第三十四話:アッシュランドへの誘い
グラスランドは今日も穏やかだ。俺は川縁でアダマンタイト外骨格の調子を確かめながらのんびり過ごしていた。
ガシャシャシャシャ!
6本の魔導歩脚と自身の2本の歩脚を完璧に同調して操れるようになるまでかなりの時間がかかったが、
今はこの通り超高速反復横移動が出来るようになった。
《なんで反復横移動を極めるためだけに練習してるのよ……》
シグルド君やジョシュア君、スケさんカクさんを相手の模擬戦もちょくちょくやっている。
4人とも砕いてもシオンが直してくれるので容赦なく挟んだり、殴ったり、キャビテーションできるので便利だ。
「毎回砕かれながら思うのですが、テッペイさんにはもう敵がいないのではないでしょうか……」
シグルド君が伏目がちにこぼした。
「いやシグルド君。世界は広い。このアダマンタイトにも弱点があるかもしれん。完全無敵の外骨格を得るまで俺の探求に終わりはないのだ」
「しかし私の所見で言わせていただきますと、もう魔王様よりも強いような……」
「魔王か……しょっちゅう名前を聞く割には影も形もないな」
「テッペイさんと違って随分と怠惰ですからね」
「サボって生活できるならそれはそれで羨ましいことだな」
「テッペイはグータラできないタイプじゃろ」
バルーン状態のドラミナがふよふよ近づいてきた。
「ドラミナはグータラ適性が高すぎるな。少しは動いたらどうだ?」
「妾が動くと借金が増えるって止めてるのはテッペイなのじゃ。それに骨どもじゃ準備運動にもならないのじゃ」
「はあ、我々も魔王軍だと相当強い方だったんですけどねえ……」
シグルド君はがっくりと肩を落としていた。
「シグルド君は優秀だよ!それなりに強いしお茶は入れられるし、手先も器用なんだから!」
話を聞いていたシオンがシグルド君を励ましていた。
そんな日常を過ごしていた俺達だったが、そこにグラスランドのギルドの職員モニカがやってきた。
「テッペイさーん!今日も外骨格が立派ですね」
「ん?仕事の依頼か?直接来るのは珍しいな」
「いえ、グラスランドのギルドは今日もテッペイさんが受けるような荒っぽい依頼はありません!今日はお手紙を届けに来たんです。ついでに様子を見に来ちゃいました」
「相変わらずギルドは暇なんだな。それで手紙というのは?」
「あ、お手紙なんですけど実はテッペイさん宛じゃなくてドラミナさん宛です」
「なんだ、ドラミナ宛か。おーいドラミナー」
ふよふよとドラミナがやってくる。
「なんじゃー?」
「手紙だそうだ」
「おー、モニカではないか!また一緒にスイーツ巡りするのじゃ!」
「こないだは食べ過ぎてしまったのでしばらくは遠慮しておきます。はい!お手紙ですよ!」
「ん?これは……アッシュランドの母上からじゃな」
「ドラミナは家族が無事なのか」
「元気溌剌のはずじゃぞ。なんじゃろな」
ドラミナは丸くなった手で器用に手紙を開けて中身を読んだ。
「ふ~む?」
「どうした?差し支えなければ教えてくれ」
「父、危篤、至急帰宅されたしとあるのじゃ」
「大変じゃないですか!ドラミナさん一旦帰るんですか?」
モニカが心配そうに尋ねた。
「こんなの嘘っぱちに決まってるのじゃ!無視じゃ!無視!」
「ドラミナ。アッシュランドはなにがある?」
「火山と温泉とあとじゃなんじゃろな?」
「良質な灰があるわよ~。重さを気にしなければツーバイフォーの改造に使えると思うわ~」
いつの間にかやってきたメルティが補足した。
「なにか凄い鉱石とか生物とかいないのか?」
「大した奴はいないと思うのじゃ。一般人はワイバーンが大変かもしれんのじゃ」
「なるほど。モニカなにかアッシュランドに運び込みたい物資とかはないのか?」
「ああ、グラスランドから運び込みたいものはないですけどハイランドが熱魔石の原料のパイロサンドをアッシュランドから運んで欲しいってセニアが言ってましたよ」
「ほう、幾らになりそうだ?」
「そうですね、1トンで100万ゴルドぐらいだと思います」
「メルティ、残金はいくらだ?」
「30万ゴルドはあるわよ~」
「800万くらいあったはずだが?」
「ドラミナちゃんの胃袋に消えたわ~」
「よし、説教も兼ねてドラミナの親に会いに行こう」
「なんでそうなるのじゃ!?」
納得のいかないドラミナを放っておいて俺たちはアッシュランドへ向かうことにした。
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