第二十三話:速さでカニ歩きに勝てるわけないだろ
控室に戻った俺は一人の男に声をかけられた。
「フ、ディアスを瞬殺したらしいな。俺も瞬殺だったがお前もなかなかやるようだな」
「次の相手か?」
「いや、だが勝ち進めば当たることになるのは間違いない。俺は王都最強の冒険者。紅の閃光リックだ。ディアスと同じと思ったら痛い目を見るぜ」
「ふむ、外骨格がないようだが。大丈夫か?」
「俺に鎧は必要ない。当たらなければどうという事はないからな」
「体は頑丈なほうか?」
「ん?もちろん鍛えてるから頑丈だと思うが」
「そうか」
俺は話を切り上げると、殴っても死にそうなリックと当たったらどうしようと考えていた。
「口数の少ない奴だ。まあ当たるのを楽しみにしてるぜ」
そういうとリックは離れていった。
その後2回戦、3回戦と俺は順調に勝ち上がっていった。
2回の戦いでいい感じの手加減を身に付けた俺はこれならリックと当たっても大丈夫だという自信を得ていた。
東ブロックの決勝は夕方からやるらしいのでとりあえず、貴賓席にいる仲間たちへ会いに行くことにした。
「テッペイお疲れ様~。急造品にしては外骨格がいい仕事してるわね~」
「メルティの材料加工技術のおかげでもあるな」
「敵が弱すぎるのじゃ~妾だったら余裕で優勝なのじゃ!」
「ドラミナに殴られたらここの骨たちじゃ耐えられないから初戦で失格だと思うよ」
「確かに手加減がかなり難しかったな。全力が出せないからフラストレーションがたまるかもしれん」
「妾のブレス禁止の気持ちがわかったのじゃ?」
「それとこれとは、話は別だ」
「なんでじゃ~」
「ハハハ。本当に賑やかな奴らだ。しかしテッペイ。凄腕だと確信していたがこうも容易く勝ち進むとはな。予想以上であった。斬りかからなくて正解だったな」
「流石の姫様も鎧を砕くようなパンチは耐えれないでしょうからね……」
「いやあの程度なら、なんとか強化魔法で耐えれるだろうが、あれで極限まで手加減してるらしいからな。敵でなくてよかったよ」
「次が東ブロックの決勝だそうだ」
「次の相手は紅の閃光かあいつは竜狩りの太刀を所持している。今までのように正面から受けるのは止めておいた方がいいと思うぞ」
「ほう。アイスドラゴンはドラゴンだから傷がつくかもしれないのか……まだ完璧な外骨格には硬度が足りなさそうだな」
「ハハハ!まだ足りないというならアダマンタイトでも取ってくるしかないな」
「それは買えるのか?」
「無理だな!あれはサンドワームの棲家でしか取れん。そんなものを採掘できる奴は現代にはおらんだろうよ」
「サンドワームか……」
「テッペイあれは骨が無いから私は会いたくないぞ!」
「サンドワームなら毒盛り放題じゃな~い?」
「砂漠は退屈なのじゃ~」
「フフフ、お前たちには過ぎた心配か。闘技大会が終わったらサンドワーム地帯への通行証を発行してやろう」
「ええ!?もしテッペイさん達がしくじって居住区にサンドワームが行ったらどうするんですか!?」
「それはない。余はテッペイ達の強さを確信している。もちろん異常さもな。どうせ行ってしまうなら無許可より把握してた方がよかろう?」
「確かに……」
レオナルドは納得したようだがゲッソリしていた。
「砂漠行きが決定してしまったのじゃ……王都にいるうちに美味しいものを食べておくのじゃ」
「お金は余分に出さないわよ~」
「なんでだよー!」
「酷いのじゃ~!」
そんなこんなでとりとめもない話をしながら俺は次の外骨格のデザインについて考えていた。
「テッペイ。試合の時間ではないか?」
「む、のんびりし過ぎたな。行ってくる」
俺はササさっと、スライド移動しながら闘技場へと向かった。
「さあ、東ブロックの決勝の時間だぁ!勝ち抜いてきたのは王都が誇る紅の閃光リック!そしてこの大会に大波乱をもたらした最強の硬度をもつハイランドのハサミの勇士!どちらが勝ってもおかしくない、これがブロック決勝というのが信じられない組み合わせとなりました!」
「登録シートを任せたのはよくなかったな、完全にハサミの勇士になってしまった……」
俺は実況の熱のこもった紹介を少し迷惑に思いながらも闘技場の中央に進んだ。
「やはり勝ち上がってきたな、だがお前の快進撃もここまでだ、俺のドラゴンハンティングの錆になるといい」
そういうとリックは細くも優美な長剣を構えた。
ジャーーーン。
闘技開始の銅鑼が鳴り響く。
シュピン!
リックの姿が赤い残像になった。
次の瞬間俺の右腕が宙に舞っていた。
「勝負あったな……」
リックは長剣についた血を払いゆっくりと残身した。
「結構速いな」
俺は切られた腕を何事もなく生やし、スライド移動で落ちた腕から右ハサミを回収してはめた。
「!?!?!?!?化け物か?」
「腕関節も頑丈に作ってあるはずなんだがな。流石は竜狩りの武器といったところか……やはりアダマンタイトが必要だな」
「わけのわからないことを、斬っても生えてくるというなら再生しなくなるまで四肢を切り落としてやる!」
シュピン!
またリックは紅い残像と化した……が、俺は真横に追いついた。
「速さでカニ歩きに勝てるわけないだろう」
俺はリックと等速で動きながら左ハサミでリックをがっちり掴んだ。
「殴ると死んでしまいそうだからな。優しく挟んで背骨を折らせてもらうぞ」
「ぐ、全く動けん。お、おいやめろ。」
ゴキッ。
「ぐああああ」
ボトッ。
俺はリックを闘技場にそのまま放した。
「な、何が起こったのでしょうか!?凄まじい速度でお互いが移動したと思ったら紅の閃光が地面にのたうち回っている!」
通用口から医療班が駆け寄ってくる。
医療班は首を横に振るとリックに治癒呪文をかけ担架に乗せて運んでいった。
「どうやらハサミの勇士の勝利のようです!なんというあっけない幕切れ!恐るべきハサミ!」
ザワザワ。
「こりゃ優勝はハサミの勇士じゃねえか?」
「でもちょっと怖くない?腕生えてたよ?」
「これが神に選ばれし勇士の奇跡なのですよ」
「ちょっとえぐ過ぎねえかな……敵対したらやばそうだから入信しようかな」
《確かに私が与えた能力だけど、神の奇跡って言われると反論したい!!》
色々言われているが俺は斬れた腕が猛毒なのを思い出し、急いで回収してシオンとメルティに処分してもらうことにした。
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