第五十七話:星からの旅立ち
サワガニ達の連絡網が整う前にすでに更地化した土地で俺たちは木造住宅を建てていた。
「まさか、レオナルドもツーバイフォーに精通してるとはな」
俺はジョシュア君が精密に加工した木材を運びながら言った。
「ハハハ!王都ではツーバイフォーは常識ですよ!」
レオナルドは物凄く上機嫌だった。設計図を引いてるだけなのに本当に本職騎士なのだろうか。
《この世界にツーバイフォー広めたの絶対あの毒妖精でしょ!私、許可した覚えはありませんからね!》
「フロッピーに許可を取る人間なんていないだろう」
《こうなる前は女神だったのに……》
「体がある分あたしのが扱いましだなあ」
レヴィアは水漏れチェックをさせられながら呟いていた。
「いやあそれにしてもスケルトン軍団は凄いですね。全く疲れないから6件も家が建ちましたよ!」
「こいつらに疲れは無いからな」
「なに、レオナルドさんの設計図が見やすいので我々も施工がしやすいんですよ」
「シグルド君って魔剣士じゃよな?土建屋になってしまってるのじゃ……」
「ドラミナさん。どんな時代も壊すより作る方が尊い労働なんですよ」
「そうだぜ!魔王軍のころは壊すための仕事ばっかだったからな!」
シグルド君の言葉にジョシュア君が追従する。
「俺様燃えてるから働けないかと思ったけど、ロストランドの木は俺様の炎ぐらいじゃ効かないから働けて嬉しいぜ!」
ガイラス君は燃え上って喜んでいた。
「高い所はエンリケ君GDに任せてね!」
エンリケ君の方に乗ったシオンも楽しそうだった。
「しかしレオナルドこれは少し仰々しすぎないか?」
建った6件の中でひときわ立派な屋敷にシャルロッテは疑問を投げかけた。
「え?姫様が住まわれるのですからこれでも質素だと思いますよ。通常の3倍の広さしかないですし。まともな装飾もないですし」
「いやでもダイナソーの骨格を屋根につけるのはどうなんだ?」
「この地の危険も払いのけられてる証拠としていいのではないでしょうか?」
「まあ、それもそうか」
《ああ、常識の砦だったレオナルドさんも遂にこの一行に頭がやられて……》
「シャルロッテ姫の事だけ常識が壊れるタイプなんじゃない?」
《レヴィアちゃんだけが常識人だわ!》
「板生命体に常識を説かれたくないですけどね」
《グヌヌヌ》
こうして開拓地を順調に作っていた俺たちの所にゼノヴィアがやって来た。
「テッペイ。ツーバイフォーの改装の仕上げにエリシアとエンリケ君がいるから来てくれ」
「ん?エンリケ君は今までツーバイフォーのエンジンだったからわかるが、フロッピーが役に立つのか?」
「そのフロッピーがないと我達は星の海の迷子になるぞ」
《ほーら!私がいないとダメなんですからね!もっと大事にするべきですよ!》
「ふむ、なぜだかイラっとしたな」
俺はフロッピーエリシアをお手玉しながら造船局へと向かった。
造船局には見事なカニ型になったツーバイフォーが鎮座していた。
シルエットはカニだがちょうどエンリケ君がはまりそうな人型の窪みがあった。
「あ~テッペイ。やっときたわね~。エンリケ君は外部目視兼障害物破壊用ユニットとして船の前に装着するわ~」
ガシャリとエンリケ君が改装ツーバイフォーにドッキングするとそれは今までに見慣れたシルエットになったように思えた。
「名付けてツーバイフォー・クラブよ~」
「今回の接尾語は略語じゃないんだな」
「シンプルでいいでしょ~」
「カニの名を冠してるのが素晴らしいな。ところでフロッピーは何に使うんだ」
《目が回る~》
エリシアは俺のお手玉によって目を回していたようだった。真四角なのにどこに感覚があるんだ?
「それは俺が説明しよう!」
そういうとカニ型造船補助AIテツヤが語り掛けてきた。
「ここは造船局だが、作れるのはハードウェアでソフトウェアじゃねえ。そして俺が周辺をサーチしたところ、今すぐ使えるソフトウェアがあんたの持ってるGMメモリってわけさ!」
「このポンコツフロッピーを使わないといけないのか?」
「ポンコツだなんてとんでもない!この星でそれをまた作ろうと思ったらとんでもない時間がかかると思うぜ!」
「そうか?言い出す言葉も見た目もポンコツにしか感じんのだが……」
「自分で考えて行動できるってのはAIにしては凄い性能なんだぜ!俺だってモデルになったカニ格のおかげでそれっぽく振舞えてるだけだからよ!」
「思ったより高性能だったんだな……」
《なんかAI扱いは気に入りませんが、私の凄さがわかったことでしょう!》
「で、とりあえずどこに組み込めばいいんだ?」
《無視しないでください!!》
「船内のコックピットのスロットに刺してくれ」
俺はツーバイフォー・クラブのコックピットに入るとちょうどフロッピーが刺さりそうなスロットを見つけた。
ガチャリ。
「ここか」
《ねえ?ちょっとは躊躇したらどうなの?って、あ、これは!》
コックピットルームに俺が転生する時に見た金髪女神がうっすら透けた姿ででてきた。
《やったわ!姿を取り戻したわよ!》
「ただのホログラムだぞ」
テツヤの冷たい指摘が飛んだ。
《ホログラムでも板よりましだもの!レヴィアちゃん!今度会ったら板生命体というジャンルは返上させてもらうわ!》
「これで、宇宙に飛び出しても大丈夫なのか?」
「ああ、GMメモリがあれば航路保存や目的地設定、ワープドライブの使用もできるぞ!次元電池が無いから他星系には行けんがな」
「次元電池?」
「ワープドライブの燃料で極めて高出力な次元力が閉じ込められてるカニ銀河連邦では標準になってる資源だ」
「あの宇宙へ行ったヤドカリに追いつくにはその次元電池を手に入れないといけないのか」
「あんたらは極めて次元力が高いが流石に銀河を駆けるには足りんからな。通常航行で行ける範囲にスペースコロニーがあるからそこによって何とかするんだな」
「この星3万年ほど隔離されてたけどそのコロニーは現存してるのか?」
「ん?大丈夫だきちんと存在は確認できてる。今は少し寂れたみたいだが住人もいるみたいだぞ」
《カニ文明頑強過ぎない?》
「まあカニならばそれくらいは耐えて当然か」
《なんであんたは納得してるの!?》
「よしツーバイフォーの改修もできたことだし、ドラミナたちを迎えに行くか」
俺はツーバイフォーの屋根に取り付いた。
「やっぱり中には乗らないのね~」
「フッ、星の海でも変わらずか」
「まて!確かにコスモメタル製の宇宙服だがそのまま行く気か!?」
メルティとゼノヴィアは不思議に思わなかったがテツヤは衝撃を受けていた。
「ヤドカリが生身で行ける場所だ。カニである俺が乗り物に乗らずとも平気なのは当たり前だろう」
「いや、お前は人間だと思うが……」
《汎用AIにはわからないでしょうけど、テッペイはおかしいから気にしないほうがいいわよ!》
「そういうものか、まあこちらとしては新しい船が建造できて楽しかったぜ!」
「お前は来ないのか?」
「俺はここの造船局のAIだからな。また人間が船を作りたくなったらサポートしないといけねえ」
「そうか。助かった」
俺は短く告げるとツーバイフォー・クラブを発進させた。
シュイーン!
一瞬で居住地に来ることができた。流石宇宙仕様だ。
「エエエエエエエエ!」
ツーバイフォー・クラブの見た目をみたレオナルドは叫んだ後気絶した。
「凄いのじゃ~エンリケ君が空飛んでるのじゃ」
「星の海はエンリケ君走れないから私たちと乗ると思ってけど今までと変わらないね!」
シオンはツーバイフォーを引っ張るエンリケ君が好きだったのか上機嫌だった。
「となると、テッペイ達はもう旅立つのか」
そこへゲオセサルマクランのカニと一緒に居たシャルロッテがやって来たなぜかセーラー服姿だった。
「シャルロッテなんだその格好は」
「ああ、これか。ゲオセサルマクランが代々受け継いできた女神の衣を模した衣服らしい。友好の証としてもらったのだ」
女神は女子高生だったのだろうか?しかしシャルロッテが着るとなんだろうなスケバンみたいな気がするな……
《シャルロッテちゃん!今テッペイ絶対失礼なこと考えたわよ!》
「む?なんだこの透けた騒がしい女は」
《エリシアです!これが本来の姿なんです!あなたも王家ならわかるでしょエリシア教の女神ですよ!》
「ああ、あのクライスト教の元になった宗派か。今は王都もクライスト教一色だからな」
《全部テッペイのせいだ!ムキー!》
「まあ、本体フロッピーは置いておいて俺が留守の間にカニクランと単独で話を付けられてるなら、もう俺たちが旅立っても問題はないな」
「それはそうだがそこまで急がなくてもいいのではないか?この世界にはお前を慕うものも多いというのに」
「一生戻らんというわけではない。ヤドカリを殴ったら一度戻るつもりだ」
「フ、そうかそうだったな。お前はそういうやつだった。レオナルド起きろ」
シャルロッテはレオナルドに活を入れた。
「はっ!姫様。私はまた気絶を……」
「なにあれを見たらお前がもたないのは理解できるそれよりテッペイが星の海へ旅立つぞ」
「ええ!?もう行くんですか!?」
「準備が整ったからな」
「これからの開拓テッペイさんとスケルトンズ無しですか!?」
「カニクランが協力してくれるから大丈夫だろう」
シャルロッテが答える。
「え?そうなんですか?」
「オカガニクランは造成の専門家だそうだ」
「姫様いつの間に複数のカニクランと交流を……」
「というわけだからレオナルドの心配など気にせず旅立つといい。いやお前はそんなこと気にしないか」
「ふむ。開拓の足掛かりができたのなら何の憂いもなく出発できるだろう」
「私のことは結局慮らないんですね……」
《レオナルドさん頑張って世界の常識を守ってくださいね!》
「あ、女神様ありがとうございます。」
《女神様扱いしてくれるのあなただけよ!権能を取り戻したら凄い加護あげるね!》
「あ、それは遠慮しておきます」
《なんでぇ!?》
「アホなホログラムは放っておいて、さらばだシャルロッテ、レオナルド」
「ああ、いずれまた会おう」
「寂しくなりますね」
俺は再びツーバイフォー・クラブの屋根に張り付き、一気にこの星から旅立つのだった。
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