表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/54

第十八話:勇者は遅れてやってくる

 街の人が寝静まった深夜、礼拝堂に2つの影が近づいていた。


『この礼拝堂で間違いないな?』


『ああ、ここにターゲットがいる』


 男たちは魔族で、音を立てないように念話で話していた。


『古臭い割に頑丈そうな扉だな』


『まあ俺達には関係ないがな』


 二人は集中し何かを詠唱すると扉に影を滑り込ませ、影の中に入り扉を音もなく通り過ぎた。


「もう食べれないのじゃ~」


『気付かれたか!?』


 魔族たちは呟きに警戒を高める。


 しかしそこにはバルーンのように膨らんだ女が転がっていただけだった。


『なんだ、この風船は』


『構うな、それはターゲットではない。勇士は男だ』


 バルーンを念のため慎重に通り過ぎ、さらに礼拝堂の奥へと進んだ。


 突き当りへ行くと周囲に冷気を放つトゲトゲの物体が鎮座していた。


『なんだこれは?』


『いや、よく見ろ。これはアイスドラゴンの外皮ではないか?』


『これがハサミの勇士か?』


『恐らくそうだろうミスリルのハサミを付けている』


『暢気なものだ、これから殺されるとも知らずにな』


 そういうと魔族の一人は毒の塗られた禍々しい短剣を取り出した。


『せめて苦しまずに殺してやろう。アイスドラゴンを倒した強さに敬意を表してな』


 容赦のない鋭い突きがハサミの勇士の繰り出された。


 ガキン!


『!?!?!?』


『何をしてる!』


『こいつ隙間も硬い!』


『幸いまだ気づいていない慎重に急所を探すんだ』


 魔族はナイフを握り直しハサミの勇士を観察する。


「あら~その毒じゃテッペイは殺せないわよ~」


「あなたたち何者?」


 背後に二人の女が立っていた。


 全く気配に気づかなかった。


「……」


「答えなくてもいいわよ~。後で聞きだすから~。それから毒は最低限これぐらいはないとね~」


 ふわりと風が肌を撫でた、非常に細かい粉末が混じっていることに気づいた時には遅かった。


『体が……痺れる!』


 魔族たちの体に神経毒が回り全く身動きが出来なくなってしまった。


「それじゃあ楽しい尋問タイムね~」


「悪い奴だったら骨にしてもいいよな?雑用が欲しいんだ」


「多分魔王軍だしいいんじゃないかしら~。エンリケ君にも仲間が出来て喜ぶかもね~」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 清々しい朝だった。ハイランドは少々寒いが空気は抜群に美味い。


「テッペイ見てくれ!」


 シオンが朝一番に話しかけてくるのは珍しいがなんだろうかと考えていると、シオンの影から2体のスケルトンが出てきた。


「スケさんとカクさんだ!魔王軍のエリート暗殺者の骨で凄くキビキビしてるんだ!」


《スケルトンだからスケさんはわかるけどカクさんはどこから来たのよ!》


 紹介されるとスケさんとカクさんはカタカタっとポーズをとった。


「確かに普通のスケルトンより機敏かもしれないな。そんなのどこで拾ったんだ?」


「昨晩、テッペイにナイフをガンガンしてたから捕まえたんだ」


「全然気づかなかったのじゃ~」


「ドラミナちゃんは風船状態だったから刺されてたら危なかったわね~」


《暗殺未遂だったのよ!もっと危機感を持って!!》


 スタスタと教団の人がやってくる。


「侵入者に気付けず申し訳ありません……」


「仕方ないわよ~スケさんカクさん。高等魔法の影渡り使ってたし、遮音とかも重ね掛けしてたもの~」


「なんじゃ割と優秀だったんじゃな」


「そうね~。手段で毒殺を選んだのが失敗だったわね~。全く毒が効かない対象だなんて想像しなかったんでしょうね~」


「力も割とあるからもうドラミナだけが荷物運びをしなくてもいいぞ!」


「おお!仕事仲間じゃな!」


 ドスン。


 ドラミナが軽くスケさんの肩を叩くと肩が脱落した。


「ちょっと!優しく扱ってよ!魔力でくっつくけど、紛失したらほかのパーツを探さないといけないんだから!」


「す、すまんのじゃ」


 スケさんはすぐに肩を装着すると気にするなというようにカタカタ揺れた。


「いい奴なのじゃ……」


「その、勇士様たちはこれからどうするので?」


 一連のやり取りをすこし引いて見ていた教団の人が訊ねてきた。


「俺は勇士じゃないが、ハイランドでは十分稼げたしグラスランドへ戻ろうと思う」


「おお、そうですか、お戻りになられるのですね。この度はハイランドの危機を未然に防いでいただきありがとうございました。勇士様の活躍は未来永劫ハイランドだけではなく他の地域にも伝道してまいります」


「いや、まあいいか。達者でな。みんな、グラスランドへ帰るぞ」


「帰り際に熱魔石を買いたいわ~」


「熱魔石でしたら必要な分だけ道具屋で持って行ってください、これぐらいしか勇士様に献上できるものがないのが心苦しいのですが」


「いや、タダは良くないだろう」


「いえ!勇士様のお役に立つのが信者の務めですから!今は亡き開祖クライスト様もそうなさるはずです!」


《いや、クライストは真面目な予言者だったわよ!》


「テッペイ、なんだか断るのもめんどくさそうだし、貰って帰るのじゃ」


「アイスドラゴン討伐代のボーナスだと思えばいいか」


「これで耐寒仕様ツーバイフォーになるわよ~」


「もうしばらく寒いとこは勘弁して欲しいのじゃ」


 俺たちは道具屋で熱魔石をもらい、ツーバイフォーをササっと改装すると、ハイランドを後にした。


 ハイランドの住人や警備隊が門まで全力で見送ってくれたのは来た時のことを考えれば数日で大分変わったなと思った。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 僕は須藤快斗、魔王の野望を打ち砕くためにこの世界に転生してきた勇者だ。


 旅を開始して早々女神さまに授けられた聖剣を折ってしまうという事態になったが、聖剣に頼らない戦闘法として二刀流剣技を修め魔王軍が邪教を広めようとしているという話のハイランドへやってきた。


「魔王軍め人々の拠り所を利用しようとするとは悪辣な、必ず野望を打ち砕いてやる!」


 そう意気込みハイランドの門をくぐった。


 だがそこで僕を待ち受けていたのは異様な光景だった。


 なにやらトゲトゲのカニのようなものを神々しく祀った絵画や彫刻があらゆる所に配置してあった。


 僕はとりあえず警備兵の人にこれが何なのか聞いてみた。


「すみませんこのカニのようなものは何を現しているのでしょうか?」


「ん?お兄さん旅の人かい?よくぞ聞いてくれたこの絵に描かれてるのはハイランドの危機を粉砕したクライスト教に古くから伝わっていたハサミの勇士その人だ!」


「ハサミの勇士?」


「そうだ、あれはこの街の命綱である鉱山に魔王軍の魔の手によりアイスドラゴンをけしかけられた時だった、雄々しき移動要塞を率いたハサミの勇士が、その輝くハサミを使いアイスドラゴンを討伐してくれたんだ!くう!つい数日前までハサミの勇士が滞在してたからあんたも、もう少し早く来てたら会えたのにな!」


「えっと魔王軍が来てたんですか?」


「ああ、ハサミの勇士がアイスドラゴンを討伐したことに怒って暗殺しに行ったらしいが返り討ちに合って、骨の使徒にされたって聞いてるぜ」


「えっと邪教は広まってないんですか?」


「ハサミの勇士が来る前はそんな話も聞いたけどな、今はハイランドの伝統宗教クライスト教一色だぜ!俺たちはクライスト教をエリシア教に並ぶ世界宗教に広めたいんだ!」


「あ、はい。そうですか。魔王軍の脅威はもうないんですね」


「ん?そうだな。今は平和なもんだぜ!兄さんもハイランド観光を楽しんでくれよな!」


 僕はハイランドでの旅が空振りに終わったことに少し肩を落としたが、ここの人たちが平和ならそれでいいと思うことにした。


 それにしてもハサミの勇士……聖剣を折ったテッペイさんなのでは……


 あのミスリルの塊の冒険者のことを思い出しながら僕は決意を新たにした。


 「僕はまだまだ勇者として未熟だな。もっと頑張らないと」


 次の目的地をどこにしようかと考えながらとりあえずハイランド観光をすることにした。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

もし、ちょっとでも「面白いじゃん!」と思っていただけたら、 ↓の【★★★★★】を、ポチっと押して応援していただけると、作者が、本気で泣いて喜びます…!

ブックマークも、ぜひぜひ、よろしくお願いします!

また次回、お会いできるのを楽しみにしています!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ