第十五話:誰が何を信じたっていい
「こちらです。」
クライスト教団の礼拝堂は質素で厳かな雰囲気の場所だった。
しかし中はしっかり暖かくズビズビ言ってたドラミナも静かになった。
「あったかいのじゃ~」
「ハイランドでは室内はすべて熱の魔石で温めているんですよ。火事にもなりにくいですし、床材や壁材に混ぜることもできますから」
「なるほどな、雪国の知恵というやつだな」
「でも石畳はちょっと寝るには大変よね~」
「ドラミナが巻いてた毛布を敷けば快適なんじゃない?」
「これは妾のじゃ!」
ドラミナはマシュマロボディのまま床に転がり始めた。
「あはは、毛布は教団のものがありますから大丈夫ですよ」
「それにしても、人気のない礼拝堂よね~夜だから~?」
「最近は新興宗教が入ってきていてちょっとおされてまして……」
「それで私たちに信徒になってほしいのか?」
「いえ、そんなつもりは。クライスト教団の教えには困ったものには手を差し伸べよというものがありますので」
「そんな親切な教団なのに信仰されてないのじゃ?」
転がりながらドラミナが訊ねた。
「そうですねクライスト教団はエリシア教の分派で、女神エリシアが遣わすであろう救世主を信仰しているので少数派なのです」
「ん?あの女神信仰されてたのか」
《当然ですよ!見直しましたか?》
「碌な宗派じゃなさそうだな」
《なんでそうなるの!!》
「その、実はあなたたちは予言に記された救世主そっくりなのです!」
「妾達何もしてないのに伝説になってるのじゃ」
「私たちのことじゃないでしょ」
「この際考えられるのはテッペイのことだと思うわよ~」
「我々クライスト教団に伝わる予言によると女神さまが遣わす救世主は輝く装甲を纏ったハサミの勇士だと記されているのです」
「テッペイじゃ」
「テッペイね~」
「テッペイ以外に当てはまる奴いないよ」
「いやそれはあり得ない俺のは外骨格であって装甲ではない。ハサミの勇士現れるといいな。親近感を感じる」
「はい、ありがとうございます」
《私はもうハサミを持った勇士なんて送り込む気はないですよ!というより変な予言がなんで広まってるの!?》
俺たちは親切なクライスト教団の世話になり暖かい一晩を過ごした。
「さてギルドで仕事を探すか」
「寒いから出たくないのじゃ~」
「それではハイランド特製の防寒具を買いに行かれるのはいかがですか?熱の魔力繊維を編み込んでいて暖かいですよ。少し高いですが」
「それはよいのじゃ~テッペイ買ってほしいのじゃ~」
「ふむ、まあこの街の道具屋に顔を出しておくのもいいか」
「寒冷地帯の毒製品も安くなってそうよね~」
「エンリケ君の装飾とか何か良いのないかな」
教団の人の助言を受け俺たちは道具屋に向かうことにした。
「いらっしゃい!おお!まさか!あなたはハサミの勇士!?」
「いや、カニ違いだ。なるほど道具屋もクライスト教団の信徒だったのか」
「なんだかきな臭くなってきたわね~」
「いや確かに俺はクライスト教団の信徒だが、いたって真面目な道具屋だ!何が欲しいんだい?」
「竜人が着るのに丁度いい熱魔力繊維の防寒着が欲しいんだが」
「おお、ハイランドジャケットだな2万ゴルドだぜ!」
「いいだろう」
俺は迷いなく支払い、ハイランドジャケットを受け取った。
ドラミナは早速羽織ったがその姿はマシュマロボディというよりもはやマシュマロマンだった。
「あったかいのじゃ~すごいのじゃ~」
「それと~氷結毒って売ってるかしら~?」
「え?そんな危ないもんどうすんだ?」
「実験に使うのよ~わたし毒の専門家なの~」
「あ~確かによく見たらあんた毒妖精か、ならいいか一本500ゴルドだぜ」
「10本頼むわ~」
「メルティ買い過ぎじゃないか?」
「あら~シオン、ツーバイフォーもお財布の管理もわたしなんだからこれくらいの買い物いいでしょ~」
「うう、何も言い返せない。エンリケ君の飾りつけは我慢しよう」
俺たちは買い物を済ませ終始やたらと愛想のいい店主と別れた。
「いい店だったのじゃ」
「門番も話の分かる奴らだったし、穏やかな人が多いのかもしれないな」
《警備隊の人たちは諦めてただけですからね!》
ギイ。
俺たちは再びギルドを訪れた。
「あ、テッペイさん!いらっしゃい!昨日はどこで休みましたか?」
「クライスト教団の世話になった」
「あ~、ふーん。なるほど!テッペイさんはハサミの勇士っぽいですもんね!」
「まて、ハサミの勇士はそんなに有名なのか?」
「今は下火ですけど、ある程度の年齢のハイランドの人ならだれもが知ってますよ。エリシア様より人気あります!」
「それはそうだろうな」
《納得するところがおかしいでしょ!!》
「えーっと今ある依頼は、ミスリル鉱の採掘、採掘場の警備……くらいですね。いつものです!」
「どっちが稼げる?」
「そうですねえ、沢山採掘出来たら採掘のほうが報酬が多くなりますかね。安定収入なら警備です!」
「鉱山の入り口付近に開けた場所はあるか?」
「もちろん運送馬車が複数とまれるスペースはありますよ」
「そうか、それじゃあ採掘を……」
バタン
依頼を決めようとしたその時、息を切らした男がギルドに飛び込んできた。
「ハア、ハア……セニア!う、腕利きの冒険者を集めてくれ!」
「ど、どうしたんですか!?」
「鉱山にアイスドラゴンが現れたんだ!外にいた奴らはなんとか逃げてきたが、鉱山内部の奴らは完全に逃げ遅れちまった!」
「ええ!?アイスドラゴン!?そんなの討伐できる冒険者いませんよ!」
「気をそらしてくれるだけでいいんだ!結構な鉱夫が取り残されてる!」
「ドラゴンか……」
「え!?なんだあんたは」
「セニア、アイスドラゴンを討伐したら報奨金が出るな?」
「は、はい、50万は出ると思います」
「俺の外骨格はミスリルドラゴンから取ったミスリルでできている。つまりミスリルドラゴン討伐済みだ」
《毒殺ですよね?まともに戦ってませんよね!?》
「つまり、アイスドラゴン討伐に向かってくれると?」
「ああ、ドラゴンと力比べできる仲間もいるからな。今はマシュマロマンだが」
「妾のことか?寒いのは嫌じゃが、任せるのじゃ!」
「アイスドラゴンの骨でエンリケ君を強化できるかも!」
「珍しい毒が合成できるかもしれないし楽しみね~」
「あんたらドラゴンが怖くないのか!?」
「カニのほうが進化しているからな……」
「同族みたいなもんじゃし」
「戦うのは私じゃないし」
「テッペイに任せれば大体大丈夫だものね~」
「よくわからないが、よろしく頼む!」
「依頼を受理しましたけど、無理はしないでくださいね!」
こうして俺たちはアイスドラゴン討伐依頼を受けて、ツーバイフォーに乗り鉱山へと向かった。
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