食べ物気になるのじゃ!」
ドラミナは興味津々だった。
どれどれと俺もラインナップを見ると、ヤッシーズドリンク130ヤッシと書かれている。
「ドラミナ今俺たちはここで使える通貨を持ってないから買うことはできん。のどが乾いたらレヴィアに水を貰え」
「ううむ……両替したら一番に買うのじゃ!」
「ドラミナちゃん無駄遣いはダメよ~」
「え、いやメルティこれは宇宙での食べ物調査だから無駄じゃないのじゃ」
「しばらくは自給自足で我慢しようよ」
「そうだぞ!我の完璧なエコ農業畜産システムがあるからな!」
レヴィアとゼノヴィアのインフラコンビがドラミナを諭す。
「確かに食費に予算を割く必要は俺たちにはないな。調味料くらいか」
「それもたくさん積んであるから暫くは困らないわよ~」
「ゴルドが両替できるかどうかもわからないからな、慎重に行くぞ」
「宇宙の食文化気になるのじゃ~」
「余裕があったらな」
「やったのじゃ!」
港から出るとそこは非常にごみごみしていた。
いたるところにヤッシーズ○○という商品名か店名かわからないネオン看板が光っており、そこをカニや人が沢山往来していた。
「割と栄えてるのじゃ」
「昔はもっと居たんだろうな」
そんなことを言いあいながら周囲を見渡すとでかでかとヤッシーズBANKという看板を見つけた。
「なんにでもヤッシーズってついているんだな」
「メトロカニポリスの時も思ったけど、宇宙の人たちは目立ちたがり屋なのかな」
「シオンちゃん。わたしはわかりやすくていいと思うわよ~」
「確かに迷いはしなさそうだよね。待ち合わせとかも楽そう」
「よう!あんたたち!アニメのコスプレ集団かい?」
チャラそうな男が話しかけてくる。
「アニメ?コスプレ?何のことじゃ?」
「あー、丸いお姉さんには用はないんだわ」
「なんじゃと!」
ササっと俺はドラミナの前にでる。おそらく目の前のチャラ男はドラミナが手を出したら死ぬ。
そんなことになったら俺たちは宇宙のお尋ね者になってしまう。ヤドカリをぶん殴るまでは平和に行きたいからな。
「テッペイなんで邪魔をするのじゃ!」
「お前が殴ろうとしているのを察したからだ」
「宇宙は腹が立つのじゃ~!」
「うーん、宇宙の人はどんな骨かなと思ったけど、全然普通以下だね……」
「そうね~。見るからに毒にも耐えられなさそうよね」
メルティとシオンは猛烈に冷たい目線をチャラ男に送っていた。
「へっなんだよわざわざ声を掛けてやったのに、変なことをぶつぶつ言いやがって!」
「そこな男よ。なぜ、メルティとシオンに声を掛けて魅力的な我には目を向けなかったのだ?」
「え、いやそのお姉さんは迫力がありすぎるというかなんというか」
「軟弱なやつだ!そうそうに去るがいい!」
「ひっ!なんなんだよまったく!」
チャラ男はすごすごと去っていった。
宇宙の洗礼がナンパとはどこも文明が進むと似たり寄ったりになるのだろうかそんなことを思いながら俺たちは銀行へと入った。
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