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第四十六話:新天地を目指そう

 俺たちがグラスランドに戻って半年が経った。


 日に日に川縁を取り囲み祈る人間は増え、ドラミナは丸くなり、メルティはレヴィアとゼノヴィアと室内農業を始め、シオンは骨達と戯れていた。


「最近は食べるのに不自由しないのじゃ~」


 丸いドラミナは幸せそうだった。


「何言ってるのよ。あんたついに串焼き屋を出禁になってたじゃない」


 レヴィアが呆れながら指摘する。


 「まだほかの店があるのじゃ!」


 ドラミナに全く悪びれた様子はなかった。


「でもドラミナが出禁になる店が増えると私たちも外食し辛くなるのよね」


 シオンがエンリケくんを磨きながら会話に入る。


「だって、タダなんじゃもん!困るならお金を取ればいいのじゃ!」


「ドラミナちゃんにお金なんてないでしょ~」


 メルティが農業を一区切りつけてやってきた。


「へ?なんでじゃ?お小遣い使ってないのじゃ」


「ドラミナちゃんのお小遣いは食費。食費がタダならお小遣いはなしよ~」


「そもそも働いてもいないのに食べ過ぎだ。もはや元の姿の面影もないくらい球状だぞ」


 麦わら帽子に角を貫通させて被っているゼノヴィアがドラミナのフォルムに言及する。


「だってお腹がすくんじゃもん。ブレスを吐けばすぐ痩せるし別にいいのじゃ」


「便利な体をしているな。我などは割と体形に気を使っているのだがな」


 そういいながらサロペット姿の胸の膨らみをこれでもかとゼノヴィアはアピールしていた。


「普通に農作業の邪魔だからもう少し減らした方がいいわよ~」


 メルティは恐ろしく辛らつだった。


「メルティ、ゼノヴィア。屋内農業と畜産の具合はどうだ?」


「あらテッペイ。とっても順調よ~。以前からある毒草畑以外にも、イモ類、葉物類、果菜類が獲れてるわよ~」


「牛や豚や鳥も半年でだいぶ大きくなったぞ。既に成長済みの乳牛からはミルクをしっかり絞れたぞ、飲むか?」


 ゼノヴィアがミルクの入ったグラスを取り出した。


「魔王だったのにすっかり畜産が板についてるな……」


 俺は顔のシャッターを開けゴクゴクとミルクを一気飲みした。コクがあって甘みが強く美味しかった。凄いな魔力畜産。


「はて?魔王何のことを言っているのだ?我は魅力的な魔族のお姉さん以外の何物でもないだろう」


「そうだったな魔王はザルコウだった。ハハハ」


 俺たちが笑いあっていると、周囲から感極まった声が聞こえてきた。


「今日もハサミの勇士様が笑っておられる」


「世界は安泰だ!」


「今日はいいことがありそうだ!」


「ああ、苦しかった病が癒されていくのを感じる!」


 住み慣れた川縁は気に入っているのだが、このクライスト教信者がどうもな……とても居心地が悪い。


《私だったら大喜びなのに!》


 しかしこの状態も間もなくおさらばだ。屋内農業が軌道に乗った今、モジュール化してツーバイフォーSPAに組み込み俺は静かな地に旅立つのだ!


《いや、ツーバイフォーはあなたの持ち物じゃないでしょ!?みんなを巻き込む気なの!?》


 そういえば、誰にも何も確認を取っていなかったな。俺としたことが仲間たちと一緒に居るのが当たり前と思うようになってしまった。


「ドラミナ、メルティ、シオン、レヴィア、ゼノヴィア。少し聞きたいんだが」


「なんじゃ改まって」


「俺はこの川縁の居心地が悪くなったので静かな何処かへ旅立とうと思っている。皆ついてくる気はあるか?」


「妾はどこまでも付いて行くぞ!なにもないとこならないところで直火焼き料理で我慢するのじゃ!」


 ドラミナはきっぱりと言い切った。


「どこに行ってもテッペイがいればわたしとしては研究できるしどうせまた変な事するんでしょ~新しい外骨格作ったりとか~」


 メルティはそういえばアビスオーレの研究をしているんだったな。


「私がいないとエンリケ君が動かないだろ!テッペイスケルトンもまだ完成してないから離れないぞ!」


 俺のスケルトンは永久にできない気がするんだが流石に頭骨は渡せないしな。


「あたしの拒否権ってないですよね……」


「あら?帰りたいの~」


「ずっとみんなと一緒に居たいです!」


 レヴィアはもう損害賠償済んでそうなのにメルティに逆らえないようだった。


「我はテッペイの下僕だからな、主に付いて行くのは当たり前といえよう」


 ゼノヴィアはそういう設定を押し通すらしい。


「そうか」


 俺はそう一言呟くとまた川縁に佇んだ。


 しばらくして珍しくクライスト教信者たちが俺以外の方向を向いてざわつき始めた。


 信者たちの合間をすり抜けて見覚えのある顔がやってきた。


「テッペイ!言われた通り余がこちらから会いに来たぞ!」


「はあ、はあ、姫様勝手に行かないでください……」


 シャルロッテ王女とレオナルドであった。


「ん?本当に会いに来るとはな」


「余は王都に閉じこもってこないと思っていたのか?」


「閉じこもるとは思わないが政務だのなんだのそういう面倒くさいのがあるだろう」


「確かにな、だがテッペイ。平たく言えば余はお前が大々的に勇者をプロデュースしたせいで政争に敗れたのだ!」


「いや姫様、それは言い過ぎですよ。シルフィール様から未知の大陸調査の全権を委ねられたじゃないですか」


「体のいい左遷だと思わぬか?」


「それは否定できませんが、テッペイさんの力を借りればむしろ勝ち組だと思いますよ」


「勇者をプロデュース?何を言ってるんだ?」


「そこの麦わら帽子が魔王だろう。余の目はごまかせんぞ」


「む?我か?言いがかりだな。我は魅力的な魔族のお姉さんゼノヴィアだ」


「ただの魔族が生身でテッペイの傍に居られるわけないだろう。シグルドのように骨にされているはずだ」


「誰が何と言おうと我は魅力的な魔族のお姉さんだからな。テッペイも我の魅力を囲うことにしたのだ!」


「この男が色気に興味があるわけあるまいそもそも貴様お姉さんと名乗るには迫力がありすぎる!」


「お前こそ王女にしては気迫に満ちているぞ」


 シャルロッテとゼノヴィアが謎の火花を散らし始めていた。


「それでなんとなく予想は付くが何の用だ。俺は働かんぞ」


「テッペイさんそう言わずに説明だけでも。まず西にいきなり未知の大陸が2か月前に現れまして、調査隊を送ったのです」


「それで?」


「そこは見たことのない木々が生い茂る場所で巨大なアースドラゴンのような生物が無数に闊歩していたのです」


「ほう」


「ここから面白い所で、危うく調査隊は全滅しそうになったのですがそこで巨大なカニ達に救助されて帰路につけたらしいのです」


「なんだと!?」


「お、食いつきましたね。我々はそこを失われた大地ロストランドと名付けました、そこの開拓をテッペイさんと一緒に行いたいのです!」


「そこは既存の人類コミュニティはないんだな?」


「今まで存在もしなかった大陸なのであるはずがありません!先住民はもしかしたらいるかもしれませんが、そこまで入り込めませんでした」


「フハハハ!渡りに船だな!ちょうど誰もいないところに引っ越す話をしていたのだ!まだ見ぬ巨大カニを拝みに行こうではないか!」


「本当にあっさり承認したな……」


 シャルロッテはあっけにとられていた。


「テッペイさんはカニの話題を出せば絶対動くんですよ」


「レオナルド、テッペイの行動原理を分析できてるのじゃ……」


「流石事務方最強の騎士ね~」


「そんなの名乗った覚えありませんよ!」


 そんなこんなで俺たちはレオナルドとシャルロッテも加えて新天地ロストランドへ向かうことにした。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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また次回、お会いできるのを楽しみにしています!


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