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第二十七話:ちょうどいいところに!

 俺たちはなんとか無事にヨッティーに入ることが出来た。


「なんか寂れてるのじゃ」


「おかしいわね~ここは結構発展してるはずだったんだけど~」


「あのー本当にハサミの勇士様御一行なのでしょうか?どう見ても魔王軍にしか見えないんですけど……」


 町民がツーバイフォーから降りて来た仲間たちを見て訝しげにしていた。


 暫くして町長が走ってきた。


「おお!ハイランドから伝わっている通りの陣容!よくいらしてくださいました!実は今ヨッティーは大きな危機に見舞われているのです!」


「俺たちは砂漠へ向かう準備をしに立ち寄っただけなのだが?」


「この寂れようを見てください!今は勇士様たちを援助する準備もありません!」


「冷魔石が買えればいいだけなのだがな」


「そこをなんとか!巨大なカニの化け物に海上封鎖されてにっちもさっちもいかないのです!」


「巨大なカニ!?ちょうどいいところに!」


「え?」


「今の俺を見てわかる通り外骨格がないこのまま砂漠に行くのは心許なかったのでないい外骨格が仕入れれそうだ」


「また生物加工をするの~面倒なのよね~」


「メルティ!今回は氷結毒を試そう!」


「使いどころを探してたところなのよ~さあカニ退治にいきましょう~」


「大きいのは大味というけど実入りは良さそうじゃよな?」


「でもさー私たち海じゃどうしようもないよ?」


「俺はカニだから問題ないぞ」


「妾は飛べるのじゃ」


「わたしも飛べるわね~」


「私だけダメ見たいじゃん!」


「まあまあ、シオン様、海辺の魔物ごときに我々まで行くのは過剰戦力というものですよ」


「カニとしての格の違いを見せてやるとしよう」


「テッペイが闘技会より明らかにやる気があるのじゃ」


「ツーバイフォーを海仕様に改造すればシグルド君も戦えるんじゃないの~?」


「そんなことできるの!?」


「どうせ砂漠に行くならソリみたいにしたほうがいいから船型に改修しましょ~」


「町長、乗り物を改造したいのだが材料はあるか?」


「いや今のヨッティーのは砂ぐらいしか……」


「サンドランドの砂があればALCが作れるから十分よ~」


「ALCってなんじゃ?」


「軽くて硬くて、熱を遮断できる便利な板材よ~200年前にわたしが開発したわ~」


《軽量気泡コンクリートがなんでファンタジーの世界にあるのよ!ツーバイフォーと言い何なのよこの毒妖精!》


「ヨッティーの砂がお役に立つならどれだけでもお使いください!」


「ドラミナちゃんはちょっと手伝ってね~結構火力がいるのよ~」


「ドラミナを使うなら町の外でやれよ。町を壊しかねんからな」


「テッペイ。妾を物扱いは止めてほしいのじゃ!」


「加減を覚えたら考えてやろう」


「鎧を砕いたの絶対根に持ってるのじゃ……」


「ツーバイフォーを改造するならちょっとエンリケ君も改造しなきゃ」


 シオンが影からごそごそ骨を見繕っていた。


 ツーバイフォーの改修をしていたら日が暮れてしまった。


「ふむ、巨大カニ退治は明日だな」


「夜だと何も見えないですからね」


 《シグルド君はもうそもそも眼がないですよね?炎が点ってるだけですよね?》


「お腹が空いたのじゃ~海鮮が食べたいのじゃ~」


「海が封鎖されてるって言ってたから海鮮は無理じゃないの?」


 シオンがエンリケ君の足にかんじきみたいに骨をつけながら言った。


「ドラミナちゃんの焼成作業はもう終わったからお夕飯食べに行っていいわよ~」


「メルティはどうするのじゃ?」


「わたしは改修を完成させるのを優先するわ~。カクさんとスケさんは借りたままでいいわよね~?」


「ああ、二人は疲れないから無限に使ってくれていいよ!」


 カクさんとスケさんは少しカタカタと抗議してるような気がしたがメルティを手伝うようだ。


「じゃあ何か食べてくるのじゃ~」


 俺たちは町にある酒場に来た。やはり寂れている。


「マスターここで今食べれるものはなんだ?」


「今は陸路のものだけですね。町の収入が減っているので干し肉とかそういう保存食がメインですけど」


「そうかじゃあそれを出せるだけ出してくれ」


「えっ?」


「明日には海の封鎖も解けるから大丈夫だ」


「そうじゃそうじゃ、カニの化け物なんて本物のイカレたカニの前には無力じゃ!」


「それはちょっとドラミナ酷くない?」


「シオン様の言う通りです。テッペイ氏は突拍子もないですがイカレてはいません」


「目が燃えてる骨の人は別に食べないよな?」


 マスターはちょっと混乱していた。


 俺たちは酒場の保存食を食べつくし、町の浜辺で一晩を明かした。俺以外は宿に泊まった。


 爽やかな朝だった。俺は砂からズボりと出ると体を伸ばして潮風を体に浴びた。


《なんで砂に埋まってるのよ!爽やかさゼロよ!》


「メルティ、改修は終わったのか?」


「バッチリよ~これが砂の海も普通の海も行けるツーバイフォーALCカスタムよ~」


 真四角だった車体の下は船底のようになり、車輪からシャキンとデコボコが出て水車のような形に変形するようになっていた。また壁面はALCに換装されており見るからに頑丈そうになっていた。


「これは凄いな。エンリケ君がバタ足で引っ張るのか?」


「熱魔石から動力を取って水車も回転するわよ~」


「なるほど、準備万端だな全員が揃ったら出発するとしよう」


 暫くするとあくびをするドラミナたちがやってきた。


「凄いのじゃ!船じゃ!」


「これだけ足場があれば私やスケさんたちも攻撃できますね」


 シグルド君はうんうんと頷きながら背中の魔剣を撫でていた。


「私は船内でおとなしくしてるからみんな頑張ってね!」


 シオンは引きこもる気満々だった。


「一応乗るんじゃな」


「だって骨たちに何かあったら困るでしょ?」


「それはそうじゃな」


 全員ツーバイフォーALCに乗り込むと俺たちはカニ退治に出かけた。


 エンリケ君が器用にツーバイフォーをバタ足で引っ張っていると、海中からなにかが盛り上がってきた。


『愚かな人間ども懲りずに船を出すとはな……ん?魔王軍か?』


「いや違うお前を倒しに来た。見るからにちょうどよさそうなキチン質の甲殻だな。素晴らしい。そこまでの甲殻に育てるには色々な苦労もあっただろう俺がきちんと再利用させてもらうから大人しく成仏してくれ」


『いきなりわけのわからないことをペラペラと。魔王軍でないならば容赦はせん沈むがいい!』


 巨大カニはハサミを容赦なく振り下ろそうとした……がもう斬られていた。


「随分ともろい。これではテッペイ氏の外骨格としては強度が足らないのでは?」


 シグルド君が獄炎の魔剣を振り払って言った。


「まあ臨時の外骨格だからなそれにメルティがいい感じで強度を上げてくれるだろう」


『お、俺のハサミがぁ!その炎お前シグルド!王都に行ったはずなのになぜ裏切っている!!』


「私にカニの知り合いはテッペイ氏だけですがまあ魔王軍ではそこそこ有名だったので勝手に知っている者はいたのかもしれませんね。見てのとおり私は今スケルトンとしてテッペイ氏一行に仕えているのですよ」


「シグルド君実力者だったんだなあ」


「テッペイ氏に比べたら塵芥のようなものです」


「テッペイもうカニを吹き飛ばしてもいいのじゃ?」


「だめだ。ドラミナがやると外骨格の材料がなくなる。ここは俺がとどめを刺そう」


「毎回働かせてくれないのじゃ~」


 俺はドラミナの嘆きを無視し、ツーバイフォーから飛び上がると小さいハサミを構え、きりもみ回転して巨大ガニの脳天に突撃した。


 ベキキキ!


『俺の頭がぁ』


「む!ドラミナ!カニが沈む!お前の力を使う時だ!」


「いつも荷物持ちなのじゃ!」


 俺たちはカニをあっさり倒すとヨッティーに戻った。


「町長!カニを倒してきたぞ!」


 ズシーン。


「重かったのじゃ……」


 俺たちは退治したカニの死体を町の入り口に置いた。


「おお!これはまさに海を封鎖していた巨大ガニ!まさかさっき出発したと思ったらもう討伐するとは。流石ハサミの勇士様だ!」


「すげえ、あのデカいカニを本当に仕留めやがった。町長の嵌ってる宗教もあながち役立たずじゃなかったのかもしれねえ」


「これで漁に出れるな!」


「海上輸送も再開できるぞ!」


 町の人々の歓声が響いた。


「さて町長、冷魔石譲ってもらえるな?」


「え?ええ!勿論ですとも!必要な分持って行ってください!」


 こうして俺たちはヨッティーで予想外の寄り道をしたが、砂漠へ向かう準備を着々と進めることが出来たのだった。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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