第三十八話:凄い放熱効果のある鰭だ
「はあ~!これがガッジィーラの骨かぁ!」
合流するなりシオンのテンションは高かった。
「でもなんか右半身の骨が足りないんだけど」
「それは、倒すときに消し飛ばしたからだな」
「じゃあ丸ごとガッジィーラスケルトンにはできないから使えそうな骨をエンリケ君の強化に使おっと」
「ガッジィーラはアースドラゴンって言われてるけど、立ち姿が似てるだけで全然別の生き物っぽいわね~」
メルティが肉や血を集めながらふんふんと頷いていた。
「それにこの鰭凄いわよ~考えられないくらい放熱効率がいいわ~。お風呂の給湯器に使えるかもね~」
「ほう、レヴィアに水質を調整してもらえば疑似的に熱水噴出孔にもできそうだな」
「それはちょっと温度が高すぎるんじゃないの~?」
「ユノハナガニという熱水噴出孔付近に住むカニがいてな、その気分が味わいたいのだ」
《ガッジィーラの熱線にも耐えられるのに今更!?》
「まあテッペイが浸かる時だけ温度を高くすればいいのかしらね~」
「えっと、あたしが水質調整するのは既定路線なの?」
「あら~?レヴィアちゃんに自我が戻ってるわね~教育し直さないと~」
「ままままま、待って!水質調整でもウォーターサーバーでも何でもするから再教育だけは許して!!」
「そうじゃ!妾からもお願いするのじゃ!幼馴染の死んだ魚の目はもう見たくないのじゃ!」
「ん~テッペイどうする~?」
「仕事をちゃんとしてくれるのなら別に構わんが、ツーバイフォーALCを改築する必要はありそうだな」
「確かに乗員が増えるならちょっと手狭だものね~修復したばかりだけどバスルーム付けるついでに増築しておくわ~」
そうこうしてるうちにシオンとメルティが各々欲しい素材を手にした。
「ふむ、洞窟がだいぶ暑くなってきたな」
「ガッジィーラが吸ってた熱が戻ってきたんじゃな」
「里へ報告に戻るか。パイロサンドも受け取らないといけないしな」
俺たちは熱源の洞窟を後にし竜人族の里へと戻った。
「帰ったのじゃ~」
ドラミナの呑気な声に里の見張り達が集まってきた。
「おお!なんだか急に温泉が温かくなってきたがまさかGをやったのか?」
「テッペイがやばすぎる衝撃波で倒したのじゃ」
「あの漆黒の塊の方が?Gを?」
「一撃だったのじゃ。正直アレに当たったら妾も死ぬのじゃ」
「そういえば以前里にハサミを付けた救世主を崇めてる人たちが布教に来たことがあるが、でたらめじゃなかったのか?」
こんなところにまでクライスト教団来てるのか……と俺は少し辟易した。
「俺はそのハサミの勇士とは何の関係もないから気にしないでくれ」
「は、はぁ」
見張りは釈然としていなかったが、俺は気にせずズカズカとドラミナの実家へ向かった。
「ただいまなのじゃ~」
「おお!ドラミナ!無事だったか!頼っておいてなんだが心配で心配で……主に母さんの圧力が」
「ドラミナちゃんおかえりなさい!何か食べたいものはある?」
ヨルが、ファブニルに肘鉄しながらドラミナに聞いた。
「ワイバーンを沢山倒してきたから、鉄板焼きを食べたいのじゃ!それからガッジィーラの肉も食べられるか試してほしいのじゃ!」
「あらワイバーンなんてなかなか豪勢ね!お母さん腕によりをかけて調理するわよ!」
「イテテ、本当にガッジィーラを倒してしまうとは凄いぞドラミナ」
「倒したのはテッペイじゃ」
「なんと、ドラミナでもダメかなくらいの竜を倒してしまうとは……とんでもないお方だ」
「それでパイロサンド4トンの件なんだが」
「え?あ、はい若い衆にちゃんと集めさせてあるので後で倉庫から積み込んでください」
「仕事が速いな」
「皆さんが里に戻る前に温泉の温度が戻り始めましたからね」
「そうか、しばらく俺たちの移動手段を改造する時間が欲しいのでしばらく滞在させてもらうぞ」
「ああ、それは是非!ヨルの作る料理も堪能してほしいですしね」
夜になり里を上げてのお祭り騒ぎになった。
ちょっとよそでは見れないほどデカい鉄板でワイバーンやガッジィーラの肉が焼かれていくのはなかなかに豪快だ。
夜になるまでしっかり下ごしらえをしていたのか、ただ切って焼いただけではないジューシーな味わいと、ピリッとしたスパイスの風味が効いていた。
どうにも竜人族は肉の調理に一家言あるらしく、アメリカ人みたいだなと思った。
「それにしてもガッジィーラ、これ脂身は全然ないが随分美味いな。体に力が湧き上がってくるようだ」
「実際に能力が上がる効果があると思うわよ~ドラゴンの肉は普通の人間が食べると不老長寿になるみたいだし~」
「もともと不死身の俺にはあまり関係なさそうだが、身体能力の向上はより高みを目指すためには有用だなたくさん食べておこう」
「妾も沢山食べるのじゃ~。母上の鉄板焼きは色んな土地をめぐってきたけどやっぱり一番なのじゃ!」
ドラミナは既にバルーンと化していたがモグモグと肉をかきこんでいた。
「もう!ドラミナちゃんったら。そんなに褒めてくれるならお家に帰ってくればいいのに」
「テッペイ達といるのが楽しいから帰るつもりはないのじゃ!」
「テッペイくん!娘は嫁には出さんぞ!」
なんだか酔っ払っているファブニルがダル絡みしてきた。
「いやドラミナは従業員みたいなものだからな……」
「なにい!うちのドラミナに魅力がないというのか!?」
さらに絡んでくるファブニルの前に少し黄色い粉が舞った。
ドサッ。
ファブニルは気絶した。
「楽しい宴会でも節度は大切よね~」
メルティが毒を嗅がせたらしい。恐ろしい手際だ。
「すいませんうちのボンクラ亭主が……」
ヨルがすまなさそうにファブニルを引きずって行った。
こうして宴の夜は更けていった。
翌朝、俺が瞑想していると、シオンが走ってきた。目は血走っている。
「テッペイ完成したんだエンリケ君Gが!」
「いや、宴の後もコツコツ作業をしていると思ったが徹夜してたのか?」
「死霊は睡眠しなくていいからね!それよりも早く見て!」
シオンに引っ張られ、実際には俺が重すぎて一切引かれていないが、エンリケ君Gとやらの前にやってきた。
うーん、エンリケ君だよなDREの時とどこが変わったんだ……。
「脚と背骨をガッジィーラの骨に変えたんだ!これで脚力と耐荷重が70%もアップしたよ!テッペイの八本脚の力にも劣らないよ!
それからガッジィーラの頭骨を兜に加工してみたんだ!かっこいいでしょ!」
「確かに頭部は凄く強そうな恐竜の化石を被った原始人みたいになったな」
「そうでしょ!耐久度も大幅に上がったからミスリルドラゴンクラスなら互角に戦えると思うよ!」
「エンリケ君、生前よりはるかに強くなったな……」
俺が呟くとエンリケ君は力強くサムズアップして応えた。
「我々は標準人サイズなのでエンリケ君のような強化が出来ないんですよね……」
「まあ自分の骨を入れ替えられたいか?って言われると微妙なんだけどよ」
シグルド君とジョシュア君は羨ましいようなそうでないような感じらしい。
自身の骨であることが割とアイデンティティの担保になっているのだろうか。スケルトンは不思議だ。
そんなことを考えながらエンリケ君の横を見るとなんかふたまわり暗いデカくなったツーバイフォーが鎮座していた。
「あ~いいところに来たわね~。これが温浴施設付き移動拠点ツーバイフォーSPAよ~」
「SPAてスパか?」
「そうよ~よくわかったわね~」
《なんでこの妖精は毎回ファンタジー感を粉砕する名称を付けるの!?》
「熱魔石とGの鰭を使ってばっちり仕上がってるからちょっと試してみて~」
後部ハッチが開くとそこには見事に石造り?の浴槽が置いてあった。俺が外骨格ごと入っても大丈夫な広さだ。
俺は早速湯舟に入るといい感じの硫黄の匂いと灼熱感があった。
「おお、まるで熱水噴出孔のようだ!この硫黄成分はレヴィアの調整か?」
「あ、うんそうだよ。なんかすごく細かく調整させられたけど上手くいっててよかったよ」
「素晴らしい、これでまた一つカニとしての気持ちを味わうことができた。定期的に浸かるとしよう」
「テッペイが川洗浄から卒業してくれて、わたしもうれしいわ~」
「じゃがメルティ。テッペイ用の温度じゃと妾達には流石に熱すぎるのじゃが」
「そこはなんとGの鰭の放熱レベルを上げるとすぐ適温になるのよ~」
「む?急に温くなったな。出るか」
「と、この通りよ~」
「おお、凄いのじゃ!」
「水質も硫黄泉からアルカリ単純泉にしたりできるわよ~レヴィアちゃんが」
《泉質談義するの止めて!!なんかファンタジーじゃないから!!》
「常に肌がスベスベになるのじゃ!」
「ドラミナはいつも風船みたいにプニスベじゃない」
「レヴィアは妾のわがままボディに嫉妬しておるのじゃ」
「だれが壁よ!」
「誰もそんなこと言ってないし、ちゃんと肋骨別れてて板じゃないから大丈夫だよ」
「シオンちゃんのフォローが絶妙にずれてるわね~」
そんな他愛のない話をしていたが、ツーバイフォーやエンリケ君の改造も終わったのでハイランドにパイロサンドを届けるためにそろそろ出発しよう。
そんな時、見覚えのある青年がボロボロの姿で近づいてきた。
「ああ、その奇怪な乗り物やはりテッペイさんでしたね!今回は先を越されませんでしたよ!」
「ん?カイトじゃないか。どうかしたのかそんなボロボロになって」
「魔王軍がマグマだまりを操って噴火で竜人族の里を滅ぼそうとしていたんですよ!」
「え?そんな危ないことが進行してたの?」
「え?テッペイさんもそれを察知したから竜人族の里にいるのでは?」
「いや、俺はドラミナの里帰りのついでにデカいアースドラゴン、ガッジィーラを倒してただけだ。温泉の温度を下げてたからな」
「そういえばちっともマグマが噴火しないとか魔王軍が言ってましたけど、そのガッジィーラが抑えていたのでは」
「ハハハハ!いやあカイトお手柄だな!」
「え、ああ。ありがとうございます」
「俺たちはもうハイランドに向かうけど、竜人族の里を楽しんでくれ!あと傷もちゃんと治せよ!」
俺たちはなんとなーく居心地が悪くなったのでそそくさとハイランドへ出発した。
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