第三十二話:さらばサンドランド
ちょっと重くなったツーバイフォーで引くのが大変そうになっていたエンリケ君だったが、新しく仲間になったジョシュアの魔物使いスキルの強化によって素早くサンドランドに帰ってくることが出来た。魔物使いの巣切るって便利だったんだな。
「おお!勇士殿おかえりなさい!無事でよかったのですが、外骨格はどこへやったのですか?」
話の分かる門番が腰布一枚になっていた俺に質問を投げかけて来た。
「サンドワームにすり潰されてしまってな……いまはソフトシェル状態だ」
「そうなのですか、また良い外骨格が手に入るといいですね」
「王都に帰ったら新調する予定だ」
「そうなのですか、でも王都だと私は勇士殿の外骨格を纏った姿が見れませんね残念です」
「そうだな、動力が足りないだけだから形はサンドランドで組み上げるとしよう」
「本当ですか!楽しみにしてますね」
俺は話の分かる門番を軽く労うと上機嫌で街へと入っていった。
さて、外骨格を組み立てる前にあまり気が進まないが市長へ報告に行こう。
俺たちは市庁舎を訪れた。
「おお!おお!もう市庁舎の窓から帰還を見つめておりましたよ勇士殿!サンドワームは見事に退治されたのですな?」
やはりテンションの高すぎるマリオ市長が真っ先に駆け寄ってきた。
「ああ、これが証拠だ」
俺はサンドワームの牙製つるはしを掲げた。
「流石は勇士殿!我々にとってはどうしようもない災害であったサンドワームをなんとかしてしまうとは。本来サンドワームはマジックサンドを生産する我々人類には欠かせない存在なのですが、流通ルートを的確に潰す回遊をされてしまうともう退治するしかなかったので……」
「ああ、市長その回遊がおかしかった件なんだが、魔王軍の仕業だったんだ」
「なんと!?この不毛の地にも魔王軍の魔の手が来ていたのですか、それで魔王軍はどうなったのですか?」
「ジョシュア君説明を」
シオンの影から、ジョシュア君がぬっと姿を出す。
「はい、俺がサンドワームを魔物使いのスキルで操っていたんです」
「魔王軍のスケルトンがなぜご一緒に!?」
市長の困惑はもっともだった。
「元は普通の魔族だったんだが俺たちがスケルトンにして再雇用したんだ。もう安全だから気を揉むことはないぞ」
「おお、勇士殿のカリスマは魔王軍すら屈服させるのですね」
「いや、やったのはシオンだが……」
「サンドワームの異常だけでなくそれを裏で操ってる魔王軍も倒してしまうとは、もはや勇士殿を褒め称える言葉が私にはありません!」
「それで、マジックサンドの流通はもう大丈夫そうなのか?」
「はい、サンドワームが邪魔をしなくなった今、すぐにでも運送を再開できるでしょう、ですが第一便は勇者殿の高速輸送を頼りたく……」
「王都への運送か?報酬は?」
「あ、はい街を救ってもらった分も含めて2トン輸送で300万ゴルドで如何でしょうか?」
「十分だ、しっかりマジックサンドを送り届けよう」
「何から何までありがとうございます勇士殿!街の中央広場にはアダマンタイト製の像を建立したく、どのような姿をかたどるのが良いでしょうか?」
「いや像とか建てなくてもいいんだが……」
「そうはいきません、今後もし街のものが辛いとき心の支えとなるものが必要なのです!是非!是非!」
市長は俺の両手を握ってものすごい輝く目で訴えて来た。
「あ、ああ。わかったそれではこれから作る新しい外骨格の姿で頼む」
「おお!新しいお姿ですね!楽しみにしております!」
「じゃ、じゃあ俺は輸送用のマジックサンドを受け取ってくるから」
そう言うと俺は一刻も早く市長から離れるために素早く市庁舎を後にした。
《テッペイも市長の前では逃げ出すのね……》
「市長のテンション相変わらず凄かったよね」
「テッペイが困惑する姿はめずらしいのじゃ」
「おほん!」
俺は一つ咳ばらいをしてメルティに話しかける。
「メルティ動力源がないがここでアダマンタイト魔導外装を組み立てられるか?」
「ツーバイフォーALCに機材は積んであるから楽勝よ~」
「それはよかった。素早く組み立てて話の分かる門番に見せたらとっととサンドランドから引きあげよう。俺はドラミナとマジックサンド取りに行ってくるから頼んだぞ」
「はあ~い。それじゃあシオンちゃんいつも通りスケさん、カクさんを借りるわね」
「ああ、シグルド君とジョシュア君もつけてやるぞ!私はエンリケ君を磨いてるから」
各々自分のやることを決め作業に取り掛かった。
俺たちがマジックサンドをツーバイフォーに積み終わったとき外には漆黒の外骨格が既に置いてあった。
「おお!歩脚が八本になっている!ハサミもサンドワームの牙製で素晴らしい翡翠色の輝きを放っている!」
「お疲れ様テッペイ、どうかしら~?外観は出来たわよ~」
「うむ、素晴らしいぞメルティ!もう装着できるのか?」
「歩脚が動作しないからただのデッドウェイトよ~?」
「高速移動しなければ大丈夫そうだな。話の分かる門番に見せに行こう」
俺はガチャガチャとアダマンタイト外骨格を身にまとう。
装甲の内側はサンドワームの外皮で伸縮性があり実にフィット感がある。
少し食べられた時のことを思い出すことだけが玉に瑕だが。
外骨格を纏い終えると俺は話の分かる門番へ会いに行った。
「新しい外骨格が出来たぞ!」
「うわ!勇士殿!漆黒のカニですか?爪はこれはサンドワームの牙ですか?凄いですね!神々しいです!」
やはり話の分かる門番のリアクションは素晴らしい。
「まだ未完成なので完成させるために俺はこれから王都に戻る。短い間だったがお前のことは忘れないぞ」
「私も勇士殿の活躍とお姿は忘れませんお元気で!」
俺たちは市長にはお披露目せずそのままサンドランドから撤収した。
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テッペイたちがサンドランドを発ってから数日。勇者カイトがサンドランドを訪れていた。
「魔王軍の魔物使いがサンドワームを操って、マジックサンドの流通を止めてるって情報を得て来たんだけど、なんだか賑やかだな……」
カイトは広場まで行くと巨大なアダマンタイトに足場が組まれていた。
「すいませんこれは何をしているのでしょうか?」
カイトが訊ねると一人の職人が朗らかに応えた。
「ああ、サンドランドの危機を救ってくれた、ハサミの勇士様の像を市長に作れと言われましてね!いやあ俺たち職人も大口の仕事で気合が入っているんですよ!」
「ハサミの勇士……もしかしてサンドワームでもう困っていない?」
「ええ。このアダマンタイトも勇士様たちが譲ってくれたサンドワームの牙のつるはしで掘ったんですよ!凄いですよね!」
「ああ、またテッペイさんに先を越された……せっかく身に付けた新技、収束魔導光斬の使いどころが……」
カイトは少しがっかりするものの、それでも街が救われたのは良いことだと思い、サンドランドを一巡りしたらまた旅立とうと思うのであった。
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