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第三十話:思ったよりでかいな

 俺たちは街の人たちに道を聞き市庁舎にやってきた、サンドランドの運営と市長の自宅が一体になってるらしい。


 ここも立派なALC建築で入り口の両脇にはハイランドで見た見覚えのあるカニの勇士像が建っていた。


「なんだか嫌な予感がするのだが……」


「テッペイの像がこんな遠くにも置いてあるんじゃなあ」


「早く入ろうよ!」


 シオンに促されて俺たちは市庁舎へと入った。


「おお……おお!開祖よ!あなたの予言は正しかった!ハイランドでの活躍、王都からの書簡、そして弟からの報告を聞いていたが実際にこの目にするとなんと神々しいことか……」


 妙にテンションの高いヨッティー町長そっくりな人が大仰に感激しながらこちらに向かってきた。


「ええと、市長か?」


「はい!このサンドランドを代々まとめております!マリオ・クライストです!」


「クライスト……」


「クライスト教創始者の予言者クライストは私の祖先です!」


「ヨッティー町長とは何か関係が?」


「あれは弟のルイージです」


 俺の頭の中になぜか配管工の兄弟が思い浮かんだがすぐにかき消した。


「それで俺たちは今からサンドワームの討伐とアダマンタイトの採掘に向かいたいのだが」


「やはり!予言のとおり我らが苦難に襲われてる時に救いに来てくれたのですね!王都から採掘権のことは聞いております!何の憂いもなくサンドワーム討伐に向かってください!」


「あ、ああ、仕事が早くて助かる」


 俺たちは許可が通ってることを確認し終えサンドワーム討伐に向かうことにした。


「神よ、祖先よ、ありがとうございます!」


 市長は俺たちが立ち去るときも感極まっていた。


《あそこまで崇拝されるとなんだか当事者の私も引くわね……》


「しまった、市長の勢いが凄すぎて、サンドワームがどこに出るか聞きそびれたな……」


「それは、バーベルにでも聞けばいいじゃないかしら~門までの通り道だし~」


 俺たちはツーバイフォーに向かう道すがらバーベルハウスに寄り現在のサンドワームの回遊地図を書いてもらった。


 バーベルはなぜか泣きながら地図を書いていたが、メルティは横でニコニコしていた。


 場所の確認を済ませた俺たちは街から出立した。


 ズサササササ。


 快調に走るツーバイフォーであったが数分ほどしたところで地響きが聞こえて来た。


 ゴゴゴゴゴゴ。


「お?サンドワームか?」


 俺は走りながら周囲を見渡すとこちらに向かってくる巨大な砂の盛り上がりが見えた。


「まだ結構な距離があるのにあの大きさか、思ったよりでかいな?」


 このままではツーバイフォーごと粉砕されてしまうかもしれん。


「エンリケ君!ここからは俺が行くからツーバイフォーはワームから逃げてくれ!」


 がっしりエンリケ君は頷くとツーバイフォーの進路を変更した。


「テッペイ待つのじゃ~」


 ツーバイフォーからダルマが転げ降りて来た。ダルマじゃないドラミナだ。


 パタパタと羽で飛んでいるのでやはりバルーンか?


 そんなどうでもいいことを考えてるうちにみるみるサンドワームらしき砂の盛り上がりは接近してきていた。



 ズゴゴゴゴ。


 砂の盛り上がりから巨大な口が見えた。すべて内側に鋭い牙が生えそろっている。たべられたらすり下ろされそうだ。


「ブレスを食らうのじゃ~」


 ドラミナは高く羽ばたくと口からブレスというよりはほぼ熱線をサンドワームに吐き掛けた。


 ズオオオオオオ。


 サンドワームの硬い表皮に少し焦げ目がついたが無事だった。デカすぎて焼ききれないのかもしれない。


「全然だめなのじゃ!テッペイ頑張るのじゃ!」


 そういうとブレスを吐いてスマートになったドラミナはツーバイフォーのほうへ飛んで行った。


 流石の俺もこの事態には少し困っていた。


「ドラミナのブレスでなんともないとは外部からの攻撃は効きそうもないな」


 俺は間に合わせのハサミに心許なさを感じながらあの機能を解禁することにした。


「死骸の再利用がしにくくなるからなるべく使いたくないんだがな」


 俺は外骨格の全身に魔力を流し毒ミスト機能をオンにした。


 プシュー!


 俺の体が毒々しい霧に見る見るうちに包まれていく。サンドワームに確実に吸わせるために俺はあえて正面へと高速移動した。


 ズゴゴゴゴゴゴ。


 ギリギリで毒を吸わせて離脱するつもりだったが遠近感が狂うほどサンドワームがデカかったので距離感を間違え俺はサンドワームに食われた。


《ちょっと!なにやってるのよ!!》


 見る見るうちに間に合わせのカニ外骨格はかみ砕かれ、俺もすりおろしリンゴになり飲み込まれた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「へ?テッペイが食べられたのじゃ!」


 遠くから見ていたドラミナは流石に心配になりサンドワームの下に再び飛んでいく。


 そのとき今まで圧倒的に砂をかき分け進んでいたサンドワームがのたうち回り始めた。


 ビターーーン!ビターーン!


「うわ!凄い苦しみ様なのじゃ!」


 グロロロ~!


 のたうち回っていたサンドワームは口から様々なものを吐き出した。


 ビチャ!


 そこには全裸のテッペイもいた。


「おお!テッペイ形が残っておるのじゃ!」


 テッペイは都合よく一緒に吐き出されていた愛用の腰布を巻きなおし、サンドワームに向き直っていた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「どうやら効いたようだな。俺の『毒フルコース体液氷結毒を添えて』が」


 無敵と思われたサンドワームは既に動かなくなっていたその体は表面がうっすらと凍り付いていた。


「テッペイすごいのじゃ!さすがの頑丈さなのじゃ!」


 いつの間にか戻ってきていたドラミナが感心していた。


「いや見てのとおり一度すりおろされて再生しただけだ、奴の牙の強度。実に素晴らしい」


《食べられた感想が相手の牙を褒めるのおかしいですよ!》


「ああ、ドラミナ。ツーバイフォーにもう安全だって伝えてきてくれ」


「わかったのじゃ!」


 スイーっとドラミナは飛んでいき、すぐにツーバイフォーはやってきた。


「氷結毒を使ったのね~。は~、凄いわ~。ハイランドの高級品をテッペイの体を通して錬成するとこんなに凶悪になるのね~」


 メルティは吐き出されたサンドワームの体液を採集しながら非常に満足げだった。


「やっぱこいつ骨ないよ!つまらないよ!」


 シオンはめちゃくちゃ不機嫌だった。


 「メルティ。サンドワームの外皮はどうだ?アダマンタイトの内側素材として使えそうか?」


「そうね~これだけ頑丈で耐火性があるのに柔軟さが凄いわね~ブニブニね~継ぎ目にいいと思うわ~」


「肉はどうだ?毒まみれで無理そうか?」


「そうねえ、わたしとテッペイ以外は即死すると思うわね~」


「砂に返すしかないか」


 カクさんスケさん、シグルド君、ドラミナを総動員して俺たちはサンドワームの牙を抜き、外皮を剥がし、肉体は砂に埋めた。


「よし、それじゃあ、巣穴に行くか。みんなつるはしの用意は良いな?」


「万端です」


 シグルド君が代表して応え、俺たちはサンドワームの巣へと向かった。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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