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第五十六話:星の海へ旅立つために

 俺自身は見事なスペース仕様になったが、ツーバイフォーの改修にはかなりの時間がかかるようだった。


 メルティ曰く、この造船局の船の設計は全てがSF社製のカニ型でありそれをどうツーバイフォーに転用するかが難しいらしい。


 そこで手持ち無沙汰になった俺たちは、当初の目標であるロストランド開拓を進めることになった。


「まずはロストランド各地のカニクランにどの程度開拓していいかのすり合わせをせんとな」


 シャルロッテは真剣な面持ちだった。


「浜辺は人間の土地っていってたから勝手に開発していいんじゃないの?」


 シオンはガザミ達の言葉を思い出して言った。


「浜辺だけ開拓しても領地とは言い難いだろう」


「海岸線だけの街があってもいいんじゃないか?」


「密林が不可侵だとそれを破ったものが出てきたときの軋轢に困るだろう」


「なるほどな。まあ俺もこのスペーステッペイ状態の感想を聞きたいからカニクランを訪ねるのには賛成しよう」


 シュゴー!シュゴー!


 俺は無駄に脚のスラスターをふかして左右移動した。


「テッペイさんそれ地上でやると水に当たった人が死んじゃいます!」


 レヴィアが俺のスラスター排水を必死に避けて言った。


「作用反作用というやつか、確かに地上だと出力が高すぎるかもな」


 俺は地上ではスラスターを禁止にしようと決めるのだった。


《地上だとオーバースペックなんですよね》


 メルティとゼノヴィアをツーバイフォーと共に造船局に置いてカニクランへの挨拶回りに出かけた俺たちであったが、やはり密林はダイナソーが多発するようで、


 俺やドラミナ、シャルロッテ、骨に守られたシオンは余裕だったがレヴィアとレオナルドは必死だった。


「私達は留守番組でよかったと思うんですよ!」


 レオナルドが悲痛な叫びをあげる。


「余が行くのに、警護のお前がいないのはおかしいであろう?」


 シャルロッテが涼しい顔をして言う。


「もう姫様に護衛なんていらないじゃないですかなんですかコスモメタルブレードっておかしいですよ!」


「お前も騎士なのだからコスモメタルの武器を握ればなんとかなるだろう」


「無茶言わないでくださいよぉ」


 レオナルドは涙目だった。


「レオナルド用コスモメタル製防具を用意すればよかったな」


「確かになコスモメタルならダイナソーの爪や牙も通さんしな」


「爪や牙は防げても衝撃そのものはなくならないんですぉ」


 仕方がないから骨達はシオンだけじゃなくて、レオナルドも守ってやってくれ。


「あたしは!?」


「レヴィアはドラミナにどつかれても死なないから大丈夫だろう」


《おいたわしやレヴィアちゃん》


「板生命体に同情されたくない!」


《板生命体ってなんですか!変なジャンルを作らないでください!》


「直接音声として聞こえるようになったからかエリシアが以前よりうるさく感じるな」


《ぐぬぬ・・・》


 こうしてどうでもいい話を重ねながら俺たちはカニクランが集う泉にやって来た。


(おや?コスモメタルを加工できたのかい?凄いね)


 ゲオセサルマクランの派手なカニが念話で語り掛けてきた。


「ああ、あの偽カニ神いやヤドカリが飛び立った向こう側の遺構がまだ機能していてな」


(メトロカニポリスかい?私たちが行っても無反応だったから君たちは特別なんだね)


「ああ、もしかしたらこのフロッピーのおかげなのかもな」


 俺はエリシアを取り出してゲオセサルマクランのカニに見せた。


(なるほど、鍵が必要だったのだね、それで君たちは星の海に行くのかい?)


「そのつもりなのだがその前にこのロストランドへ人間の居住地を築きたいんだ。浜辺は自由にしていいと聞いたが密林はどうなのかと思ってな」


(そういうことか、別に全土を開拓しても構わないよ。条件は我々を排除しないことだがね)


「それはほかのカニクランも同じ意見なのか?」


(もちろんさ、我々知性ガニはずっと人間と共存したかったんだ、じいさまのそのまたじいさまのじいさまくらいは当たり前だったらしいからね)


「だ、そうだ。シャルロッテ。」


「ふむ、余としても強靭なカニクランの協力が得られるというのは領地の防衛という面でもプラスでしかない。移住者募集の際はカニを忌避せぬものを選ぶとしよう」


(これで我々が代々培ってきた人間用衣類製造法が役立てられる。こちらこそ感謝しよう)


「そんなことができたのか」


(各カニクランは何か人間の役に立つ技能が伝承されてるんだ。我々は衣類、ガザミクランは漁だったりね)


「ずいぶん人間に都合がいいんだな」


(我々が知性を持てたのは人間の女神のおかげだからね。我々からすれば人間は神の使いなのさ)


「その女神も宇宙のどこかにいるのか?」


(さてどうだか?この星を離れたことだけは確かだね)


「ヤドカリにクレームを伝えるついでに探してみるか」


(もし会ったら、この星をまた見に来て欲しいと伝えてくれ)


「わかった」


 こうして俺たちはカニクランから開拓の許可をへて居住地を作ることにした。


「メルティ居ないのに建造物たてるの大変じゃない?」


「シオン。お前と骨共がいるだろう。俺も勿論手伝うから簡単な居住地くらいはすぐ作れるだろう」


「私は設計とかできないよ!」


「レオナルドどうにかならんか?」


「え?まあ普通の家程度なら大丈夫ですけどここの素材頑丈過ぎて加工難しくないですか?」


「流石事務方最強の男だ。加工はコスモメタルですれば楽勝だろう。整地は俺に任せろ」


 そう言うと俺は強化されたキャビテーションを放った。


 パチン。ズゴォーーーン。


 アビスオーレよりも硬い木が跡形もなく消し飛んでいた。


《ちょっと!これちゃんと発射の合図とか範囲伝えないとカニクランにも被害が出るんじゃないの!?》


「む、たしかにそうだな、カニクランといい感じに連絡が取れればいいんだが」


(こら!そこのメタルカニもどき!なんてことをしてるんだ!危うく死にかけたぞ)


 見るからにサワガニらしきカニが怒っていた。


「すまない、加減が難しくてな、この辺を更地にして居住区を築こうと思っているのだが、良い感じに避けてくれないものだろうか?」


(ああ、そういうことか、わかった俺たちサワガニクランの情報網でロストランド中に知らせるから、開拓は明日まで待ってくれ)


「一日ですべてに話を付けられるのか……」


(俺たちサワガニクランは情報と治水のクランだからな)


「迷惑をかけるが頼む」


(なに、人間の役に立てる時が来たんだ嬉しいくらいさ)


 そういうとサワガニは颯爽と密林に入っていった。


「俺たちは取り合えず広がった土地に家でも建てるか」


「指示は私が出しますね!」


 レオナルドは自分の領分だからか威勢が良かった。


 俺たちはこうして簡単な居住地建設を行うことになった。

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