幕間:シャルロッテの受難
ここは王都キングスレー第三宮殿。
闘技会で自身の推薦した闘士が優勝したシャルロッテは王都で政務に当たることができるようになっていた。
そんな穏やかな午後。
ガチャリ。
いつも通り……ではないとんでもなく青褪めた顔のレオナルドが入ってきた。
「レオナルド、いったいどうした」
「姫様、遂にシャルローネ様が、魔剣士シグルドの捜索依頼を出されました……」
「む、テッペイ達が急ぎ出立した故有耶無耶にしていたあの件に遂に決着をつけねばならないのか。今テッペイ達はどこにいる」
「グラスランドの川縁から動いていませんよ。本当に働く気がないみたいです」
「そうか。テッペイは動かないとしてもシオンにシグルドを借りてくることはできそうか?」
「何とかしてみます!」
そういうとレオナルドは早馬を使い急いでグラスランドへ向かった。
レオナルドが川縁に着くとそこは眩暈を起こしそうな光景だった。
なんだか燃え盛るスケルトンを中心にスケルトン達が謎の球技をしていた。
「オーライオーライ!はい、ガイラス君アウト!」
「くう!俺様の打球をキャッチするとはそれでも元部下か!」
「ガイラス君。今、俺たちはみんなシオン様に使役されてる身ですから平等ですよ!」
ジョシュア君は悪びれずに言った。
「ぐぬぬぬ、次の打席ではぎゃふんと言わせてやる!」
「あのーすいません……」
レオナルドは恐る恐る話しかけた。
「ああ、レオナルドさんではないですか。魔族で流行ってるベースボールやりますか?」
シグルド君がレオナルドに気づいて応えた。
「あ、いえ遠慮しておきます。それよりシグルド君。王都に来ていただけませんか?」
「王都にですか?仕事は受けるなとテッペイさんに言われてるのですが……」
「いえ、仕事じゃなくてあなたの存在の釈明というか捜索願が出てるのでうやむやにできなくなったというか」
「ああ、シャルローネ様にそういえばこの姿でお目通りしていませんでしたね。魔王軍での任務のためとはいえよくしてもらったのできちんと説明するのが筋ですよね」
シグルド君は目の獄炎を揺らめかせながら頷いていた。
「では、シオン様に許可を取ってきますね」
そういうとシグルド君はツーバイフォーに歩いて行った。
そしてすぐ出てきた。
「行ってきなー。だそうです」
「凄く軽い!でも助かります!」
レオナルドは頭を下げ、早速早馬にシグルド君と乗って王都へと向かった。
だがレオナルドはこの時自分の見た目がスケルトンと二人乗りしているという奇異な姿なことに気づいていなかった。
王都の門前に着くとレオナルドは止められた。
「レオナルド殿少しお待ちください、なんですかそのスケルトンは?」
「テッペイ殿の仲間だ急ぎ通してくれ!」
「なるほどハサミの勇士殿は確かに複数のスケルトンを使役されてましたな。そういうことならばお通りください」
「職務ご苦労!」
レオナルドは真面目な門番にねぎらいの言葉をかけると第三宮殿へと素早く向かった。
「姫様!レオナルドただいま戻りました!」
「お久しぶりですねシャルロッテ王女」
レオナルドと共についてきたシグルド君は平然と挨拶をした。
「あ、ああそうだな。テッペイ達抜きでお前と合うのは不思議な気持ちだが。下姉上様への説明を手伝ってくれるか?」
「もちろんです。そのために来たのですから。素早く終わらせましょう。ベースボールの続きがしたいのでね」
3人は第2宮殿へと向かった。
「む!第3王女様この先は第2王女様の区画。なにようですかな?」
近衛騎士が呼び止める。
「下姉上様に魔剣士シグルドの件で話したいことがあってな通してもらうぞ?」
「第3王女様とそのお付きはいいがそのスケルトンはなんなのですかな?」
「このスケルトンがとても重要な情報を持っているのだ。直接伝えなければならん。通せ。二度は言わんぞ?」
シャルロッテはまるで敵対者に向けるような圧を近衛騎士にかける。
「そのような態度、後で問題になりますぞ!」
「勝手にするがいい」
近衛騎士の忠告を無視しシャルロッテたちは第2宮殿へと進んでいった。
「下姉上様。失礼します」
第2王女シャルローネの執務室に入る。
「あら、シャルロッテ。この優雅な第二宮殿にあなたほど似つかわしくないものはいないのに何のようかしら?」
「魔剣士シグルドを連れてきた」
「シグルドッ!どこにいるの!?」
「シャルローネ様お久しぶりですシグルドです」
シャルローネにスケルトンとなったシグルド君が名乗り出た。
「ひっ!わたくしに骨の知り合いはいませんわ!」
「いえだから私が魔剣士シグルドなのです。路地裏でスケルトンにされたのです」
「だ、誰が何故そのようなことを!?い、いえ骨の言うことなど信じられませんわ!」
「この剣をご覧ください。これはシャルローネ様に誂えてもらった魔剣です。この世に二つとないのはあなたが一番ご存じのはず」
「確かにこれはわたくしがシグルドに送った魔剣……紛い物ではありませんわ……ではどうして骨に」
「私は魔王軍でした。シャルローネ様に取り入り内部からキングスレーを蝕むことが私の任務だったのです。それを見抜いたシオン様、メルティ様に文字通り骨抜きにされたのです」
「で、ではわたくしの力になりたいと言っていたのも、わたくしを守ると誓ってくれたのも全部任務のための嘘だったと?」
「はい。すべて偽りの言葉でした」
シグルド君は表情筋がないがすまなさそうに答えた。
「もうよい。シャルロッテよくわかった、即刻その見苦しい骨を連れて第二宮殿を去りなさい」
「下姉上様……」
「はやく!!」
シャルローネに急かされてシャルロッテたちはすごすごと第3宮殿へ戻っていった。
「少し残酷であったな」
「私としても今は胸が痛む思いです胸ありませんが」
「ふう、だがまあ助かった。下姉上様は惚れやすい質ゆえまた新しい守護者を見出して元気になるだろう。シグルド君。手間を掛けさせたな」
「いえ私もいつかけじめはつけたいと思っていたので、ちょうどよかったです。魔剣も返却できましたしね」
「あ、そういえば魔剣しまわなかったんですね」
レオナルドが指摘する。
「ええ、あれはシャルローネ王女の大事な品ですからね。それにこんなことを言うと酷いと思われるかもしれませんが今はもっといい素材の物を手に入れてるので……」
「身も蓋もないな。まああのテッペイ一行のメンバーだけはあるということか。近々余が直に会いにいくとしよう」
「姫様公務があるのに川縁には行けませんよ」
「どうかな。余は割とすぐに行く気になる気がするがな」
シャルロッテの予感は当たることになるがそれはまた別の話である。
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