第二十八話:潤いは大切だ
ヨッティーでの準備は順調に進んでいた。
ツーバイフォーへの冷魔石設置、そして俺の新しい外骨格の作成どちらも終わりが見えて来た。
「流石本物のカニの甲殻だけあって質感は過去最高だな……」
「大きな甲殻をテッペイサイズに切り貼りするの大変だったのよ~」
メルティが何らかの溶解液を片手に愚痴っている。
「でもこの体中にミストを吹きかける配管システムの構築は楽しかったわ~。毒も混ぜて噴霧できるようにしてあるわよ~」
「その機能は別に要望してないのだが?」
「それから大きいほうのハサミも作っておいたわよ~、ミスリル塊より脆いからハイパーキャビテーションは禁止よ~」
「まあ砂漠で行動するための間に合わせとしては上出来だろう。見た目は過去最高だしな」
「テッペイの評価はよくわからんのじゃ」
デカいカニ身を食べながらドラミナは首を傾げていた。
「このキチン質の美しい輝きが分からんとは。カニの身の美味しさが分かるだけましか」
「疑問なんだけどテッペイて自称カニなんでしょ?カニ食べるの嫌だったりしないの?」
シオンは港町に行くと聞いてから気になってたことを聞いた。
「知らんのか?陸棲のカニは脆くなった同族を容赦なく食べる。食べられるカニは自然の敗者なのだ」
「カニ界も厳しんだな~」
《シオンちゃん!そこなんで納得するんですか!もう少し倫理的にツッコミを入れて!》
そうこうしてるうちに完成したので新外骨格を纏い試運転する。ミストの源は俺の口に水をためる魔法だ。
配管を口にくわえてプーッと吹くと全身に水が回り、プシューっとミストとして放出される仕組みだ。
毒を混ぜるときは魔力を流すのだが、そうするとブスッと全身に針が刺さって配管に毒が混ざる方式だ。
メルティ特製加工で腐食毒を散布しても配管が溶けたりはしないらしい……がなるべく使いたくないものである。
「ふ、やはり素晴らしい出来だ。外骨格があると安心するな……強度不足なのが非常に惜しい」
「テッペイ、ツーバイフォーの改装もばっちりだからもう出発できるわよ~。ところで毒噴射しシステムは試した~?」
「町中で試したらバイオハザードどころじゃないので試さないぞ」
「ぶっつけ本番なわけね~」
「もう出発するのじゃ?」
カニの食べ過ぎで丸くなってしまったドラミナがのしのしとやってくる。
「ドラミナはいつも食べ過ぎだよ」
「カロリーの保存じゃ!シオンは食べなさすぎじゃ」
「シオン様は死霊ですからね……食事は半分娯楽みたいなものです」
シグルド君が今日も甲斐甲斐しくシオンにお茶を入れながら言った。
「このパーティの食費はテッペイとドラミナで9割よ~」
「今回は無料で取れた海産物で助かったな」
「おっきくて満足感高かったのじゃ!」
「さて、そろそろ出発するか。町長に一応挨拶していこう」
俺たちは町長の家に向かい、出立を伝えに行った。
「おお!ハサミの勇士様、もう発たれますか。サンドランドにはもう連絡して置いたので、いきなり銃撃するなどはないはずですぞ」
「ふむ、連絡網がしっかりしてるのだな……」
「では、ハサミの勇士様。健闘を祈っております」
「ああ、ヨッティーも海産物が大漁になるといいな」
「勇士様にそう言ってもらえるのならヨッティーの発展は確実でしょう!ハハハ」
上機嫌な町長に別れを告げ俺たちはヨッティーを出発した。
漁師たちが元気に見送ってくれた。なぜか感涙している人もいたのが理解できないが、クライスト教徒だろうか。いつも大げさな人たちだよな。
ズドドドドド。
改造されたツーバイフォーALCは快適に砂漠を爆走していた。
エンリケ君の足も設置面積が増えて砂漠をしっかり踏みしめられているようだ。
俺はというと、外骨格のミスト機能でしっかり潤いを確保できていたが砂漠では歩きづらかった。早く脚を増やしたいものだ。
そんな未来の新外骨格に思いをはせていると、遠目に白い建物が立ち並ぶ街が見えて来た。
ヨッティーに比べるとずいぶんファンタジーぽく無い街並みである。どちらかというとツーバイフォーALCにそっくりなような……
「あれがサンドランドか、妙に角ばってるな」
ヨッティー町長が言ってたように、近づいても弾丸や矢の雨、迎撃魔法などは飛んでこなかった。
「よ、ようこそ!サンドランドへ!ハサミの勇士様一行でよろしいでしょうか?」
「まあ、最近はそう呼ばれることが多いな」
「後ろの巨大な要塞は聞いたとおりだったのですが、勇士様がここまでカニっぽいとは思わなかったので、確認をさせてもらいました」
「ほお、かなりカニに見えるのか?」
「はい、ヨッティーからの輸入でしか見たことないですがかなりカニだと思います」
「そうか」
俺はこの門番への好感度を爆上げした。
「ではツーバイフォー、この要塞だが入り口に泊めておくがいいな?」
「はい!しっかり不審者が来ないよう見張っておきます!」
「まあ悪さする奴はエンリケ君……巨大なスケルトンが処理するからあまり気にしなくていいぞ」
「は、はあ了解しました」
門番は少しエンリケ君を見て困惑しながら答えた。
ツーバイフォーからドラミナたちが降りてくる。案の定ドラミナは詰まったので両開きのドア両方を開いて降りた。
「なんでサンドランドはこんなにALCが普及してるのかしら~」
メルティはサンドランドの街並みを見て開口一番言った。
「200年も経ってるから割と普及してるんじゃないの?」
シオンがもっともらしいことを言った。
「なんかツーバイフォーよりすごく大きいALC?の建物が建ってるのじゃ!」
ドラミナが見つけた建物にはバーベルハウスという文字と四角いマスコットが陽気に挨拶してる絵が掲げられていた。
「バーベル……ハウスですって~。テッペイ!あの建物に乗り込むわよ~!」
メルティがスタスタとバーベルハウスへと向かって行ってしまった。
俺はなにかめんどくさそうなことになりそうだなと思いながらメルティを追った。
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