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第二十四話:勇者対魔剣士

 東ブロックの決勝が終わった後、すぐに西ブロックの決勝が行われようとしていた。


「西ブロックの決勝は面白いことになりそうだな。姉上達の推薦闘士同士の戦いのようだ」


 シャルロッテの言葉にレオナルドが答える。


「シルフィール様が勇者カイト、シャルローネ様が魔剣士シグルドですね。どちらも圧倒的な実力で勝ち上がってきましたね」


「そうだな、今まで圧勝してきたテッペイも決勝は苦戦するかもしれんな」


「テッペイが負けるパターンなんてついやっちゃった時だけよ~」


「手加減ミスには気を付けてほしいのじゃ!」


「面白い骨ないから飽きてきたなぁ」


 3人は好き放題なことを言っていた。


「面白い信頼のされ方だな、さてどうなるやら」


 シャルロッテは観戦に集中することにした。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さあ、西ブロックの決勝だぁ!まずはここ最近王都で活躍することで知名度を上げてきた、女神に選ばれし勇者カイトだぁ!」


 ウオオオオ!


「勇者頑張れ!」


「応援してるぞ!」


 観客席からの声援がカイトに届く。


「みんな僕を応援してくれてるんだ。いい結果をだしたいな」


 カイトは観客に手を振りながら闘技場の中央へと進んでいった。


「勇者に対するのは突如やってきた白銀の魔剣士シグルドだぁ!漆黒の炎を操る姿は闘技会で観客の心を鷲掴みにしたぞぉ!奇しくも、第一王女様と第二王女様がそれぞれ推薦した闘士だ!これはいろんな意味で熱い戦いになるぞぉ!」


「シグルド様ぁ!頑張ってー」


「勇者様も頑張ってほしいけど、私はシグルド様推しよー」


 シグルドの応援の声は黄色い声が多かった。


 シグルドも声援に応えながら闘技場の中央へと進んだ。


「勇者カイトか……悪いがここで負けてもらうぞ。闘技会で結果を出すことが私には重要なのでな」


「君がどれくらいの実力かはわからないけど、僕は簡単に負けるつもりはない。シルフィール様の信頼に応えるためにも」


「苦しみが長引くだけだと思うがな……」


 短い言葉を交わした両者はそれぞれ武器を構えた。カイトは双剣をシグルドは幅広の長剣を。


 ジャーーーン。


 闘技開始の銅鑼が鳴った。


 先に動いたのはシグルドだった。剣に手をかざし、呪文を唱える。


「獄炎の抱擁。ブレイズインフェルノ!」


 シグルドの持つ剣に漆黒の炎が点る。


「来る!」


 カイトはシグルドの攻撃に備える。漆黒の炎剣がカイトに振り下ろされる。


 キィン!


 カイトは双剣の片方で受ける。


「重い!」


 自身の体か沈み込むような感覚をカイトは感じた。


 ギリリ。


 シグルドはすぐに離れずに剣を押し込むようにカイトの剣に押し当てていた。


 みるみる漆黒の炎が剣を伝ってカイトに襲い掛かろうとしていた。


 カイトは危険を感じ全力で剣を押し返し距離を取った。


「最低限の勘は働くようだな」


「すーはー、今までの相手とは格が違う……それにこの邪悪な感じはなんだ?」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 貴賓席の一角。


「魔剣士シグルド……あれほどの使い手がいきなり現れるものなのか?レオナルド、あやつの経歴はわかっているのか?」


「はい、姫様、主にアッシュランドで活躍していた冒険者のようです」


「アッシュランドか……」


「あんな奴聞いたことないのじゃ」


「ドラミナちゃんはアッシュランド出身だけどすぐ出てったから詳しくないでしょ~」


「それもそうじゃな!」


「うーん、メルティあいつの骨、人間じゃないと思うんだけど、後で確認に行こうよ」


「シオンちゃんの骨センサーが反応してるなら面白いかもしれないわね~」


「下姉上の推薦闘士だ無茶なことはしないでくれよ?」


 シャルロッテが二人にくぎを刺す。


「うん、だいじょうぶ。へんなことしないから」


「そうよね~悪くもない人に何かしたりはしないわよ~」


「絶対なんかするのじゃ」


「本当に無茶は止めてくださいよ!」


 レオナルドは必死だった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 闘技場では激しい剣戟が繰り広げられていた。


 シグルドが斬撃を放ち、カイトが片方で受け止め空いてる剣で反撃を試みる。


 そんなやり取りが何度も続いていた。


「少し飽きて来たな勇者よ」


 シグルドは獄炎の剣を払いながら、カイトに語り掛ける。


「確かに膠着状態だ、でも君の実力は分かった」


 そう言うとカイトは全身から黄金の魔力を放出する。


「君の技は魔族の技だ、感覚で分かる。だから聖気には弱い。次で決着をつける」


 カイトは双剣を十字に構え力を練る。


「舐められたものだな、まあいい、殺してしまうかもしれんが、勇者を討ち取ったとなれば悪くないだろう」


 シグルドは剣だけでなく全身に獄炎を纏う。


 お互いの闘気が最大まで膨れ上がった。


「はああ!星爆嵐撃!」


「ダークネスエクスプロージョン!」


 カイトの星爆嵐撃、シグルドのダークネスエクスプロージョンがぶつかり合った。


 獄炎の爆発の中を聖なる光が何筋も閃く。


 ダークネスエクスプロージョンを突き破り、カイトがシグルドに迫る。


 怒涛の連撃が必殺の奥義を放って隙を見せていたシグルドの体に炸裂した。


「ゴハッ!バカな!聖剣の無い勇者に!」


 カイトの無数の斬撃が放ち終わると、シグルドは膝から崩れ落ちた。


 通用口から医療班がシグルドに駆け寄る。軽く診断が済むとカイトの勝利が告げられた。


「西ブロックを勝ち進んだのは、勇者カイトだぁ!怒涛の連撃、鮮やかだったぞ!負けたシグルドも凄い使い手だった!さあこれで決勝のカードが決まったぞ!ハサミの勇士対勇者のカードだ!少しの休憩の後すぐ決勝が執り行われるぞ!見逃すなよ!」


 司会のアナウンスが済んだ時カイトは肩で息をしていた。


「ダークネスエクスプロージョン、完全には無効化できなかった……でもなんとか勝つことが出来てよかった。彼はおそらく魔族だった。なぜ闘技会に出てたのかは気になるけど、決勝に集中しよう」


 カイトは控室へと戻っていった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 シグルドは医務室を素早く抜け出し裏路地を歩いていた。


「細かく調べられたら、面倒だからな、まさか闘技大会に本物の勇者が現れるとは。それもあれほどの実力をつけて。王都での任務はまだ完全に失敗したわけではないが、このことは魔王様に報告せねば」


 シグルドが王都からひそやかに撤退しようとしていたその時であった。


「ねえ、あなた魔王軍でしょ?」


 後ろから冷たい女の声がした。シグルドが振り返るとそこには二人の女がいた、片方は死霊、もう片方は妖精のようだった。


「死霊?私以外にも派遣されていた魔王軍がいたのか」


「あ!やっぱり魔王軍だったよメルティ!ほらあれやって!あれ!」


 死霊の女が死霊似つかわしくないテンションで妖精に語り掛けていた、しかしメルティ……妖精……毒妖精!?


 だがシグルドがかの有名な毒妖精の事を思い出したときはもはや手遅れであった。


「から、だ、が、うご……かん……」


「やっぱメルティの毒は効果抜群だね!よーし骨にしちゃおう!」


 シグルドの意識はそこで一度途絶えた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 貴賓席。


「二人とももうすぐ決勝じゃのにどこへ行ってたんじゃ?」


「新しい骨の仕入れに行ってたんだよ!」


「裏路地に魔王軍がいたのよ~」


「なに!?王都の裏路地に魔王軍が?」


「あーシャルロッテ様心配しなくていいわよ~。一人だったしもうシオンちゃんが骨にしちゃったから」


「ああ!新しい骨のシグルド君だ!」


 そう言うと、シオンの影から目に獄炎が点ったスケルトンが現れた。


「あの、その名前もしやさっきまで闘技会にいた……」


 レオナルドは恐る恐る訊ねた。


「うん、そうだよ、魔族っぽいから後を付けてたんだけど医務室抜け出して裏路地でぼそぼそ言ってるから、話しかけたら魔王軍だったんだ!」


 シオンは終始テンションが高かった。


「いや、その我々はどうやってシャルローネ様にこの状況を説明すればいいんだ!」


 レオナルドは天を仰いだ。


「シグルド君に説明させればいいじゃない。ねえシグルド君」


『そうですね。私は魔王軍でした。しかし今はそのようなことも些末に思えます』


「骨がしゃべった!!」


 レオナルドはもう耐えきれず気絶した。


「なんとも面妖だが、これを下姉上様にみせればまあなんとかなるか?」


 流石のシャルロッテも困惑せざるを得なかった。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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