第三十五話:名物が死んでないか?
アッシュランドはグラスランドの東、峻厳な山岳地帯で隔てられた場所にあるらしく、陸路で行くのはちょっとお勧めできないとのことだったので俺たちは一旦港町ヨッティーに来ていた。
「ふ、俺たちが本格的に海を渡るときが来たようだな」
「テッペイ。本当にツーバイフォーに乗っていかないの~?」
「カニは水陸両用が当たり前だからな。もしダメだったら外骨格の改修が必要だ」
「でも、テッペイだったら海泳がずに上走れそうだよね」
「空飛べればそんな問題ないんじゃけどな~」
「勇士様が海を制する姿が見られるとは私は感激しております」
いつの間にかやってきていたルイージ町長が勝手に感動していた。サンドランドのマリオ市長もだが、この兄弟揃いも揃って狂信的なので苦手だ。
ツーバイフォーALCは前回のカニ退治の時に水上航行能力はついているので、エンリケ君のバタ足と車輪が変形した水車を推進力として海を渡る。町長から海図を貰っておいたのでメルティに見てもらって目的地を目指すことになった。
「よし!いくぞ!」
バシャン!
俺は勢いよく海に突っ込むとそのまま沈んだ。アダマンタイトが重すぎるのだ。
8本の歩脚を限界か動作させて浮上を試みる。
ブクククク。ザバッ!
なんとか海上に頭を出すことが出来た。ツーバイフォーは出航したようだ。俺は急いで横に追いつく。
「あ!テッペイが浮かんできたのじゃ!」
「いや、あれ浮いてるっていうよりとんでもない速度で脚を動かして海をかき分けてるみたいだよ!」
「やってることはエンリケ君のバタ足とおんなじ感じよね~浮力が全くなさそうだからとんでもない力を使ってるけど~」
「でも、テッペイがツーバイフォーに乗ってたら転覆してたかもしれないね!重そうだもん」
「まあ、アダマンタイトは非常に重いですからね、我々のように骨ならまあ軽いんですけど、よく浮上してきたと思いますよ」
シグルド君はシオンにお茶を入れながら感心していた。
そんなこんなでちょっと思ってたのとは違ったが俺は海を制することが出来た。
《全然制せてないですけどね!!》
アッシュランドへの航路は山岳部を迂回するためだけのものなので短く、数時間で上陸地点に着いた。
「おお、地面が灰色だ」
「久しぶりに帰ってきたけど相変わらず味気ない景色じゃ!」
「よしドラミナ。地元ならここからは案内してくれ!」
「任せるのじゃ!」
フワ~っと上空に飛んでいくときょろきょろと周囲を見渡し降りて来た。
「あっちの方角に里があるのじゃ!」
「思いっきり目視して見つけただけだよな?」
「だっていつも飛んで移動してたんじゃもん……」
「便利過ぎる移動手段を持ってるのも考え物だな」
「まあまあ、DREのエンリケ君ならどんな坂道も大丈夫だから頑張って登っていこう!」
「一応山脈のこちら側は道があるみたいだからな何とかたどり着けるだろう」
「テッペイ~。ここの灰とても質がいいからある程度積んでから行きましょ~」
メルティの頼みを受けてスケルトン部隊を総動員して灰を掘り起こしてツーバイフォーへと積んだ。
積み過ぎるとパイロサンドが積めなくなるのでほどほどに抑えておいたが。
そんな感じ俺たちは山道を登り竜人の里と思わしきところへ近づいてきた。
今回はドラミナに先導させているのでいきなり攻撃されることはないと思っていたのだが……
「ドラミナ~!だらけ切ってるその姿ならやれるわね!喰らいなさい!ハイドロプレッシャー!!」
唐突に青い竜人と思わしき少女がとんでもない高圧水流をドラミナに放っていた。
「学習しとらんの~レヴィア~そんな威力じゃ効かんのじゃ。ほれファイアブレス」
「いや待てドラミナ水に高熱は……」
俺が制止する前に火炎放射と高圧水流がぶつかった。
ズガーーーーン!
空中で水蒸気爆発が起き俺は大丈夫だったがツーバイフォーがエンリケ君ごとひっくり返ってしまった。
里の道も抉れてしまった……なんてことだ。
「なにがおこったの!」
シオンがあわてて倒れたツーバイフォーから飛び出してエンリケ君を確認していた。
「凄い衝撃だったわね~。毒の実験をしてなくてよかったわ~、ALCじゃかったら完全に壊れてたかも~。でも修理が必要ねえ~」
メルティの口調は穏やかだったが目は一切笑っていなかった。
ブレスを撃ってスマートになったドラミナはメルティのその姿を見るや言い訳を始めた。
「妾のせいじゃないのじゃ、あいつじゃあっちの青い奴がいきなり攻撃してきたのじゃ!」
「ドラミナお前あいつの名前呼んでたよな?」
「小さいころから弱っちい癖にいつもちょっかいをかけてくる鬱陶しい奴なのじゃ!みんなあいつが悪いのじゃ!」
そういってドラミナから全責任を押し付けられた青い竜人、確かレヴィアと呼ばれていた。はひっくり返って気絶していた。
「弱っちいっていうのだけは本当ぽいな」
「びくともしてないテッペイのアダマンタイト外骨格が重すぎるだけだと思うよ」
シオンがエンリケ君のチェックを終えて戻ってきた大丈夫だったらしい。
「半分はドラミナのやったことだが、半分はこのレヴィアというやつのせいなのはまあ間違いないとしてどう弁償させようか……」
「骨にするとか?」
「魔王軍でもないのに骨はちょっとな……」
「レヴィアは弱っちいが、水魔法はめちゃくちゃ得意じゃぞ」
「水は俺も出せるしな……」
「テッペイは普通の水じゃろ?レヴィアは水質も操れるからおいしい水が飲み放題なのじゃ!」
「なるほど。水商売をさせるか」
《その表現はやめてあげて!!》
「ほらレヴィア起きるのじゃ!」
ドゴォ!
気付けにしてはあまりにも痛すぎる音でドラミナがレヴィアを起こした。
「はぐゎ!なにをするの!」
「レヴィアがあれを見るのじゃ」
ドラミナがツーバイフォーを指さす。
「四角い車輪の付いた要塞?壊れてるけど……」
「お前が何も考えずに攻撃してきたせいで壊れたのじゃ。弁償するのじゃ」
「え?あたしそんなの狙ってないよ!」
「話の途中で割り込ませてもらうぞ。俺はあのツーバイフォーの持ち主のテッペイだ。お前がドラミナを狙った攻撃の余波で壊れたからお前にも責任がある。半分は迎撃したドラミナのせいだがこいつは当分おやつ抜きの刑で返済させるとして、もう半分の責任を取ってもらいたいのだ」
「おやつ抜き!?おかしいのじゃ!」
「メルティの顔を見て同じことが言えるか?」
「……無理じゃ」
「話の腰が折れたな。それでレヴィア弁済してもらいたいのだが?」
「よくわからない真っ黒な金属の化け物の言いがかりなんて聞くわけないでしょ!」
「そうか……」
「レヴィア、死にたくなかったら言う事聞いておいた方がいいと思うのじゃ」
「なによ!ドラミナ!あたしがこんなやつらにやられると思ってるの!?」
「メルティ。教育的指導を頼めるか?」
「竜人に効く毒をずっと試したかったのよね~」
「終わりじゃ……レヴィアの尊厳は終わりじゃ……」
なぜか教育的指導を受けるわけではないドラミナが怯えていた。
しばらく経つと半壊したツーバイフォーからメルティとレヴィアが出てきた。
メルティは非常にニコニコと上機嫌だったが、レヴィアの表情は死んでいた。
「すっごくいいデータが取れたわ~。竜人族って無駄に強いから今まで捕獲できなかったのよね~」
「レヴィア……生きててよかったのじゃ。お前は鬱陶しい奴じゃが幼馴染じゃしな」
「あたしはおいしい水を出す機械です……」
「骨になったほうがマシな感じになってるんじゃが!」
「そのうち元に戻るわよ~」
こうしてドラミナの幼馴染レヴィアがウォーターサーバーとして仲間になった。
入り口でレヴィアとひと悶着あったがそれ以降はドラミナのおかげですんなり里に入ることが出来た。
メルティはツーバイフォーを火山灰で超強化ALCにするため残ることになった。
里を歩いていると、皆ドラミナに挨拶はするが妙に元気がない様子だった。
温泉の里というには俺のイメージする湯気とか硫黄の香りとかそういったものがない。
俺は少し不思議に思っていたがそうこうしてるうちにドラミナの実家に着いた。とても立派な建物だ。
「母上ー帰ったのじゃー」
「おお!ドラミナ戻ってきたか!!」
「なんでいきなり出てくるのが父上なのじゃ!やっぱり嘘っぱちだったのじゃ!」
「そんなつれないことを言うなドラミナ!家族じゃないか!確かに呼び出しに嘘をついたのは良くなかった、だがこの里の一大事にお前を呼び戻すにはこれしかないと思ったのだ!」
「里の一大事じゃと?」
「そうだ!名物の温泉が熱源を占拠されたせいで冷めてしまったのだ!」
「なるほど、それの解決をしてほしいと」
「なんだ?このアダマンタイトの化け物は親子の話に割り込んでくるんじゃない」
「今現在ドラミナの食費もろもろを労働力の対価に支払ってるものだが?」
「え?ドラミナの雇用主で?」
「そうだ、労働力以上に食費をむさぼるので少し困っているんだどういう教育をしてきたんだ?」
「えっと、ドラミナのほうが強いので自由奔放に育てました」
「そう言う事か、まあいい熱源の調査を800万ゴルドで請け負おう」
「800万!?そんな大金あるわけないだろ!」
「お前の娘が使った食費だが?」
「ドラミナ食べすぎだろ!!」
「だって食べられるんじゃもん……」
「800万使いこんだのは本当だが、それを別にすべて要求する気はない。パイロサンドを4トンほど掘らせてもらえればいい」
「ああ、あの熱魔石の原料の……それならなんとか」
「話が早くて助かる」
こうして俺たちはパイロサンドの納入先を確保し温泉の熱源を調査しに行くことになった。
最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!
もし、ちょっとでも「面白いじゃん!」と思っていただけたら、 ↓の【★★★★★】を、ポチっと押して応援していただけると、作者が、本気で泣いて喜びます…!
ブックマークも、ぜひぜひ、よろしくお願いします!
また次回、お会いできるのを楽しみにしています!




