第二十二話:闘技大会に挑む
王都での日々が過ぎ闘技大会の日がやってきた。
「ついに闘技大会か……ハサミが唸るな」
「テッペイがやる気にあふれておるのじゃ!」
ドラミナは厳しいお小遣い制によって3日で瘦せていた。
「テッペイ、余の推薦闘士であるが、きちんと受け付けはしておくように」
「了解した」
「貴殿の優勝を期待しているぞ」
「任せておけ」
「私達は王女様が観覧席を用意してくれるらしいからそこで応援してるからな!」
「メルティもちゃんと呼んでおくのじゃ」
「では闘技場に案内しますね」
すっかり目にクマが出来たレオナルドが闘技場まで案内してくれるようだ。
《レオナルドさん。結局テッペイたちに順応できなかったんですね……》
「ここが闘技場です」
前世では映画などでしか見たことがない見事なコロシアムが建っていた。
「これは凄いな」
「はい、キングスレーでは代々武を重んじておりまして、この闘技場はその象徴です。それではこの先が受付ですのでテッペイさん頑張ってくださいね!」
そういってレオナルドは去っていった。貴賓席に行くのだろうか。
俺は受付に向かう。
カシャン。とりあえず誤解を防ぐようフェイスガードは開けておこう。
「なんだ、変な鎧を着てる奴がいるぞ」
「あんなずんぐり体系で動けるのかよ」
「まったくウケ狙いなら劇場でやってくれよ」
「手がハサミだぞ!戦えるのか?」
「まて!手がハサミだと?ハイランドのハサミの勇士では?」
「そういえば、アイスドラゴンぽい鎧だな」
なにやら周りが騒がしいがとっとと受付をしてしまおう。
「すまない、闘技大会出場の手続きをしたいのだが」
「はい!ああ!テッペイさんですね!特徴的な見た目なのですぐわかりました!」
「話が通ってるのか?」
「ええ、シャルロッテ様の推薦枠ですからね!間違いがあったら大変です。それでは東の控室へ向かってください!」
「あっちか」
俺は東の控室へと向かった。
「ハサミの勇士は東か、あっちには紅の閃光と漆黒の重戦車がいるブロックか運がねえ奴だぜ」
「それはどうかな?ハサミの勇士が噂通りのドラゴン狩りなら逆に相手をする方が可哀そうかもしれねえぜ」
「どっちにしろ今年は盛り上がりそうだな!」
「違いねえ」
長い廊下を歩き東の控室に着いた。
控室の中は屈強な男たちで溢れていた。その中でも特に二人の男が目立っていた。
片方は真紅の軽装に細い長剣を持った男だった。もう片方は大ぶりのバトルアックスをもった漆黒の鎧の男だった。
「中々良い外骨格をしてる奴がいるようだな」
俺はそう一言言うと、控室の奥へと進んだ。
「あれが噂のハサミの勇士か、なんとも鈍重そうだ」
紅い男が肩をすくめながら言った。
「まあ、このブロックは俺かリック、お前のどちらかが残ることになるだろうよ」
漆黒の男が自信を込めて言った。
「ふ、ディアス。俺に当たるまで負けるなよ」
「ここにいる奴らで俺の装甲を抜ける奴は居ねえよ」
二人はお互いしか視界に入っていなかった。
「くそ!紅の閃光も漆黒の重戦車も俺たちを甘く見てやがる!」
「なに、闘技会本番で見返してやればいい。そうだよな?ハサミの兄ちゃん」
「殺したらだめなのか……全力で挟めないな」
俺は控室の闘士たちの話を全く聞かず壁に貼られた闘技場注意を読んでいた。
《もう少しかまってあげて!なんか周りの人たちが可哀そうでしょ!》
「おっかねえ兄ちゃんだな……何しに来たんだよ……」
「賞金をもらいに来ただけだ」
「えらいこいつも自信たっぷりだな……」
「一回戦の相手は……ディアスというのか」
「運がないな兄ちゃん漆黒の重戦車相手とは」
「漆黒の重戦車というのはあっちの男の事か?」
「そうだぜ!重厚な装甲と強靭な膂力から放たれる斧の一撃は誰もが震えがるもんだ。まず受けないほうがいいだろうな」
「アイスドラゴンとミスリルドラゴンにその斧は通用するのか?」
「え?さすがにドラゴンは無理だろ。単独で挑む生き物じゃねえ」
「そうか」
俺はそれ以降話を打ち切り出番まで瞑想することにした。
「テッペイさん、ディアスさん闘技場に出てくださーい」
係員の呼びかけで俺は目を開き闘技場へと歩き出した。
「お互い装甲自慢同士いい勝負になるといいな」
ディアスが話しかけてきた。
「そうだな硬度テストは大切だ」
「舐めた態度の奴だ。後悔しても知らねえぜ」
なぜかディアスはやる気にみなぎってしまった。
「それではこれから闘技会東ブロック一回戦を始めます!まずは王都の民ならだれもが知る漆黒の重戦車ディアス!」
ワーーーワーーー。
「うおお!ディアスーお前の優勝にかけてるぞ~」
「豪快な斧の一撃を見せてくれー」
観客たちの歓声が響く。
「対するは、シャルロッテ王女推薦、ハイランドのハサミの勇士!」
「俺はハサミの勇士ではないのだが……」
「頑張るのじゃー」
「間違って骨にするなよー」
「今回ばかりは毒はだめよ~」
仲間たちのよくわからない応援が聞こえてくる。
俺は相手をとにかく殺さないようにすることを固く決意した。
ジャーン!
闘技開始の合図の銅鑼が鳴る。
「悪いが一撃で終わらせてもらうぜ!」
ディアスがバトルアックスを大きく振りかぶり突っ込んでくる。
ガキィーーーン!
俺は避けるまでもないと思い頭で受けた。
「か、かてえ!なんて装甲してやがる!」
「アイスドラゴン製の外骨格だ炎のブレスにも耐えれるぞ」
「な、なんでそんなもので鎧を作ってるんだ!」
「倒したついでだ。いい素材だったのでな。さて次は俺のターンでいいか?」
「た、ターン制じゃねえぞ!」
ディアスは頭部分を避けて胴体を斬り付ける。
ガイーーーン!
「脆い部分は無いようにしてるんだ。今度こそこちらから行くぞ」
俺はハサミを開き挟もうと思ったが力加減を間違えたら死んでしまいそうなので、そのままハサミで殴った。
ドゴシャァ!
重装甲に包まれたディアスの腹部に俺のハサミが直撃する。ディアスは2メートル程吹っ飛びピクリとも動かなくなった。
「やってしまったか?」
俺はディアスの安否が心配になった。
通用口から医療班が入ってくる。脈など取って色々しているようだが、どうやら生きているようだ。
俺はホッとして闘技場から控室へと戻っていった。
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「なんということでしょう!あの漆黒の重戦車ディアスが何ら有効打を与えられずに、一撃で沈んでしまいました!恐るべし!ハイランドのハサミの勇士!これは闘技会の台風の目になりそうだぞ!」
「流石勇士様!我々クライスト教徒も噂を聞きハイランドから来たかいがありました!」
「あれは本物なのかい?」
「はい、まぎれもなくハイランドを救ってくださったハサミの勇士様です!」
「はえ~ドラゴンを何匹も倒したって話もただの噂だと思ってたが、こりゃ凄い奴がきたもんだ」
「そうでしょう。そうでしょう。あなたもクライスト教団に入ってハサミの勇士様の庇護を受けましょう!」
「あ、いやそれは遠慮しとくよ」
「なんと、勿体ない。まあ押し付けはいけませんからな!気が変わったらいつでも我々を訪ねてくださいね!」
テッペイの知らないところで宗教勧誘が行われていた。
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