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第十話:カニとして水は操りたい

 今朝も川縁の空気は爽やかだった。


「やはり外骨格をしっかり身に付けた朝は違うな」


 俺は緑銀色に光る、外骨格の輝きに満足げに頷いた。


「ズビッ。やっぱり外は寒いのじゃ……」


「そうね~寝心地はあまりよくないわね~」


「どうして川縁で寝てるの……まだ骨でもないのに」


 シオンは心底不思議そうだった。


「テッペイが湿り気が重要だっていつも言うのじゃ」


「湿り気は重要だ。乾いていては命に関わるからな」


《普通の乾き具合なら問題ないですからね!ずっと湿ってないといけないと思い込んでるだけだから!》


「さて爽やかな朝だ、シオン早速魔法の訓練をしてくれ」


「え?朝ご飯とか、そういうのが先じゃ……」


「死霊でも食事が必要なのか?」


「普通に食べるけど……」


「そうか、だが今俺たちは食料を持っていない。川のコケやその辺の枯葉なら食べ放題だが」


「そんなの食べたらおなか壊すよ!」


「まあ一食抜いたぐらいは自然界では普通だ我慢しろ」


「そうじゃ、食べれる時に食べ貯めとくのがかしこいのじゃ!」


「花の蜜はおいしいわよ~」


「魔王軍のが福利厚生があったよ~」


《シオンちゃんその気持ちとてもわかりますよ!おかしいですよねこいつら!》


「うう、でも腕ももらっちゃったし、脚ももらえるし頑張るしかないよね」


《あ、こいつもまともじゃなかったわ……》


「テッペイどんな魔法が使いたいの?闇術?呪術?それとも死骸術?」


「水を操りたい」


「水魔法?うーん、専門外だけどウォーターボールくらいなら」


 そういうとシオンは集中し空中に水球を作り出した。


「いやそういうのじゃない」


「えっ?」


「俺は口から勢いよく水流を吐き出したいのだ」


「そんな魔法ないよぉ……でも口の中に水を作り出す魔法ならなんとかなるかも」


「ほう、それはいい」


「うん、えーっとテッペイは魔力が結構あるから口の中に、魔力を集中させて水をイメージするといいと思う」


「魔力……」


「えっと魔力を動かしたことがないなら私が動かすね」


 シオンはテッペイの外骨格に手を触れて魔力を動かそうとした。


「えっと外骨格の中身触ってもいいかな?」


「なぜだ?」


「外骨格からだと上手く鉄平の魔力を操作できないから」


「そういうことか」


 俺は右手のハサミをパージして中の手でシオンの手を握った。


「ひえっ!い、いきなりだな。えっととりあえず魔力を動かすね。感覚分かるかな?」


「ほお、体を血液以外が流れてる感覚があるなこれを口に集中すればいいのか」


「そうだよ!うまくいけば口の中に水が生成されると思う」


 ブクブク。口の中に水が満ちていく。俺はフェイスガードを開き勢いよく噴出した。


 ズビッーー!


 川縁の岩に穴を穿った。


「えっ?」


「素晴らしい威力だ。これで遠距離戦もできるな」


《シオンちゃん水の出し方しか教えてないからその威力にびっくりしちゃってるわよ!》


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 テッペイが魔法講座を受けているころドラミナは暇だった。


「メルティ~退屈なのじゃ~……メルティ?」


 ドラミナが呼びかけるもメルティは見当たらなかった。


「家に帰ったのじゃ?」


「いるわよ~。ドラゴンちゃん」


「うわ、草むらからいきなりはびっくりするのじゃ何してたのじゃ?」


「暇だからこれを作ってたのよ~」


 そこには大きな車輪の付いた土台が置いてあった。


「いつも川縁で野ざらしだと色々困るでしょ~?テッペイが別の水源に移動しようとした時も都合がいいように、キャンピングカーを作ってるのよ~」


「おお!錬金術は凄いのじゃ!」


「ドラゴンちゃんは移動するときの動力役をやるのよ~」


「わか……ってなんでなのじゃ!」


「私がこんな大きなもの引けるわけないでしょ~?」


「そこは魔法かなんかで動かせるようにするものなのじゃ!」


「そんな動力積めるわけないじゃない。材料も自然調達なのに」


「確かに木材と石材しか使ってないのじゃ……」


 川縁に勝手にキャンピングカーが誕生しようとしていた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 シオンの指導の下俺は水鉄砲と泡の吐き出しを身に付けた。


 ブクブク。


「うう、絵面は最悪だけどやりたいことはできるようになったね」


「ああ、素晴らしい指導だった。歩脚が欲しいんだったな」


 ズビッーー!


 俺は早速身に付けた水鉄砲で歩脚を切断した。切れ味がいい。


「ヒィッ!今から切るって言ってからやってよ~」


「ん?そうか。わかった次からはそうしよう」


 俺は歩脚をシオンに渡しその場で再生させる。


「はあ……立派な大腿骨!これは何にしようかな?ボーンスピアかな?後で何本ももらえるならボーンスパイクにしようかな?あーでもパーツを集めてテッペイスケルトンも作りたいな!」


「喜んでくれたようで何よりだ」


 こうして平和な時間を過ごしていた俺たちだったが、なにやら敵対的な気配が近づいてきていた。


「おい!シオン!探したぞ!霊廟でスケルトンを増殖させて街を襲う計画はどうした!」


「あ、エンリケ隊長、魔王軍はちょっともう嫌になったので辞めました!」


《そんなアルバイト嫌になりました見たいなテンションでいいの!?》


「シオン。お前そんな喋り方だったか?まあいい魔王軍での裏切りは万死に値するわかっているな?」


「えっ?そんなの聞いてない!私はテッペイスケルトン作るまで死ねないから!」


「ふん、死骸を操るしかできぬお前にオーガである俺を倒せると思っているのか?裏切りを後悔しながらあの世に行くがいい!」


 エンリケと呼ばれたオーガは巨大な剣を振り上げた。


「テッペイ!見てほしいのじゃ~」


 その時ドラミナが勢いよくやってきてエンリケを吹っ飛ばした。


「なんだ?ドラミナ、今何かシオンが取り込み中みたいだぞ」


「そうなのじゃ?」


「多分もう解決したと思う」


「何がもう解決しただぁ~!」


 地獄の底のような声を響かせて血まみれのエンリケが戻ってきた。


「なんじゃこの血だるまは?」


「シオンのお客さんだ、話を聞く限り友好的ではないな」


「オーガである俺をあの程度の衝撃で殺せると思うなよ!貴様らまとめて血祭りにあげてやる!」


 血走った目でエンリケは宣言した。


 ズビィーーー!


 「えっ!?」


 エンリケの胸にはこぶし大の穴が開いていた。


「なにが……」


 それがエンリケの最後の言葉だった。


「テッペイ容赦ないのじゃ」


「俺たちまで巻き込まれそうだったからな、先手必勝だ」


「エンリケ隊長偉そうだったのに大したことなかったなぁ。でも骨は立派そうだから再利用しよう!」


 シオンが魔方陣を展開すると、エンリケの骨が起き上がり大型のスケルトンとして蘇った。


「エンリケくん!これからは私の荷物持ちとして頑張るんだぞ!」


「おお、これが死骸術なのじゃ?閃いたのじゃ!メルティ~」


「なにかしら~?」


「妾の代わりにエンリケくんにキャンピングカーを引かせるのじゃ!」


「エンリケくん~?」


「私がさっき作ったオーガのスケルトン。力持ちだよ!」


「あら~じゃあちょうどいいわね~死んでるなら疲れないでしょうし、いつでも移動させれるわね~」


「キャンピングカーとは?」


「さっき見せたいって言ってたものじゃ!メルティがそこら辺の材料から見事に作ってくれたのじゃ!これで野宿ともおさらばじゃ~」


「ああ草むらのあれか、いつの間にかできてたがメルティだったのか」


「ツーバイフォーよ~」


《ちょっと待って!? なんで異世界の古株妖精が、北米生まれのツーバイフォー工法を完全マスターしてんのよ!あんたたち絶対ファンタジー世界を舐め腐ってるでしょ!》


「よくわからんがあんなでかいものエンリケ君で引けるのか?」


「オーガは凄い力持ちの種族だから大丈夫だと思う」


 一抹の不安はあるものの俺たちは移動拠点を手に入れたのであった。


《どうみても土地の不法占拠なんですよね……この街の法律的にどうなってるかわからないけれども》


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 テッペイたちが川縁でわちゃわちゃしていた頃、一人の男が街に訪れた。


「魔王軍、ここでの野望も僕が打ち砕く!」


 男は颯爽と街に入っていった。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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